鎮守府勤めの警備員さん   作:通りすがりの幻想

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皆さん、どーもです。

通りすがりの幻想です。

秋刀魚祭り、始まりましたね。
皆さんは、進捗はいかがですか?


それでは、どうぞ。

Weigh Anchor!


⑤午後3時~わが青春のホームタウン~

 

 

 

祐輔「…こんちはー、おばちゃーん、いつものー。」

 

午後3時。

 

この時間帯になると、忙しかった鎮守府もだいたい落ち着いてくる。

そのため、赤城さんや加賀さんみたいに自主鍛錬をしたり、駆逐艦の連中みたいに、外出届を出して近所に繰り出したりと、思い思いに過ごす艦娘が、うちの鎮守府には多い。

俺もその一人で、今日も食材を調達するために、外出届を出して、近くの商店街に出かけた。

そして、真っ先にいつもの青果店に入り、店主のおばちゃんにいつもの商品を頼む。

 

「祐ちゃん。いらっしゃい。」

 

 

ここのおばちゃんは、俺が小さい頃から店主を務めている。

青果店のおばちゃんだけじゃない。

電気店のおやっさんや、スーパーの店員のお姉さん、俺が鎮守府に努める前に働いてたコンビニの店長も、皆俺の顔見知りだ。

この商店街、いや、この街は、小さい頃から住んでいる、俺の庭だ。

裏道や近道、コンクリートの塀の数まで知っている。

 

 

「あれ?祐輔さん?」

 

おばちゃんが戻ってくるのを待ってる間、声をかけられる。

 

祐輔「ん?…あー、えっと、お前さんは…瑞鶴、だっけ?」

 

瑞鶴「ええ、そうよ。…あなたも買い物?」

 

話しかけてきたのは、赤城さん達と同じく空母の艦娘、翔鶴型航空母艦の2番艦「瑞鶴」だった。

彼女は、姉である翔鶴型航空母艦の1番艦「翔鶴」と共に、第五航空戦隊、通称「五航戦」を務めている。

 

「はい、祐ちゃん。おまたせ。…あら、瑞鶴ちゃんじゃない。」

 

瑞鶴「こ、こんにちは。…えっと、り、リンゴ2つ、ください。」

 

「はい。ちょっと待っててね。」

 

ここの鎮守府の艦娘達は、全国的に見ても珍しく、近隣住民との交流が盛んだ。

そのため、外出届を出して、この商店街に来る艦娘も多い。

喫茶店で安らぐ者もいれば、雑貨屋で可愛いグッズに目を輝かす者もいる。

 

祐輔「…加賀さんに教わった、あのウサギ型リンゴ、気に入ってるんだな。」

 

…基本的に一航戦と五航戦、特に、加賀さんと瑞鶴は、犬猿の仲であるが、最近はそこまで険悪でもなく(仲良くもないが)、良好な関係を築いている。

 

そのきっかけの一つが、入渠(戦闘で傷ついた艦娘は銭湯の様な施設にて回復を行うが、艦種・錬度によって所要時間が異なる)に多大な時間を要する加賀さんが、暇つぶしに作ったウサギ型のタオルを、瑞鶴が可愛いと思い、作り方を教わったことだ。

 

その応用で、リンゴをウサギ型に剥く方法も最近教わったらしく、姉の翔鶴曰く、瑞鶴はそれをよく好んで食べている、との事だ。…本人に聞いたところ、否定はされたが。

 

瑞鶴「う、うっさい!爆撃されたいの!?」

 

祐輔「わ、分かった!悪かった!俺が悪かった!ここで爆撃とかシャレにならないからやめてくれ!」

 

そんなこんなで、ぽろっと零した俺の一言に反応したのか、顔を真っ赤にしながらものすごい剣幕で睨まれ、物騒な事を言い出した彼女に、俺は必死に平謝りをする。

 

「はい、瑞鶴ちゃん。お待たせ。」

 

そうこうする内に、おばちゃんが戻ってきた。

 

瑞鶴「あ、ありがとうございます…あ、あれ?一個多いんですが…」

 

彼女の言う通り、2個頼んだはずのリンゴは3個になっていた。

 

「いつもこの街を守ってくれているから、そのお礼よ。…ありがとうね。ご苦労さま。」

 

瑞鶴「え、あ、いや…わ、私たちにとっては、それが使命ですから…」

 

「それでもよ。…若いあなた達が頑張っているのだから、私たちだって頑張らないと。」

 

「そうさ。嬢ちゃんたちが毎日命かけて戦ってるんだから、その分、俺たちも精一杯生きないとな!」

 

祐輔「…あれ、電気屋のおやっさん。」

 

別の声がして振り向くと、そこには、おばちゃんと同じく、この商店街で店を構える電気屋の店主のおじさんが来ていた。

 

「あら、洋さんじゃない。」

 

「おう、おばちゃん、頼まれてた冷蔵庫の修理に来たぜ。」

 

「いつもありがとうねぇ。」

 

祐輔「…じゃあ、おばちゃん、俺たちはこれで。また来るよ。」

 

おばちゃんにお礼を言って、瑞鶴と一緒に商店街を歩く。

 

瑞鶴「…そういえば、祐輔さんと司令官って、この街で育ったのよね?」

 

歩きながら、瑞鶴が聞いてくる。

 

祐輔「ああ。…といっても、2人でよくいたのは、3,4年間程だけどな。…高校を卒業した後は、あいつは横須賀の海軍の学校に行って、俺はこの街に残ったんだ。……今も楽しいけど、あの頃はあいつと色んな事やったなぁ。」

 

瑞鶴「第六駆逐隊が話しているのを聞いたけど、確か、二人で探偵をやっていたんだっけ?どういう事をしてたの?」

 

祐輔「うーん、基本的には、ペット探しや、失せ物探し。…あ、でもたまーに厄介な事件だったり、珍妙な出来事に巻き込まれたりしたんだ。」

 

瑞鶴「え、えっと、厄介な事件っていうのは分かるんだけど…珍妙って?」

 

祐輔「そうだな…色々あるけど、さっき通ってきた商店街の大通りを歩いている時に、カツラが飛んできたんだ。」

 

瑞鶴「………ごめん、ちょっと待って。既にツッコませて欲しいんだけど…カツラ?」

 

祐輔「まあ、そんな反応になるのは分かる。俺も最初は、鳥か何かかと思った。…で、俺から少し離れたところに落ちたんだ。…少し遅れて、禿頭の男がやってきたんだ。」

 

瑞鶴「…ああ、じゃあ、その人の物って事ね。」

 

祐輔「…ところが、カツr……帽子に追いつくかと思ったら、その直前でずっこけて、その時に起きた風圧で帽子がまた飛んでった。」

 

瑞鶴「……」

 

祐輔「で、その人、転んだ時に足を挫いたみたいで、頼まれた俺が代わりに帽子を追いかけたんだ。」

 

瑞鶴「…つまり、街中でカツラと追いかけっこをしたって事?…ハタから見たら、ずいぶん珍妙な光景ね…」

 

祐輔「言うな、分かってんだよ。その後探偵クラブの部室に戻って、提督に報告したら、大爆笑されたんだから……それで、帽子とは思えないほどの動きに苦戦したりしながらも、何とか追いついて、返してあげて、一件落着になったんだ。」

 

瑞鶴「へぇ…」

 

祐輔「ちなみに、後で知ったけど、その人、この街出身のピン芸人なんだ。……確か今日も…ほら、あそこの自治会館で、ミニライブをやってるはずだ。」

 

瑞鶴「そうだったの…じゃあ、厄介な事件ってのは、例えばどんなのがあったの?」

 

祐輔「…爆弾テロだ。」

 

瑞鶴「ば、爆弾…!?」

 

祐輔「…提督と二人で見回りがてら街を歩いていたんだよ。そしたら、急にアラームみたいな音が聞こえてきた。辺りを見回してたら……少し離れたところで、爆発が起こったんだよ。」

 

瑞鶴「だ、大丈夫だったの!?」

 

祐輔「俺たちは何ともなかったし、幸いにもけが人もいなかったんだ。」

 

瑞鶴「よ、良かった…。」

 

祐輔「…でも、またすぐにアラーム音が聞こえ始めた。…今度は比較的早く見つかった。…すぐに警察に連絡しようと思ったけど、時限式の爆弾で、残り数十秒だった。」

 

瑞鶴「えっ、じゃ、じゃあどうしたの!?」

 

祐輔「俺がヤマカンで解除した。」

 

瑞鶴「………よくそれで大丈夫だったわね。」

 

祐輔「…提督も呆れてたよ。まあでも、それで解除出来たからいいんだよ。」

 

瑞鶴「まあ、そうだけど…」

 

祐輔「…ところが、それから数日経ったある日、俺が一人で部室の番をしてたら、部室の電話に非通知で電話がかかってきたんだ。…声はボイスチェンジャーで変わってて分からなかった。『この街のどこかに爆弾を仕掛けた。…あと15分で爆発する。解除したければ、探してみろ。…爆弾は「海の守り人」にある。』という内容の電話だった。」

 

瑞鶴「…海の守り人?」

 

祐輔「元海上自衛隊の施設…今の鎮守府がある辺りだ。…野暮用で外出してた提督にそれを伝えたら、すぐに気づいて、俺はすぐさまそこに向かったよ。…それで、敷地の入り口の辺りに爆弾があった。またカンを使って何とか解除は出来たよ。……ところがだ。そこに通行人が通りががった。で、俺を例の爆弾魔だと言いやがる。」

 

瑞鶴「えぇ!?」

 

祐輔「だがまあ、爆弾を手に持っている以上、犯人扱いされるのも仕方ない。万事休すか、と思ったら、提督がやってきた。そして、その通行人に、アンタこそ爆弾事件の関係者じゃないかって言ったんだ。」

 

瑞鶴「…え?なんで通行人に?」

 

祐輔「提督曰く、部室に電話がかかってきたの同じ時間くらいに、街でラジオとも、無線とも違う、妙な周波数の電波が観測されたみたいなんだ。ただの偶然じゃないかもしれないと考えて、提督の方でも調べていたらしい。…で、また例の電波が観測された場所に急行したら、俺と例の通行人がいたって事だ。」

 

瑞鶴「…じゃあ、その人が?」

 

祐輔「ああ。…指摘されて図星だったのか分からないけど、そいつがいきなり上着を脱ぎ棄てたんだ。…上着の下には、爆弾が巻き付けてあった。大方、自分もろとも爆発させようって腹だったらしい。…で、案の定、奴は手に持っていた起爆スイッチを押した。けど、爆発は起きなかった。」

 

瑞鶴「ど、どうして…?」

 

祐輔「提督が、さっきの電波を周波数から逆算して、持っていたパソコン経由で起爆スイッチにクラックを仕掛けていたんだ。だから、スイッチは全く機能しなくなって助かったって事。」

 

瑞鶴「犯人はどうなったの?」

 

祐輔「起爆スイッチがおシャカになったのを知ったあいつは、ヤケになって殴り掛かってきたから、俺が返り討ちにして、警察に引き渡した。…その後の取り調べで、犯人はかつて、セキュリティ会社に勤めていた経歴があって、自身の新しいプロジェクトを打ち切りにされたことで職を追われ、復讐のために今回の犯行に及んだとの事だった。……セキュリティ会社の人間が、セキュリティの穴を突かれるという、なんとも皮肉な結果になったわけだ。」

 

瑞鶴「それにしても、提督って、コンピューターの知識もあったのね…」

 

祐輔「いや、ホントそれだ。あいつがあの場に居なかったら、とっくにお陀仏だったぜ…」

 

瑞鶴「…しかし、ほんとに、色々な事があったのね…」

 

祐輔「ああ。ほかにも、料金をぼったくるバーとひと悶着あったり、商店街のラーメン屋の親父に頼まれてSNS映えするラーメンを一緒に考えたりと、色々面倒な事件もあったけど、それでもやっぱり、この街は自分たちの育った街だから、そういうところもひっくるめて、俺たちは、この街が好きだ…いや、愛しているんだ。」

 

瑞鶴「…探偵業、大変だと思ったことはあるの?」

 

祐輔「あるある。むしろ、無い方が珍しいよ。基本的に情報は脚頼みだから、わざわざ外を出歩いて進展が無かった時の徒労感ったらハンパないよ。…他にも、捜査方針の違いから、提督と揉めた事だって何回もあるし。…でも、」

 

瑞鶴「…?」

 

祐輔「解決を報告した時の依頼人の人たちの笑顔を見たら、そこまでにかかった労力なんてどうでもよくなるんだ。」

 

瑞鶴「……」

 

買い物に来た主婦たちの会話や、雑貨屋で第六駆の面子がはしゃぐ声、金剛型の4姉妹が喫茶店のマスターと紅茶について議論する声。

 

色んな店でいろんな声が聞こえる。

ただ、共通しているのは、皆笑顔だという事だ。

 

瑞鶴「…祐輔さん。」

 

祐輔「…ん?」

 

そんな皆のやり取りを見ながら、瑞鶴が呟く。

 

瑞鶴「…ここ、いい街ね。」

 

祐輔「…ああ、俺の自慢のホームタウンだ。」

 

瑞鶴「…もし…もしも深海棲艦との戦いが終わったら…ここに住んでもいいかも。」

 

祐輔「お?歓迎するぜ?不動産屋も紹介するよ。」

 

瑞鶴「…ええ。その時は頼りにさせてもらうわ。」

 

その後、鎮守府に帰投する瑞鶴と別れ、俺は2件目の行き先であるスーパーへ向かった。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

最近、母港に設置する家具で、時雨改三と同時に実装されてから、ずっと狙ってた「時雨の私物棚」を無事に購入出来ました。

家具コイン15万と少しは大変だった…

それでは、また。
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