「どーなってんだここは」
酒切らしたからコンビニで買おうとしたらそんなものねぇって言われたんだが。仕方ねぇからタバコにするかと思えばそれもなし。そんなことあるか?
「はー、まじかー」
既に空っぽの酒瓶をポイっと捨ててため息一つ。面倒な場所に来たかな、と少し考えながら歩けば向かう先から銃声が響く。
「……こうなりゃ暇つぶしでもなきゃやってられんな」
即座に銃声の方に向かうことを決める鬼巫女。当然、争いならば止めようなどと言う殊勝な心持ちではない。むしろ首を突っ込んで楽しめればそれでよしの精神である。ズボンのポケットに両手を突っ込み路の角を曲がればそこに広がっていたのは紛争そのものだった。少し違うものがあるとすれば、銃を握るのが若い少女達であることか。子供の喧嘩には似つかわしくない銃器を振り回し、しまいには戦車までが現れる。
「はー、随分と賑やかだねぇ」
しかしこの女、至って平静である。銃撃戦など川のせせらぎのように可愛いものでしかない鬼巫女にとって、じゃれあいにしか見えないものだったからである。
だが、相手もそうとは限らない。工事現場みたいな白いヘルメットを被り銃撃戦に励む少女達は道の脇でこちらを見ている鬼巫女に気づくとその銃口をこちらにも向けてくる。
「何だコイツは!?」
「おい待て!こいつヘイローがないぞ!」
ヘイローと呼ばれる何かを確認したらしく、すぐに撃とうとした銃口を少し下げて
「手を挙げろ!」
端的にそう叫んで銃を向ける少女達。しかし、表情の変わらない鬼巫女を前にしびれを切らし始める。
「このっ……!」
脅しのつもりだろう、鬼巫女の真横に弾丸をぶっ放した。
「ほう、良いんだな?始めたのはそっちだ」
ポケットに突っ込んでいた両手を抜く。たったそれだけの動作だが。少女達は無意識に唾を飲み込む。穏やかだった筈の空気が一気にこちらを呑み込むように牙を剥いたと錯覚する。
鬼巫女の姿がブレる。同時にこちらに銃口を向けていた一番近かった少女は地面に倒れ込む。
突然の変化に驚くより先に、少女達の背後から声が聞こえた。
「子供の遊びにムキになる程じゃないが、やられっぱなしは嫌いなんでね」
もはや少女達に余裕はなかった。今動かなければ自分達は死ぬ、その嫌な予感が頭から離れず。恐怖のままに振り向き躊躇いなく引き金を引いた。
弾丸の雨が着弾し、土煙を起こす。その煙が晴れた時、倒れ伏す女の姿がある。その筈だと言い聞かせる。しかし、その煙の向こうからの声でそれは一切否定された。
「もーいーかい」
楽しげですらある声が響く。煙の中か無傷の女が現れる。視界が反転する。自分達が膝から倒れているのだと気づくこともなく。少女達が気を失う直前、最後に見たのは凶悪に笑う女の姿であった。
倒れた少女達を放置し、地面に落ちた銃を一つ拾い上げる。手慣れた手つきでマガジンを抜いて分解、中身を覗く。
「手入れもしっかりしてんなぁ……玩具かと思ったらマジの銃だしよ」
銃は嫌いではない。むしろ浪漫に溢れたものだと思っている。折角だし一つ掻っ払っていこうかと思った時、横から声が。
「これは貴方がやったの!?」
そちらを見れば、頭に輪っかをつけた少女達がこちらを見ていた。いや、よく見れば後ろに輪っかのついてない男性が1人居た。
「おっとっと」
持っていた銃をポイっと捨てる。くすねるのがバレる所だった。
先ほどの少女達に比べて随分と個性のある少女達だな、と鬼巫女は思った。黒いセーラー服かと思えばスカートが結構際どい……って背中に翼が生えてるし。太ももが歳の割に太い少女だったりと。
「答えなさい!貴方何者!?」
太ももの太い少女がそう尋ねてくる。仲間だと思われても嫌だしさっさと逃げるか。
「私はただの流れ者さ、気にしなくて良い」
そう言って背中を向けてその場を後にしようとするも
「待ちなさい!ちゃんと説明を──」
その時、またどこかで爆発の音が響く。
「そっちが何なのかは知らんが、これ放置していいんかね?随分と派手な音がしたけど」
「……確かにそうだけれど」
「そういうことだ、じゃあな」
そう言って今度こそその場を立ち去った。今度は追いかけてくることはなかった。
かつてニコニコで見たとある動画の設定がチラつく……
この世界に彼女は劇物かもしれん(手遅れ)