鎮守府勤めの警備員さん   作:通りすがりの幻想

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皆さん、どーもです。

通りすがりの幻想です。

…今回は、祐輔が警備員たる所以が明かされます。

それでは、どうぞ。

Weigh Anchor!




⑥午後7時~チェイス・イン・鎮守府~

 

「祐輔さーん!」

 

午後7時。

 

外出から帰投して数時間後。

晩飯の準備をしようとしたら、小屋の外から声がした。

 

祐輔「…ああなんだ、お前たちか。」

 

外を見ると、今朝も出会った吹雪ちゃんと、彼女の寮でのルームメイトである、睦月型駆逐艦1番艦「睦月」と、白露型駆逐艦4番艦「夕立」の3人がいた。

 

祐輔「…この時間にわざわざ来たって事は……」

 

夕立「うん!ご飯ごちそうになりたいっぽーい!」

 

小屋に招き入れて早々に、夕立ちゃんがそう言った。

 

睦月「きゅ、急に押し掛けるのも悪いから、私たちは止めようとしたんですけど…」

 

吹雪「ご、ごめんなさい…祐輔さん…」

 

後ろの2人は、申し訳なさそうにしている。

 

祐輔「いや、いいよ。…ある意味でちょうど良かった。」

 

そう言いながら俺は、午後にスーパーで買ってきた、大きめの牛肉のパックをクーラーボックスから取りだす。

 

吹雪「なんですかそれ?…牛肉?…って、ええ!?この量で300円って…あのスーパーよく行くけど、いつも見る値段より安いっ!」

 

祐輔「ああ、今日特売だったんだよ。それで買ってきた。……これ全部使って、スタミナ牛肉うどんでも作ろうかなと思うけど、どうかな?」

 

夕立「おいしそー!食べる食べる!」

 

献立を聞いた夕立ちゃんが、歓喜の声を上げてはしゃぐ。

…心なしか、彼女の髪のハネてる部分が、犬の耳みたいにぴょこぴょこ動いているような気がした。

 

吹雪「ええ?こ、こんなに、使うんですか?」

 

祐輔「どうせ一人で肉炒めにでもして食べようと思ってたし、別にいいよ。」

 

睦月「じゃあ、ごちそうになりますね。」

 

祐輔「おう。じゃあ、準備するから、ちょっと待っててくれ。」

 

吹雪「分かりました。…ほら、夕立ちゃん。動き回ってると行儀悪いよ。」

 

夕立「ごっはん~ごっはん~。」

 

はしゃいでいる彼女達を微笑ましく思いつつ、食材の下ごしらえに

 

 

取り掛かろうとしたとき。

 

 

(がさっ)

 

祐輔「っ!?」

 

窓の外から物音がした。

 

吹雪「…?祐輔さん…?」

 

祐輔「っ…!」

 

動きを止めた俺を不思議に思ったのか、吹雪ちゃんが声をかけようとするが、手を上げてそれを制する。

 

俺のただならぬ雰囲気を感じたのか、先ほどまで騒いでいた夕立ちゃんも、静かになった。

 

俺は忍び足で窓に近づき、そっと身を乗り出して外を見る。

 

外はいつもと変わらず、鎮守府の夜景が広がっている。

 

左の方には、提督の執務室や、艦娘の戦闘を指揮する作戦指令室、そして、地下の艦娘専用出撃ドックに続くエレベーターがある本館。

前方に見えるのは、艦娘の装備である「艤装」の整備、および新たな装備を開発する「工廠」と、戦闘で傷ついた艦娘たちが治療を行う「入渠ドック」などが入った整備棟。

整備棟の奥には、点々と明かりが灯っている、艦種ごとに分かれた艦娘達の寮。

 

…その寮の方に向かって、2つの人影が鎮守府の外壁沿いに移動していた。

そこはちょうど塀の陰になっており、よく目を凝らさなければ見えないレベルだ。

 

祐輔「……」

 

吹雪「……?」

 

俺は吹雪ちゃんに身振り手振りで、「テーブルの上のビデオカメラを取ってくれ」と指示した。

 

最初吹雪ちゃんは困惑していたが、すぐに俺の指示を理解し、ビデオカメラを俺の方へ放ってくれた。

 

それをキャッチして、すぐさま起動、レンズを侵入者の方に向ける。

 

実は、これはただのビデオカメラではなく、人物識別装置だ。

工廠にいる工作艦の艦娘「明石」に頼んで作らせた特注品だ。

…当然ながら、見返りとして、手間賃込みでかなりの量の物資や工具を要求されたが。

 

実は、以前にもこういう事があり、その時俺は、賊の背後から奇襲をかけたが、あろうことかその相手は、カメラ片手に新聞のネタ探しをしていた重巡洋艦青葉型1番艦「青葉」だった。これを受けて、夜暗い所でも、侵入者か散歩などをしている艦娘か見分けがつくように、という事で、明石に作らせた。

 

カメラ内部には、提督や艦娘等、この鎮守府にいる全ての人物のデータが登録されたメモリーが入っている。

カメラのレンズから赤外線を照射して、それが返ってくるまでの時間で距離を測り、さらに、そのデータから対象人物の体格、身長も算出し、内部のデータと照合を行う。

対称の人物とデータの照合が不一致の場合、侵入者であるという事だ。

 

…結果的に、カメラのモニターには「データ内該当者 0名」の文字が出た。

 

これでもう、この鎮守府に侵入者が来たことは明らかだ。

 

祐輔「…ったく、飯食おうと思ったのに、タダじゃおかないからな…」

 

ぶつくさボヤキながら、いつも着てるグレーのパーカーを脱いでクローゼットを開け、銃のホルスターを取り出す。

それを左肩に通し、収めてある愛用の大口径拳銃「ロングストライクV4」を抜き、マガジンを取り出して弾が入っているか確認した。

 

ちなみに、この銃も明石の特注品だ。

一応言っておくと、ちゃんと提督の許可は取ったし、提督も海軍に許可を出して、(特例ではあるが)許可してくれたの確認して、制作してもらった。

 

一応、他にも、許可のもと作ってもらった銃器はあるが、よく使っている銃はこいつだ。

 

祐輔「…お前ら、絶対に外へ出るなよ。」

 

黒のグラサンをかけ、黒のレザージャケットを羽織った俺は、吹雪ちゃんたちにそう告げる。

 

吹雪「…その恰好、なんだか警備員というより、暗殺者って感じです。」

 

祐輔「うるせぇ。この方が目立たないからいいんだよ。」

 

そのまま窓から飛び出して、忍び足で侵入者を追いかける。

 

祐輔(…しかし、どうやって入った?…まあ、奴らに聞けばいいか。)

 

その途中で、耳に付けたインカムで、執務室と通信を行う。

 

祐輔「…こちら久遠。執務室、応答してくれ。」

 

ほんの少し間が空いて、応答が入る。

 

提督「…こちら執務室。何かあったか?」

 

祐輔「侵入者が寮の方面に向かっている。いつものように俺が対処するから、憲兵に連絡しておいてくれ。」

 

提督「…確かなんだな?また青葉がネタ探ししているなんてことは…」

 

祐輔「データに照合しなかった。間違いない。」

 

提督「…分かった。…無茶はするなよ?」

 

祐輔「無茶しなきゃ警備員なんてやってらんねぇよ…」

 

そうこぼしながら、通信を切る。

 

侵入者が寮の前で止まったので、俺も少し後方の柱に身を隠す。

 

「…ここだったな?艦娘の寮は…」

 

「ああ…普段は入ることが出来ないからな…今しかチャンスはない。」

 

…これ以上先に進ませるわけにはいかない。

 

そう思った俺は、2人に声をかける。

 

祐輔「…どうもー。良い夜ですねぇー。」

 

「なっ…!?」

 

祐輔「せっかく来ていただいた所悪いんだけどさぁ、俺の雇い主から、艦娘たちに危害を加えさせるなってお達しが来てんのよね。……というわけで、アンタらをつまみ出させていただくよ。」

 

「だ、誰だ、お前…!」

 

明らかに狼狽している様子の侵入者に、俺は、

 

祐輔「…通りすがりの『警備員』だ。覚えときな。」

 

我流の拳法の構えを取り、答えた。

 

「け、警備員!?」

 

「バカな、ここの鎮守府には、海軍兵は派遣されていなかったはずじゃ…!?」

 

祐輔「ああ、そうさ。…で、その代わりに俺がいるって事。俺としても、手荒な真似はしたくねぇんだ。おとなしくするって言うなら、正門まで見送ってあげるけど?」

 

「へっ…やれるもんなら、やってみなぁ!」

 

そう言って、侵入者の一人が殴り掛かってきた。

 

祐輔「…っち、仕方ねぇな……」

 

 

~我流 挑発反撃(アテンションカウンター)~

 

 

(…ダンッ!バシッ!)

 

「ぐえっ…」

 

奴の攻撃を軽くいなし、即座にカウンターの裏拳を浴びせる。

 

「な、なにっ!?」

 

一撃で気絶した仲間をみて、もう一人が驚愕の声を上げる。

 

祐輔「さて、お前にはオハナシを聞かせてもらおうか。…その後はブタ箱行きだがな。」

 

叩きのめされた一人が気を失っているのを確認した俺は、もう一人に問いかける。

 

祐輔「…これ以上、あまり派手に暴れたくないんでね。おとなしく従ってもらえると助かるんだけど。」

 

「…まあ、手荒に扱われるのは俺もごめんだ。…だがなぁ、お前に従うのは、艦娘を一目見てからだ。」

 

祐輔「…はぁ?お前、まだそんな勝手な事を…」

 

「また今度だ!」

 

そう言って、奴は俺に発煙筒を投げつけてきた。

 

祐輔「うわっ…!なんでそんなもん…!」

 

俺が煙で目を奪われている間に、侵入者が逃げ出す。

 

祐輔「クソが…ぜってぇ逃がさねぇ…!」

 

そして、鎮守府内で、奴と俺のチェイスが始まった。

…だがまあ、このまま追いかけていてもジリ貧になるのは分かり切ってる。

 

祐輔(さて、どうしたものかねぇ…)

 

走りながらふと周りを見ると、このエリアが物資などを保管している酒保のエリアに近い事に気づく。

 

祐輔(…この辺りなら、どこか狭い通路に入ってくれれば…)

 

だが、そのためには、どうにかして路地に入るように誘導しなければいけない。

…すると、前方に、艦娘が使う「高速修復材」のバケツが転がっていた。

 

祐輔(…あれだ!)

 

そう思った俺は、相手に向かってそのバケツをサッカーボールの様に蹴った。

 

(ポカンッ!)

 

「ぐえっ…!」

 

祐輔(…ビンゴ!)

 

見事にバケツはクリーンヒットし、侵入者は一瞬よろめきながら横の裏路地に入った。

 

その道に続いて入った俺は、三角飛びで壁を蹴り、侵入者の前に着地して、

 

祐輔「…悪いが、こっから先は、」

 

(チャキッ)

 

「うっ…!」

 

祐輔「通行止めだ。」

 

銃口を向けた。

 

祐輔「…さて、おとなしく入場料を払ってもらおうか?」

 

「ク、クソが!」

 

侵入者の方も、銃を抜いて構え、俺に向けて発砲する。

 

それを柱に隠れて回避する。

 

…腕は素人に毛が生えたレベルだが、むやみに発砲されちゃこちらも困る。

 

祐輔「おいおい、チャカ持ちかよ…!お前はヤクザか?」

 

「お前が言えた事か!」

 

祐輔「あいにく、こちらは正式に携帯を許可されてるんでね…!」

 

物陰に隠れて敵の銃撃をやり過ごしながら、しばらくの時間が過ぎる。

 

祐輔(クッソ…さっさと終わらせねえと…この地形じゃ銃撃戦は不利だ。なら、接近戦で仕留める…!)

 

銃を懐にしまい、銃撃が止んだ瞬間を見計らって、俺は物陰から飛び出し、敵の目前に迫る。

 

そして、独自に編み出した技を繰り出す。

 

 

~我流 射撃奪取(ガンスティール)~

 

 

相手が銃を持っている腕を掴んで体を引き寄せ、その勢いで右脚で膝蹴りを浴びせる。

そのまま相手が持っていた銃を奪い、相手に突きつける。

 

「っ!?」

 

撃たれる、と相手に思わせながら、持っている銃をクルリと回して銃身の部分を持ち、空いたグリップの部分で相手の肩を引っかけて地面に引き倒し、とどめに背中から振り上げた脚を叩きつける。

 

祐輔「…せいっ!」

 

「ぐはっ…!」

 

この間、わずか5秒。

 

祐輔「…どうした?そんなもんか…?」

 

倒れている相手に向かって手を招き、挑発する。

 

「クソが…なめるなぁ!」

 

敵が突進してきて、俺にパンチを見舞う。

肘鉄でそれを叩き落とすもすぐさまもう一撃殴ってきた。

それを見切れず、腕でガードしたものの、一撃喰らってしまう。

 

祐輔「くっ…!」

 

「うおおお!」

 

俺が体勢を崩したのを見計らって敵がつかみかかり、組み合いになる。

 

…だが、冷静に、膝蹴りを喰らわせて体勢を崩させ、右手で奴の左足を、左手で奴の首元を掴み、次の技を出す。

 

 

~我流 捕縛反撃(バインドカウンター)~

 

 

左足の後ろ払いで、相手の右脚を払って地面にひっくり返し、そのまま蹴り飛ばす。

 

祐輔「でぁりゃぁ!」

 

「うぉっ…!?」

 

蹴り飛ばされて、奴が地面を転がっていく。

 

祐輔「…時間がねぇんだ。さっさと終わらせンぞォ!チンピラァ!」

 

腰を落として手を交差、そのまま円を描くように回し、左手を前方に、右手を腰の付近に構えて力をためる。

 

 

~我流 一閃重撃(ヴォーパルインパクト)~

 

 

祐輔「はああぁぁぁ………!」

 

そのまま貯めた力を拳に乗せて、正拳突きを見舞わせる。

 

祐輔「…おルぁ!!」

 

俺の拳が奴の腹に突き刺さり、そのまま吹っ飛ばす。

 

「ぐはぁーっ!」

 

祐輔「…ふぅ……」

 

ゆっくりと息を吐いて心を落ち着かせる。

 

奴は、立ち上がる気力も失せたのか、地面にしりもちをついている。

 

「な、なんだこいつ…化け物か…」

 

おびえながら這いずって逃げようとするそいつを捕まえて胸倉を掴んで持ち上げ、最後通告を突きつける。

…ここまで暴れられた以上、不法侵入の他に、公務執行妨害としてもお縄につくはずだ。

 

祐輔「…さて、オマエ。」

 

「ひっ…!?」

 

祐輔「俺は一度警告したぜ?…それを突っぱねてここまで来たんだ。…相応の覚悟はできてんだろうなぁ…?」

 

「あ、ぁ、ぁぁ…」

 

提督「…おぉ…また派手にドンパチしたなぁ…」

 

そこにやってきた提督が、ボロボロになった侵入者を見て、苦笑した。

 

祐輔「…どうする?まだやるって言うなら付き合うが……やっぱ相手が悪いと思うよ?」

 

提督「そいつのいう事は聞いた方が良いぞ。そうすれば五体満足でここから生きて出られる。ただ抵抗したら…どうなるかは保証できないな。ま、俺も知りたくは無いけど。」

 

俺たちのその言葉に観念したのか、賊はガックリとうなだれる。

 

その後、提督から連絡を受けてやってきた憲兵によって、連行されていった。

 

提督「…やれやれ、久遠流格闘術は伊達じゃないってか。…俺もまだまだトレーニングしないとなぁ…」

 

祐輔「お前は筋が良いから、すぐ覚えられるさ。」

 

そんなやり取りを交わしながら、提督は本館へ、俺は晩飯を待つ吹雪ちゃんたちがいる小屋に戻った。

 

 

…その後の取り調べで、奴らは、鎮守府の酒保に荷下ろしをしている運送会社のトラックに忍び込んで、敷地内に侵入したことが分かった。

 

奴らのおかげで、これからは運送トラックの荷台の中もチェックする羽目になった。

 

…仕事増やしやがって。クソったれが。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

秋刀魚漁が終わって早2,3週間が経ちました。

皆さんは秋刀魚、豊漁でしたか?

それでは、また。
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