東方傭兵譚 〜The Mercenary and the Sage Trail〜 作:文才の無い本の虫
0「廻る」
黄緑に輝く風が頬を撫でる。
あれから膨大な時間が過ぎ去った。
―――もう忘れて仕舞ったのか。
永い時間の後、
もう目覚める事は無いだろう。
俺は
それだけは覚えている。
此れ迄、幾つもの世界を旅して来た。
幾つもの出会い、幾つもの物語、そして幾つもの別れがあった。
書物には残せ無い旅の記録。
俺の魂は磨耗しているのだろうか?
・・・・・俺が弱気か。
『黒い鳥』が、か。
笑えないな。
「・・・・・?」
風を感じる。
「風向きが変わった?」
風よ、お前は俺に何を伝えようとしている?
――――『また、逢えますから』
「・・・・・少し、この世界を見てみるのも悪く無い、か」
青く透き通った空を見上げる。
「行くか。目的地は、後から考えれば良い」
この黄緑色に輝く風に乗ってみるのも一興か。
足裏で風を・・・・・いや、波を踏みしめる。
周りにスカイフィッシュが集まって来る。
「ふっ・・・・・お前等も来るか?」
――
――
――
「最近見たな。確か、ポール・ゴーギャンの絵画だったか・・・・・そうだな。取り敢えず風の、波の行く方角へ」
皮肉にも踏みしめた波は翼の様に広がった。
―――――――第■章「終わらない物語」―――――――
少し前に起きた大馬鹿者の壮大な告白から十数年。
この世界で旅を始めてから数十年といった所か。
俺は何時もの様に一定の高度を保って波に揺られていた。
――
――
すると、今日はいつもと違いスカイフィッシュが来訪者が来ることを伝えてきた。
目を開けると其処には俺を覗き込む
「ソウゲツ」
「・・・・・レントンか」
「今日は、お前に礼と別れを言いに来た」
「決断したか」
「ああ。俺は此処で生きる事よりもエウレカと、俺達の子供と暮らすことを選ぶよ」
「ふむ、あの小童共はどうする?」
「此処で生きるとさ。今頃じっちゃんと機械いじりでもしてるだろう」
「そうか」
「・・・・・ソウゲツ、ありがとう。俺達に選択肢をくれて」
「ソウゲツ、スカブを代表して私からもお礼を言わせてもらうわ。ありがとう」
「・・・・・俺は唯の残り滓だ。この光景は、この青い星は紛れもなくお前等の努力の結果だ。俺はただ手助けをしただけだ・・・・・・・・・・レントン、エウレカ。達者でな」
「ああ!」
「うん!・・・・・ニルヴァーシュ!!」
巨人の胸が十字の星に開き、二人は中に入る。
そして巨人・・・・・ニルヴァーシュはステッキを掲げる。
空に幾何学が投影され、虹色の光が溢れ、彼等の姿が薄れていく。
「ソウゲツ!またな!!」
「ふ、ああ」
そうして彼等は虹の向こうへと旅立って行った。
・・・・・感慨深いものだ。
あの二人は『愛』で世界を超えた。
『愛』、か・・・・・。
――
――
――
――
「待ち人?」
――
――
「後ろ・・・・・?」
懐かしい
永らく忘れていた
有り得ない、有り得る筈が無い。
「ごめんなさい・・・・・・・・・・とても、とても時間が掛かってしまった。待たせてしまったわね、
「・・・・・っ」
「漸く、追い付いた。もう・・・・・貴方を独りにはしないわ」
思わず抱き締める。
彼女も俺を抱き締めた。
・・・・・ああ、昔に戻ったみたいだ。
暫くして、彼女―――紫は恥ずかしそうに人差し指で頬を掻く。
・・・・・懐かしい仕草だ。
「実は・・・・・貴方に逢う為に力を使い果たしちゃってね。暫く護衛が必要なのだけれど、終身雇用でどうかしら?」
始まりのあの時の様に、俺は口を開いた。
また、始める為に。