鬼巫女はミレニアムの一角、機械関係なんでもござれ、と言った部室に訪れていた。普段のおちゃらけた雰囲気はなく、剣呑な雰囲気を醸し歩く姿に通行人は近寄れなかった。
そこはエンジニア部。ミレミアムの技術力の結晶と言える部活。その部長白石ウタハは重々しい雰囲気のまま。鬼巫女の前の机にアタッシュケースを置き、スッと差し出した。
それを無言で開く。入っていたのは様々な銃器と特殊な加工をした服であった。
目を細め、その中の一つ。銃器の一つに手を出し、アタッシュケースに収まっていたマガジンを取り出した。
「PM63、特注で改造した結果、大口径への変更で銃そのものを大型化。仕組みそのものは変わってないから信頼性はあるはずだよ」
本来ならサブマシンガンと言える筈のそれは大型化し、もはやアサルトライフルとなんら変わらないサイズへと変貌していた。マガジンを刺し、スライドを引く。
「弾は?357か?」
「454カスールだね、正直これを連射するとか私達でもコントロールに手を焼く。象でも狩るつもりなのかい?」
「威力の高さはそのまま浪漫の高さだぜ、使えるかどうかは問題じゃない」
カチャっと片手で構える。ずっしりとした重さが腕を伝う。素早く動き、構える。銃口には一切のブレはない。
「試作品の一つだろ?他には……」
「そうだね。M3ショットガンを弄ったこれなんてどうかな?」
持っていた銃を机に置き、指差されたものをケースから取り出す。ジャキッ!と銃下部についたスライドを勢いよく引く。
「大胆にストックと銃身を切り詰めてピストルグリップに換装、スラグ弾を使う仕様にした。携帯性を重視したせいで精度は悪いけど──威力は保証するよ」
くるくると銃を回して色んな角度から見詰める。
「ふむ──完璧だウタハ」
「感謝の極み……この下り、毎回やらなきゃダメなのかい?」
様式美、お約束ってやつは外せないんだ諦めろ。このやり取りをきっかけに昔に会った喧嘩友達を思い出す。
そういやアイツ、居なくなって結構経ったな。眷属の嬢ちゃんが張り切ってたのは覚えているが。
「珍しい依頼だったからこっちも楽しかったけど、今更銃が欲しいなんてどういう風の吹きまわしなんだか」
そんな他所に思考が飛んでる私を前にレンチを片手に不思議そうな顔で聞いてくるウタハ。
「ん?いつまでも素手ってのもアレだと思ってな。元から銃は嫌いじゃねーし、遊びのオモチャにしては少し重いがキヴォトスじゃちょうど良いだろ?」
毎回力加減するのも面倒だったから良い機会だ。
「それならこの全自動タバスコ発射装置を──」
そう言って後ろから何やら持ってこようとするウタハ
「ガチのオモチャじゃねーか、水鉄砲にタバスコ仕込んだ方がまだマシじゃねそれ?」
「それじゃ面白くないだろう?本来なら君の銃にも便利機能を色々仕込みたかったんだけど」
ふざけんな。またBluetoothだの電子決済機能だのと遊び心に溢れたもの付けられてたまるか。誰もやらない事には意味があると知れ。考えた結果ナシだと誰もがやる前に気づいた結果だろうに。
「それは次の機会にしてくれ。それで?代金は依頼で払うって約束だったが何をすれば良い」
またトンチキな依頼じゃねーだろうな。以前はメイド喫茶をやろうとか言って、最終的に機会生命体TAKOと触手プレイみたいな事させられたんだが?何言ってるか分からねーと思うが当事者の私も未だに分からん。誰かタコ消しマシン持ってこいや。
「そんな身構えなくてもいい。簡単な仕事さ」
「本当かぁ……?」
「本当だよ。よくウチに依頼する常連がいるんだ。今手が足りないみたいで人を探してるらしい。荒っぽい仕事らしいから、腕っぷしのある君なら適任じゃないかな」
ほー、聞くだけには普通だな。
「で、裏は?」
そう間髪入れずに聞き返せばチラリと机に置かれた銃を目にやりながら
「折角作った試作品なんだ、良いデータが欲しい。ぜひ使い倒してもらいたい」
との事だ。仕方ないのでその依頼人の所へ向かう事にした。
後に発覚した事だがその依頼人はC&C、あの頭トンチキメイド集団だった。なんか私も巻き込まれてメイド服を着させられ半ギレになりながらドンパチ銃撃戦をしたのは余談だ。
私は青筋を額に浮かせ、頭に刻み込んだ。
──ウタハ、後で、泣かす
依頼内容『不思議なアメ』
ブラックマーケットを中心として不審な動きあり。なんでも使えば天使の如き力を手に入れられるというオーパーツが夜な夜な取引がされているらしくその差し押さえをしてもらいたい。C&Cは舞い込んだこの依頼を承諾。その助っ人として呼ばれた鬼巫女と共にそのブラックマーケットの胴元を襲撃し回収した。
しかし結局のところ、オーパーツの正体は掴めず。分かったのは過去に作られた遺産の一部という事だった。
報告書作成者 明けの明星