『良いか、お前ら。嘘は吐く状況に寄って変わる。いくら正しい嘘でも誰も聞く耳を持たなければ、意味が無い。お徳ポイントの無駄遣いだ。だが……』
先生は黒板の方を向き、何かを書き始めた。
どんな時でも自分を信じろ
『自分が嘘だと思ってしまっていたら誰も騙されない。自信の無さは、顔や態度に出る。だからお前ら!堂々と正しい嘘を吐け』
鐘が鳴ると先生はふぅと、息を吐いた。
『今日の授業は、ここまで!』
その言葉と同時に、生徒が一斉に椅子から立ち上がる。
「「「「「「「先生、さようならぁ!!」」」」」」」
言葉が先か、身体が先か。争う様に、クラスメイト達が教室から飛び出る様子を僕は横目で見ながら、強化書を持って先生がいる場所へ行く。
『お、
「はい、ちょっと分からなくて。正しい嘘って、具体的にはどう言うモノなんでしょうか」
『むっずかしい事聞くなぁ……。正直、先生も分からないんだよな。そもそもこの世の中が、嘘に塗れているしな。何が正しいのやら』
先生は暫く頭を悩ませていたが、パッと顔を上げて僕と目線を合わせて教えてくれた。
『先生が思う正しい嘘と言うのはな……』
僕はワクワクしながら、その言葉の続きを待った。
『やっぱり分からん!』
先生はニカッと笑ってそう言った。僕は、何も面白く無かった。むしろ不機嫌になるレベルだったので露骨に顔に出ていたんだと思う。
先生は、慌てて言葉を足した。
『正しい嘘は分からん。でもな吐いても良い嘘って言うのもある。それは誰も傷つかない嘘だ。幸せな嘘だ、優しい嘘って言っても良いかもしれない』
優しい嘘……。人を笑顔にさせる嘘って事ですか?
『そうだ!言葉にするのは簡単だが、行動に起こすのは難しい。どうだ?試しにやってみろ!』
先生を喜ばせる……実はここだけの話なんですけど、さっき他の先生達が明日学校休みになるっていってましたよ。
『え?マジで?』
「喜んだ!はい、僕の勝ち」
あっと小さく声を上げると再び、先生は頭を抱えてしまった。因みに学校が休みなのは、嘘。ちゃんとココだけの話って言ったし。
『世の中は俺みたいにチョロい大人ばかりじゃない。気を付けろよ、正直!』
自分が、チョロいのは認めるんだ。と思いながら僕は頷いた。まあ僕みたいな小学生の話を、まともに信じるのは先生以外少ないと思う。大人は皆汚い。昔の歴史がそう証明してるから。
むかーしむかし。ヒトが住む場所から遥か上空に神様の神殿があり、そこで神様は時に仕事で下界を覗いていました。その時もまた、神様は仕事で仕方なく覗いているとどこかもかしこも醜い大人達は嘘を吐いたり、不正を犯してはもみ消したりして汚い事ばかりしていました。
そこで神様は思いました。一回痛い目見せれば懲りるんじゃね、コイツら。そうすれば、反省してこんな事もやらなくなるし仕事も無くなる。最高じゃん!と思った神様はウッキウキで、すぐに行動に移りました。
奴らは嘘や隠し事が大好きみたいで、いつも何かを隠していたり、誤魔化していたので。
"嘘"に関する特殊能力を醜い大人達に渡しました。こうすれば勝手に潰し合ってくれるだろうと神様は思って、昼寝をする事にしました。
そして目が覚めた時、彼らはちっとも反省などしていませんでした。反省どころか、自らが選ばれし者だと宣言し能力を使って汚い欲望を叶え、やりたい放題に暴れ回っていました。
その光景を見た神様は人間に落胆し渡したスキルを全部回収し、関わった全員の記憶を消して無かったことにしました。
その後、神様は思いました。大人は汚いし、想像力も少ないから大した嘘を吐けない。なら子供ならどうだろう?
面白い事になりそうだと思った神様は、懲りずに今度は子供達に特殊能力を渡す事にしました。
『ちょっと待て』
先生にお礼を言って、帰ろうとしたら何故か止められた。何だろう。
『今朝のニュース見たか?最近犯罪者がここら辺でウロついてる話』
あーそれなら、朝見た気がする。それが?
『もし、それが
『生徒に手を出して、それを他の生徒に見られたから■したって言ったら信じるか?……気づかなかったか?クラスの席に二つ空席があったのは……』
「先生、ゴメン。
そう言って僕は強化書を落とした。
『はぁ?何言ってるんだ正直』
先生は強化書を拾って埃を叩くと、僕に渡そうとして止まった。
『やべっ、いつもの癖で』
「嘘を吐くには、守らない事が三つある。一つ、自分の嘘を一番に信じ、自分の嘘に、騙されない事。二つ、自分が言った嘘に反する事はしてはいけない。ズレが起きて、嘘が嘘だとバレてしまう可能性が上がるから。そして最後、嘘は吐いてはいけない」
『成程、それは強化書の後半の方の範囲だ。つまり、嘘を吐いていたのはそれか』
黙って肯定する。やっぱり大人は嘘吐きだ。
「先生は、嘘をいっぱい吐いてたみたいだけどね」
『はぁ、何言ってるんだ?』
「二人は、生きてるし、先生は犯罪者じゃ無いし、勿論手も出してない。因みに二人が休んだのは、一緒に遊びに行って風邪をひいたから先生のせいじゃない」
本人達からそう伝えられたから間違いない。
「じゃあ何で、先生がそんな嘘を吐いたのか。犯罪者がいるのは本当なんでしょ?だから注意させる為になのかな?その為に悪い嘘吐きのフリをした」
「でも、先生は優しすぎる。自分が悪い嘘吐きだと思い込めなかった」
『あぁ、そうだ。悪い犯罪者なのに、落ちた強化書の埃を叩いて渡すなんておかしいよな。そう思う前に体が動いてた』
「先生は、特殊能力持ってないんでしょ?」
『ああ、俺のは猿真似だな。だから本当の犯罪者は息を吸う様に嘘を吐く。特に噂で聞く狼少年団はヤバいらしい。今日もアイツらと遊ぶんだろ?気を付けろよ。悪い犯罪者は悪行をすればするほど強いからな』
「遊ぶんじゃなくて修行です」
そう笑ってもう一度お礼を言うと、その場から立ち去った。
この世界は、嘘で何でも解決出来るし出来ない事もある。