澄んだ記録を目指して   作:上条@そぉい!

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やはり戦闘描写って難しい。自分の国語力を試される気がする。


『蹂躙』

 タイミングはドンピシャだったらしい。死にかけてるヒナを見るに1人でコイツらを相手にしていたのか。

 

「……先生は?」

 

 視線を目の前の敵から逸らす事なく後ろにいるヒナに聞く。

 

「……既にここから離脱した、でも──」

 

 そこで言葉を切るヒナに私もある程度察した。流石に守り切るのは無理があったか。多少の負傷はあったらしい。

 オーケー、状況は理解した。

 

「ひとまず……片付けから始めるか」

 

 目の前の敵は私が現れてからこちらに全員が銃を向けながらも警戒してか、撃つことは無かった。

 

「その姿、報告にあった彼女が言っていた要注意人物か。鬼巫女と言っていたが」

 

 口に物々しいマスクをしたリーダー格と思われる奴がこちらを見て言った。

 

「自己紹介は要らないらしい。次はどうする?握手でもするか?いや──」

 

 地面が砕けると共に鬼巫女の姿が消える。それに驚くのはリーダー、サオリだ。

 

「……ッ!?警戒しろ!」

 

 しかしそれでますぐに反応できたのは、運もあるだろうがサオリの実力あっての事だっただろう。

 残像のように目の端で動きを見た気がして咄嗟に自らの銃を盾にしたサオリ。同時に衝撃が全身を貫き、後頭部から地面へ全身を叩きつけられた。

 

「こっちの握手の方が馴染みがあるか?」

 

 次に現れた鬼巫女の構えから自分が蹴られたのだと理解するも、再び姿が消える。

 

「グッ……!」

 

 衝撃に口から血を吐く。しかしそれでも意識だけは必死に保ち、すぐに周りに指示を出す。

 

「撃て!消えてるわけじゃない!」

 

 聖徒会の複製と部隊のメンバーが一斉に撃ち出す。恐らく視認するのが難しいほどの速度で移動しているだけだと理解したサオリの予想は正しい。しかし、相手が悪い。

 

「吹き飛べ」

 

 アリウススクワッドの1人。ロケットランチャーを担ぐ戒野ミサキがまずその標的になった。再び現れた鬼巫女の前蹴りで腹をくの字に曲げながら吹き飛ぶ。

 

「こんなもんで終わらせねーよ?」

 

 しかし、鬼巫女がビシッと二本指をミサキへ向けると。

 不自然に吹き飛んでいたはずのミサキの体は引き戻されて今度は振りかぶった拳の一撃で空高く吹き飛んだ。

 あまりの衝撃にミサキは即座に意識を手放し、持っていた銃を落とす。

 

 それを拾い上げた鬼巫女が、銃身をバットのように掴み、周りの複製を相手に薙ぎ払うように振り抜く。それによって発生する衝撃波が複製を悉く引き裂き、消滅した。

 

「な、なんなんですかこの人……!?」

 

 どう見てもあり得ない動きに槌永ヒヨリが現実逃避するように叫んだ。残ったメンバーも言葉を発するだけの余裕がないだけで思いは一緒だった。なんだこの理不尽は。たった数度動かれただけで、状況は一変した。

 

 それでも、攻撃から復帰したサオリが鬼巫女に向かって突貫。

 

 ──まずはあの動きを止めさせなくては間違いなく壊滅する!

 

 サオリがそう直感し、腰のホルスターに嵌めていたサブの拳銃とナイフを取り出して肉薄。牽制の射撃は全て避けられたが予想内だ。本命はこっち。

 

 体でそのナイフの動きを隠し悟らせないやり方はとても洗練されており、それだけで高い実力を感じさせるものだった。

 しかし向けた刃を片手で握られ、一切動かない。グンッととてつもない力で、引き寄せられて首を空いた片手で掴まれ吊り上げられた。

 

「おいおい、こんなもんか?」

 

 こんなもんに良いようにやられたのか、そんな風に考えると死ぬほど腹が立つ。ギリギリとサオリの首を片手で圧迫していく。

 

「グッ……ガハッ!や、やれ!構わん撃て!」

 

 自分ごと撃て、とサオリは指示する。当たりさえすればヘイローのない鬼巫女にとって致命傷になり得る。

 

 残ったメンバーは一斉に各々の銃で集中砲火する。いくつもの弾丸が鬼巫女の体を貫くが、その首に掛けられた手から力が抜けることは無かった。むしろ更に強くなっている。

 

「この……化け物め……ッ!」

 

 このまま握り潰されかねないサオリは、懐にヒナ対策に用意していたヘイロー破壊爆弾を取り出し、ゼロ距離で鬼巫女に向かって投擲、爆破した。

 鈍い爆破音と衝撃波がその場にいた全員の体を叩き、拘束を外れたサオリが地面を転がりながら

 

「やったかッ!?」

 

 手ごたえはあった。黒い煙で姿が見えないが、これだけダメージを与えればいくら化け物と言えどただでは済まない、はずだ。確信ではなく、願望に近いものであった。これで終わって欲しいという願望。

 

「──これで終わりか?」

 

 凍えるような一言に、アリウススクワッドに絶望が過ぎった。黒い煙の中から現れる血だらけ、しかし、しっかりと二本の足で立つ鬼巫女の姿があった。

 何でもないように歩き出す鬼巫女に、絶望感を滲ませながら。しかし抵抗をやめない。いくら虚しくても、こんな終わりはないだろう。

 

「……ゲホッ」

 

 その時、鬼巫女が片膝をついて口から血を吐く。手で口を抑え、舌打ちした。

 

「──無理があったか、しゃーねぇ」

 

 そう独り言を漏らす鬼巫女は動かない。サオリはここしかない、と確信する。

 

「──離脱するぞ!」

 

 ここで離脱する判断ができたサオリは間違いなく一流だった。ここで仕留められるチャンスと離脱するチャンス。その天秤で離脱を選んだ。もしこのまま戦闘を継続すればどうなっていたかは想像に難くない。気絶したミサキを背負い、アリウススクワッドは即座に撤退。その姿を消した。

 

 追いかけたい鬼巫女だったが、体が言うことを聞かない。それでも倒れそうになる事だけは死ぬほど我慢したが。

 

「──クソ」

 

 どかりとその場に座り込み、震える手でポケットからタバコを取り出すも、グシャグシャになったそれを見て投げ捨てた。




実は結構怒ってたせいで動きが雑になってた鬼巫女さん。体のこと考えずゴリ押しするから余計なダメージと消耗をする羽目に。
でもサオリがあのまま戦闘続行してたらアリウススクワッドは全滅してました、間違いなく。
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