ひどい雨が降ってきた。傘も無いからそのまま走ってるが傷に染みる。しかし断続的に爆発音や銃声が遠くから聞こえてくるあたり、戦いはずっと続いているようだ。雨の時くらい休ませて欲しいが相手はそうでもないらしい。
「っと、見つけた」
目的の場所を見つけて立ち止まる。ふふん、何の目的もなく私がただ走ってるだけだと思ったか?
私が目をつけたのはガンショップ。キヴォトスじゃコンビニですら銃や弾薬が売られている訳でわざわざ専門の店に行く必要はない。しかし、私の趣味嗜好的に軽い銃に用はない。銃を使うことは生徒に対する手加減にもなるし良いことずくめだった
「いつつ……」
雨で染みる傷を手で押さえながら扉に手を掛けるも開かない。
この混乱だ。店に人はおらず扉に鍵を掛けたのだろう。力で強引に壊して中に入った。
中は静かで、爆発音などを無視すれば雨の音だけが響くいい雰囲気だっただろう。
「さてと……」
適当に店の中を物色。銃の数が多くて、様々な惣菜を前に迷い箸をする気分だ。
「とりあえず……デカくてゴツいのがいいな」
そう言いながら、壁に掛けられていた散弾銃を手に取る。悪くないな。バックでもつけるように背負って次の物色だ。
物色をしながら店内を歩く足が止まる。
「ヒュー!こいつはいいな!なんでこんなもん売ってんだと思うけど」
対戦車ロケットランチャーなんて何処で使うんだよキヴォトス。まあいいや、こいつも持っていこう。ずっしりとした重さのあるそれを背負って、後は適当にゴツいリボルバー拳銃をズボンのベルトに適当に差し込み、ポケットに弾薬を入るだけ詰め込んだ。
「ま、ざっとこんなもんか」
準備はこんなもんでいいだろう。店を出ようと足を進めようとしてその膝が軽く折れる。
「ゲホッゲホッ!」
咳と共に血が出る。流石にほぼ休み無しで動いてるからか、いつもより血が出ている気がする。
「チッ──良いところなんだから邪魔すんな全く……」
仕方ない。少し座るか。
適当に地べたに座り込んで、タバコ……は今ダメにしてたな。酒もねーしどうすっかな。
「……あいつらどうしてんのかな」
座り込んで体の様子も落ち着くと、ふと便利屋を思い出して呟いた。
「依頼でゲヘナを離れてたから大丈夫だとは思うが、帰ってきたら驚くだろうな」
多分この様子じゃ事務所も何らかの被害があるだろう。後片付けやらされるのかねー……
「──確か電話番号は」
カヨコあたりに口酸っぱく何かあったら連絡しろって言われてたっけ。留守番する子供じゃねーんだから、と笑ったが。
なんだか、無性に声が聞きたくなった。
「……お、あったあった」
店内を探せばすぐに見つかった。教えられた電話番号を入力して、受話器を取る。
無機質なコール音が数回、相手はすぐに出た。
──もしもし?
「おっす、オレオレ!オレだよ!」
裏声で返事を返す。少しの沈黙があって
──その感じ、鬼巫女でしょ?どうしたの?
「はっはっは、バレたか。……その様子じゃこっちの事は知らないみたいだな」
──依頼中だったからね、ハルカが対象の建物爆破してその巻き添えで脱出の為に走ってるところ
確かに電話越しに遠くから社長の悲鳴が聞こえてくる。どうせいつもの顔なんだろうなぁ……
「そっちはそっちで楽しそうだなおい!……ま、大した事じゃないんだ。ちょいとゲヘナとトリニティを巻き込んだ事件に首突っ込んでる」
その一言で電話の向こうでカヨコが察したのだろう。流石便利屋68の頭脳担当。社長?ギャグ担当だろあいつ。やる時はやる奴なので心配はしてないけど。
──エデン条約の話?そっちは大丈夫なの?
冷静なようでこちらを心配する声色だ。
「何とかするさ。社長に伝えておいてくれ。依頼達成の報告楽しみにしてくれていいってよ」
──大丈夫、ではないんだね……分かった。社長に伝えておくよ。
全く、アウトローを自称する集団だってのに随分と優しい。だが声を聞いてやる気が出てきた。
「おう、じゃあな」
──待って
電話を切ろうとする私をカヨコが止める。
「なんだ?」
──無事に、戻ってきてよ。便利屋はみんな揃って便利屋なんだから。
「──分かった」
そうして電話は切れた。受話器を戻して深呼吸一つ。パチンと、両手で頬を叩き気合を入れ直す。
「っし、やるか」
そうして私は店を出た。
映画とかの武器調達シーンって好きなんですよね。今回の話はそんな私の趣味全開な話でした。