一人称が「おじさん」のホシノの先輩   作:惡喰

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本編と一切関係のない時空のお話です。

つまりは与太話。

基本的に頭空っぽにしてお楽しみください。一部しっとりしていますが。


「ん、リョウジ先輩、媚薬作れるって本当?」

シロコちゃんによる突然の燃料投下によって、対策委員会教室の時間が止まる。

 

かろうじて動けたのは燃料の投下先であるリョウジ先輩くらいだった。

 

まぁギギギ、と機械が軋むような擬音が聞こえてきそうなくらいゆっくりと首が動いていただけなのだが。

 

「…………シロコちゃん。それをどこで知ったのかな?」

 

「ん、ユメ先輩」

 

「何やってんだユメェ!」

 

シロコちゃんにいらんことを教えた下手人はユメ先輩だった。いや、本当に何やってるんですか。

 

「ち、ちなみにだけどもし俺が作れるって言ったら、シロコちゃんはどうするんだ?」

 

「一つ作ってほしい」

 

「……一応だけど、使用用途を聞いても?」

 

「ん、先生に飲ませる」

 

「アウトォ!ワンアウトじゃなくてスリーアウトどころかゲームセットだよ畜生!どうなってんだ倫理観とか性知識とか!ほら、見てみろよ!シロコちゃんが特大の爆弾を投下したせいでセリカちゃんは固まったままだし、アヤネちゃんはポカンとしたまま動いてねぇんだよ!」

 

「」

 

「(ポカン)」

 

というか口ぶり的にリョウジ先輩は作れるのか。作れてしまうのか。そっか。そっかぁ。

 

「あーいけませんいけません!先輩は純愛しか認めませんからね!双方合意じゃないと使用を認めません!」

 

「ん、大丈夫。先生を逃げれなくした状態で聞けば双方合意」

 

「それって脅迫って言うんだよ知ってる???」

 

シロコちゃんは先生のこととなると暴走気味になる。恋に積極的と聞けば聞こえは良いかもしれないけど手段を択ばないのはどうかと思うなぁ。

 

まぁでも先生を狙ってるライバル多いもんね。このアビドスにもいるし。そう考えると焦っちゃうのも仕方ないのかなぁ。

 

「大丈夫、ちゃんとお金は用意する。銀行強盗で」

 

「お金の問題じゃないし、用意する手段も最低だよ!?ホント思考回路どうなってんの!?」

 

「────リョウジ先輩」

 

シロコちゃんとの論争をしている最中にノノミちゃんが割り込んでいく。

 

「どうしたのノノミちゃん?ちょっと今はシロコちゃんの説得で────」

 

ドン、とリョウジ先輩の言葉を遮るようにノノミちゃんの手が勢いよく机に叩きつけられる。

 

「いくら欲しいですか?」

 

「わぁいおかねら」

 

マジだった。マジのやつだ。ノノミちゃんの顔は笑っているけどまったく笑っていない。自分が持っている全財産を投げうってでもリョウジ先輩の媚薬を手に入れようとする『スゴ味』がノノミちゃんの全身から発せられていた。

 

「私は先輩がリョウジ先輩が作ってくださるソレにそれだけの価値があると感じています。ですので、言い値で買い取ります」

 

「わァ……ぁ……!」

 

あ、ダメだ。普通の人が手に入れることが出来ないような大金をいきなり出されてリョウジ先輩が混乱しちゃってる。

 

というかノノミちゃんが更に燃料投下しちゃうものだからセリカちゃんとアヤネちゃんも更に混乱しちゃってる。

 

「」

 

「(きょとん)」

 

はぁ、しょうがない。正直あの中に飛び込むのは勘弁したいんだけど私が助け舟を出さないとこの事態は収拾しなさそうだしやるしかないか。

 

「シロコちゃん、ノノミちゃんそこまで。リョウジ先輩(このバカ)ちょっと借りてくね~」

 

「ん、ごゆっくり」

 

「リョウジ先輩、私諦めませんからね☆」

 

そう言って私はリョウジ先輩の手首をつかんで引きずりながら教室を出ていく。

 

 

 

 

暫く引きずっているけれど、リョウジ先輩はまだ正気に戻らない。

 

というかさっきシロコちゃんがごゆっくりって言ってたけど、そういう風に見えたのだろうか。そういう顔をしていたのだろうか。

 

「…………はっ!あ、あれ?札束の風呂は一体どこに?」

 

相変わらずバカというか、ちょっと時代が遅れすぎている俗っぽい幻覚を見ていたようだ。

 

「って小鳥遊?あ、もしかしてお前が助けてくれた感じ?いやぁ助かったよ。さすがにあの状況は何とかできる気がしなかった。ところでそろそろ手離してくれて構わないぜ?」

 

ごゆっくり。ごゆっくり。

 

「あの、小鳥遊?小鳥遊さん?おーい?なんで返事がないんですか???そして俺をどこに連れて行く気かな?何する気???ねぇ小鳥遊さん???」

 

ああ、そうだ。後輩たちもああ言ってくれたし。ユメ先輩も今日はいないし。

 

たまには、私も良い思いをしてもいいんじゃないだろうか。

 

そうして、私がいつもお昼寝をしている教室にやってくる。

 

マットの近くまでやってきて、掴んでいた手首を少し乱暴にマットに向けて振る。

 

「痛……くは無いが!」

 

逃げられないように。逃がさないように。もう一方の方の手首も掴んで。リョウジ先輩の体の上に乗って、顔を近づける。

 

何とも学生らしくないこんな状況を作ったのは私だけれども。これから先が分からない。いや、おそらく私にはできない。

 

「おい、いきなり何すんだ小鳥遊────小鳥遊?」

 

「…………」

 

私の顔を見るなりリョウジ先輩の顔に浮かんでいた怒気は霧散する。

 

私は今、どんな顔をしているんだろうか。

 

「……はぁ、全く。おい、小鳥遊。せめて片方だけでいい。手、放しちゃあくれないか?」

 

「……はい」

 

私が左手の力を緩めると、リョウジ先輩はそのまま右腕を伸ばして私の頭を撫でてきた。

 

「あっ」

 

でも、私を撫でるその顔はわがままを言う子供を宥めるような。溺愛するペットの粗相の片づけをするような。

 

そんな表情だった。

 

──まだ、私は。

 

「……なんだ、さっきの会話で嫉妬でもしたか?」

 

「……わかりません。ただ、なんだかよくわからない気分になったのと、シロコちゃんがごゆっくりって言ったから」

 

「…………はぁ、シロコちゃんめ。ホント今度ちゃんと話しないとな」

 

また、いつものようになんだかんだとやり過ごされる。本当にズルい人。

 

「まぁ、おまえが珍しく自分の欲を出すのは喜ばしいことなんだがな。しかし相手が俺っていうのが複雑な訳で」

 

「…………どの口が言うんですか」

 

本当に、どの口が言うんだか。

 

私がこうなった大きな原因の一つはあなたなのに。

 

「知ってるだろ。俺とユメの事」

 

「……はい」

 

それでも。今くらいは、私を。私だけを見てほしくて。

 

────いまだにあなたにとって、私がそんな風に見られていることが。悔しくて。

 

「はぁ、仕方がない。可愛い後輩にそんな顔されると寝覚めが悪いからな。ユメには内緒だぞ?」

 

「それってどういう────」

 

私が言葉を言い切る前にリョウジ先輩は私の頭を胸元に寄せてきた。

 

「できることはせいぜいこれ位だけどな。まぁ勘弁してくれ」

 

リョウジ先輩の身体は男の人のゴツゴツとしててあたたかい肌で、良い匂いという訳ではないけれど、不思議と安心する匂いがした。

 

それがとても心地よくて。なんだか眠くなってきた。

 

「………ふぁ。なんか俺も眠くなってきたな。じゃあ、お休み小鳥遊」

 

「…………はい、お休みなさい。先、輩────」

 

眠る時にも変わらず、リョウジ先輩の手は私の頭に置かれていて。

 

それがひどく、安心できた。

 

 

 

 

「ん……んぅ」

 

心地よい眠りから目を覚ます。

 

もうすっかり夕方になっているらしく、夕焼けが教室内に差し込んでいた。

 

寝ぼけた頭を振って、意識を覚醒させていく。

 

そうして、一番に目に映るのはリョウジ先輩(すきなひと)の寝姿。

 

「ふふっ」

 

無意識に笑みがこぼれる。今だけとはいえ、この姿を見られるのは私だけの特権で────────

 

「おはよう。ホシノちゃん」

 

「はい、おはようございます。ユメ先輩。…………えっ」

 

耳に入ってきた聞きなれた声。そちらの方に目を向けると見知った姿があって。

 

「ちょっとリョウくん起こしてくれるかな?ああいやでも、もう少しこの姿を見ていたいかな。ホシノちゃんもそう思うよね?」

 

「…………はい」

 

笑っている。笑っているけど笑っていない。

 

私は、ユメ先輩に気づかれないようにリョウジ先輩の手の甲をつねる。

 

「……んん?なんだ…………?」

 

リョウジ先輩が目を覚ます。幸か不幸かまだユメ先輩のことは認識していないようだった。

 

「おはようリョウくん」

 

「ああ………おはよう、ユメ。………………ん?ユメ???」

 

「そうだよ」

 

ああ、気づいた。気づいてしまった。

 

今ユメ先輩が目の前に居ることを気づいたリョウジ先輩は目を見開いて、凄まじい飛び上がり空中で正座の姿勢を取って着地した。

 

「え、え、え、え、え、えと、ほ、本日は、お、おひ、お日柄もよく」

 

「そうだね。ぐっすりだったもんね。ホシノちゃんと」

 

「ガ────────!」

 

クリティカルヒット。リョウジ先輩はひんしだ。

 

「あ、あのユメ先輩」

 

「ん?ああ、ホシノちゃんは謝らなくていいよ。ただ、リョウくんは別だけど」

 

すみませんリョウジ先輩。私は心の中で謝ることしかできなかった。

 

「でも、ズルいなぁリョウくんだけ。私もホシノちゃんと一緒にお昼寝したかったなぁ。だってあんなに幸せそうな顔したホシノちゃん中々見れないよ?」

 

「あ、うん。それは同意」

 

「え!?」

 

私の寝顔を二人に見られていた。というかそんなに幸せそうな顔をしていたのか私────────!

 

「まぁいっか。さて、久しぶりに三人で一緒に帰ろっか!なんだかアビドスから一緒に帰るなんて学生の頃を思い出すなぁ」

 

「まったくだな。おじさん若返っちゃった気分だよ」

 

「ところでリョウくんはまだ許してないからね」

 

「ひゃい……」

 

目の前で繰り広げられるいつかの日と変わらないようなやり取り。でもそれも最近ではあまり見ることが出来なくて。

 

でも、変わっていないということがひどく私を安心させてくれる。

 

「ふふっ。あはははははは!」

 

思わずつられて笑ってしまって。

 

そうだ、私たちはこうでなくっちゃ。

 

そんな私の姿を見た二人はどこか慈しむような表情を浮かべていて。

 

「よかったね。リョウくん」

 

「ああ、本当に」

 

その日は、久しぶりに三人で楽しく帰路についたのだった。

 

 

 

「あ、それはそうと帰ったら覚悟しておいてねリョウくん?」

 

なんでかなァ!

 

…………ふふっ。




祝、UA1万突破記念!

それと結び付けているようで別に結び付けてない回ですが、やっぱり幸せな話を書いている方が良いですね。心にダメージが来ませんし。
あ、次回は普通に重いif書くつもりです(人の心)

というか、ブルアカの人気に便乗している感も感じてはいますが多くの方々にこの作品を楽しんで頂けているようで筆者も動揺しています。というかほくそ笑んでいます。

やっぱ、お気に入りとか評価とか感想とかここすきされると嬉しくなる生き物やねんな、物書きって。

まぁこれからも細々と投下できたらと思っています。




感想、評価、誤字脱字指摘などお待ちしております。
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