ある日、年の瀬も近いというのに、生まれてこの方彼女無し、パチンコでスッて貯金無し、やること無しで、コンビニバイトに丸一日入るような若者がおりました。その若者曰く「世の中がすべて悪い」と言う有り様。救いようがありません。
そんなバックレないだけまだマシな若者がバイトを終える頃、世間様は年末の騒々しくも楽しい日々に、白く透明な差し色が空から舞い降りました。若者曰く「げっ、電車止まってないだろうな!? はークソクソ」と溜め息と共に、誰のかわからないビニール傘を勝手にコンビニの入口からパクっていきました。カスがよ。
さて、日頃の行いか案の定電車は大遅延。人の渋滞を見ては「やること無いのかよ暇人共が」と、どの口が言うのかと聞くに堪えない言葉を残し回れ右、2つ隣の最寄り駅まで歩くことにしました。
さて、若者が頼りなくぷらぷらと歩いていると、ぴゅうと、強風が吹く。するとなんということでしょう。安物のビニール傘は逆キノコになりぽっくりと骨が逝ってしまいました。それを見た若者はたちまち使えねー!!! と叫び、たちまち道端にあったお地蔵様に立てかけます。そのお地蔵様は雪を被り少し寒そうに見えました。
若者は何故か満足そうに「へへっ、良いことあるかもな……」だとほざきながら足早に帰宅しました。
そんな次の日のこと、頼んだ覚えのないUber Eatsがやってきました。なんと悪ふざけが如く、ピザトッピング全盛り。ハバネロソースマシマシ。そんな様子に流石の若者も首を捻ります。間違っていますよ、と伝えても受け取ってくださいの一点張り。仕方なく受け取った若者はお腹をすかせていたこともあり、食べることにしました。
「まぁ、悪くねぇな……たまにはこういうバカみたいのも」
バカはお前だ、と言いたくなるような光景ですが、なんと若者は辛いものが大得意でした。お金は失いましたがとても満足しました。
チッ、と空から舌打ちが聞こえた気がしました。
またまた次の日の事、見覚えのないサブスクに申し込みました。という通知がやってきました。お金のない若者は困り果ててしまいます。けれど一ヶ月は解除できないとのことで諦めてその内容を確認すると、B級映画見放題。月額〇〇円!となんとも微妙な内容。絶妙なサメ映画もてんこ盛りです。
だがしかし、若者は「ギャハハハハ!」と大爆笑。そうです。若者は大馬鹿なのでした。
チッチッ、と空から2回舌打ちが聞こえました。
またまた次の日なんと大晦日、部屋のチャイムが鳴りました。するとそこにはお坊さんが。何やら年末の説法をして回っているそう。これには若者も大困り。何故ならこれから見なくてはいけないクソ映画がたくさんあったからです。けれど、お坊さんは逃がしてはくれません。困り果てた若者は諦めて話を聞くことにしました。
内容はやれ日頃の行いだ、とか、やれ物事には輪廻があって、とか、ぎゃーてーぎゃーてーはらぎゃーてー、とかそういったよくわからないものばかり。そうです、若者は阿呆なのでした。
まったくわからないものを言っていても仕方ないと思ったのか、お坊さんはレベルを幼稚園レベルまで落とすことにしました。すると、若者はすぐさま意気投合。
結局、いつの間にか日を跨いでおり、新年の時候。若者もお坊さんも般若湯を飲んで、特盛ピザを片手にゲラゲラとファッキンB級映画を楽しみました。
いつの間にか眠っていた若者、お坊さんは居なくなっていました。狐につままれた気分でカーテンを開けるとそこには快晴の空。なんとなく気分が良くなって、そのままお散歩に出かけることにしました。
またしてもぷらぷらと歩きスマホをしていると、見覚えのあるお地蔵様。捨てた傘は丁寧に畳まれ、お地蔵様の足元に置かれていました。完全に存在を忘れていた若者ですが、それを見て思い出します。
「そういえば、よくわからないことが起きすぎたけど割りと楽しかったな……」
心なしかお地蔵様に影が出来る。
「やっぱり普段の善行だよな!!」
そう言って、また背を向けて歩く若者。そうです彼は大馬鹿ものです。
そんな大馬鹿ものの背中に何者かがドロップキックをブチかましたが如く、勢いよく若者はぶっ飛んでいきましたとさ。
目出度し目出度し。