東方傭兵譚 〜The Mercenary and the Sage Trail〜 作:文才の無い本の虫
作者役「短編第一弾は綿月姉妹のお話です」
エディ「時系列的には4と5の間だね」
作者役「因みに前に言っていたオリジナル小説は設定が固まってきた感じ」
作者役&エディ「「では、どうぞ☆」」
作者役「・・・・・僕にはキツイんだが?」
『月の都』にある『黒い鳥』の屋敷。
通常は訪問者が殆どいないそこに、一人の女性が訪れた。
その女性は縁側で寝転がっている『黒い鳥』の前に立ち、言う。
「『黒い鳥』、仕事よ」
・・・・・面倒事の予感がするな、と『黒い鳥』はため息をつき、その女性――永琳に何時もの様に定型文で問う。
「はぁ・・・・・で、内容は?」
「月夜見の見つけて来た幼い子供達の育成よ」
「・・・・・要するに、子守か?」
「そうよ」
『黒い鳥』は頭を抱え、渋々頷く。
この時、『黒い鳥』は、この依頼が自身の今後を大きく変えるとは思ってもいなかったのである。
◇◇◇◇
「せんせい!あさよ!」
腹の上に飛び乗ってくる誰かの衝撃で、『黒い鳥』は目を覚ました。
「ん?・・・・・豊姫か。依姫はどうしたんだ?」
『黒い鳥』の腹の上に跨がっていたのは亜麻色の髪の幼女。
永琳から預けられた子供の片割れである綿月豊姫だ。
豊姫は『黒い鳥』が言った言葉に少し首を捻り、笑顔で言った。
「依姫はねてるわ」
豊姫の言葉に『黒い鳥』は豊姫の妹である薄紫色の髪をポニーテールにした幼女――綿月依姫がぐーすかぴーと寝ている何時もの光景を思い浮かべる。
「ん、じゃあ起こしに行かないとな。豊姫、朝飯は何が良い?」
「うーん・・・・・桃!!」
「桃ばっかりだな・・・・・まあ、良いか。前に木ごと取ってきたから桃なら沢山ある」
後は適当に米と魚に味噌汁で良いか・・・・・、と『黒い鳥』は頷き、上に跨がっていた豊姫を持ち上げて、横に降ろした。
布団から出た『黒い鳥』は何時もの様に近くに畳んであった黒いロングコートに袖を通す。
「せんせい!ん!」
豊姫が『黒い鳥』に向けて腕を広げる。何時もの光景に『黒い鳥』は苦笑し、片腕で豊姫を抱き上げる。
「落ちるなよ」
「うん。あとで依姫にじまんするわ!」
『黒い鳥』は豊姫に大袈裟に自慢された依姫に一日中抱っこをせがまれて永琳と月夜見の珍しい姿――腹を抱えて大爆笑――を見た時の事を思い出す。
「程々にな・・・・・」
「わかった!」
コレはわかってないな・・・・・、と『黒い鳥』は苦笑しながら屋敷の豊姫と依姫の寝室――『黒い鳥』の屋敷はそこそこ広く、部屋が余っている――に向かう。
そこには・・・・・
「ぐぅ」
依姫がぐーすかぴーと寝ていた。
因みに、ここ数ヶ月で依姫が自発的に起きたのは3回である。
「依姫、朝だ。起きろ」
「・・・・・ううん?せんせー?」
『黒い鳥』が揺すると依姫は少しして起きた。
その後、寝惚け眼の依姫を洗面所で顔を洗わせ、居間に数ヶ月前に置かれたソファーに綿月姉妹に送り届けた『黒い鳥』は台所に立った。
「・・・・・さて、作るか」
『黒い鳥』は何時もの様に白米炊き、魚を焼き、野菜たっぷり味噌汁を作り始める。
幸いなことに昔の永琳の無茶振りとここ数ヶ月の経験により、『黒い鳥』の家事能力は熟練の主婦の域に至っていた。
尚、綿月姉妹は『黒い鳥』の料理に大変ご満悦だったそう。
「「おかわり!!」」
「ゆっくり食べろよ・・・・・」
◇◇◇◇
歳月は流れ、永遠亭にて。
「「お師匠様、お願いがあります」」
「あら、豊姫に依姫。どうしたの?」
「先生に贈り物がしたいんです。で、木刀でも作ろうかな、と」
「成程、それで木が欲しいのね?『黒い鳥』が振っても壊れないレベルの」
「はい」
「良いわよ。少し待ってて頂戴」
「堅くて粘り強い木材になるようにデザインして・・・・・後は神気でも混ぜておこうかしら?」
「む?永琳、面白そうな事をしているな。私にも一枚噛ませてもらおうか」
「あら、月夜見。あの娘達が『黒い鳥』に贈り物をするらしくてね。手伝ってくれるというのならひたすら頑丈になるように貴方の加護をかけてくれるかしら?」
「うむ、良いぞ」
「依姫、整形は一緒にやりましょう」
「はい、姉さん。では、いきます!!」
「え゛ちょ、依姫?!」
「愛宕様の火!!」
「そうそう、燃えづらいから火を使っても大丈夫よ」
「名前はどうしましょうか?」
「うーん、先生に似合いそうなのだったら『烏丸』とか?」
「じゃあ、『頑丈くん』にしましょう!」
「え゛」
「『頑丈くん、作、豊姫、依姫』・・・・・っと。完成です!!」
「ま、まぁ、依姫が良いなら良いわ・・・・・」
「姉さん、早速先生にプレゼントしに行きましょう!!」
「『黒い鳥』なら何時もの空き地に居るはずよ。豊姫、依姫、さっさと行って来なさい」
「「はい!」」
◇◇◇◇
『黒い鳥』が綿月姉妹を預かってから数年が経ったある日。
『黒い鳥』は何時もの様に『月の都』の外で身体を動かしていた。
求道の果て、『到達者』たる『黒い鳥』に鍛錬は必要では無いのだが、『到達』する迄の数百年で癖として身に染みついてしまった。
瞳を閉じ、
その虚像と組み手、殴り合い、撃ち合う。
『ふっ・・・・・また鋭くなったのでは無いか?『黒い鳥』?』
それ程でもないさ、と『黒い鳥』は声に出さず苦笑する。
『・・・・・む?貴様に客のようだぞ?』
「は?」
『目を開けて振り返ってみろ・・・・・クククッ』
虚像であるはずの彼女の台詞に『黒い鳥』は間の抜けた声を上げる。彼女の虚像は口元に笑みを浮かべて掻き消えた。
『黒い鳥』はモヤモヤとした疑問を抱えながら言われた通りに目を開けて後ろを振り返る。
「先生!!」
「依姫と豊姫か。どうした?」
「先生に日頃の感謝を伝えようと思いまして♡」
「先生、受け取って下さい!!」
依姫が差し出したのは一本の木刀だった。
『黒い鳥』はそれを受け取って見る。
「コレは・・・・・木刀?」
「はい!」
『黒い鳥』はその木刀を握る。
・・・・・ああ、よく馴染む。
『黒い鳥』は明らかに依姫のお茶目なネーミングは敢えて無視して二人に礼を言う。
「豊姫、依姫、ありがとう。大切にする」
「「はい!」」
「何か、礼をしないとな。豊姫、依姫、何かして欲しいことはあるか?」
「私は先生の膝枕で〜」
「久しぶりに先生のご飯が食べたいです!!」
その日、二人は始終上機嫌だったという。
・・・・・身体は闘争を求める?いや、私はゆかりん成分が欲しいんだよ!!
▷Material
・『朱い月』(Character)
『黒い鳥』が戦った吸血鬼の真祖。『黒い鳥』に負け、抑止力の介入によって消滅した・・・・・筈である。『黒い鳥』に贈り物を残していた。
・黒いロングコート(Item)
『黒い鳥』の昔から愛用しているコート。見た目はロングコートだが、『黒い鳥』により様々な改修がなされている。