ひたすら走り回り、危なくなった生徒達を助け続けてどれだけ時間が経っただろうか。
「吹き飛べクソが!」
ロケットランチャーで敵を丸ごと吹き飛ばし、弾のなくなった銃を投げ捨てる。
「全く……意気込んだものの、これじゃ焼け石に水だ」
敵の数は減らない。いや、消耗を考えずにやるなら短期的には減らすことが可能だ。しかし根本的に解決できなければこの数をどうにか出来ない。
雨が顔を伝いポタポタと垂れる。普段なら気にならない雨すら面倒と感じるくらいにはキツイ。
助けた生徒達の感謝の言葉を適当に流しながらパシャパシャと道路に溜まった水を走る足が叩く。
その時、近くの建物から爆発音が響く。生徒が戦っている。依頼である以上無視はできない。
「……だったら助けるしかないよな」
そちらに走って行く。裏路地の細い迷路のような道を進んでいくと、行き止まりに辿り着いた。
「あーもうこの際ぶっ壊しながら進んだ方がいい──か?」
その鬼巫女の言葉は尻窄みに小さくなる。その行き止まりには、1人の生徒が壁に寄りかかって膝を抱えて蹲っていた。背中の白い翼は土や雨で燻み、見る影もない。
「どうした?怪我でもしたか」
その生徒に声を掛けるが、返事はない。無視もできない彼女はため息を一つ。目線を合わせるように側まで行き、しゃがみ込む。
「何かあったか」
その生徒は泣いていた。ここにはいない誰かに謝りながら。
素直な話、めんどくせぇとは思った。しかし放っておくのもまた難しい。どうしたものか。
──虚しい
「あん?」
泣いてる子供からはおよそ出る事はないだろう言葉に眉を顰めた。
──何をしようと全ては無駄で、虚しいのか。
「何当たり前なこと言ってんだお前」
自分でもちょいと冷たかったかな、と思う冷えた声が出た。
──え?
ようやくこちらに気づいたようで、膝を抱え俯いていた顔を持ち上げてこちらを見た。
「人生なんて虚しいもんだぞ。全てが無に帰す事が約束されてるようなものだからな」
死ねばそれまで積み上げてきた全ては自分の手元を離れる。残るものは何もない。そういう意味では虚しいというのは事実だろう。
「じゃ、じゃあ何をしても無駄なのか!?必死にやってきた事は全部──」
「そうは言ってねーよ。話はここからだ」
「無意味、無価値。そんなの知ったことか。肝心なのは自分がどう思うかだ。事実がどうであれ、全てをかなぐり捨てて残ったものがお前の真実だろ?」
実現できるできないでもない。どれだけ我儘でもいい。己のやりたいと思った事をすれば良い。本音なんてそんなもんだよ。
「少なくとも、お前の握られた拳はそうは言ってねぇみたいだぞ?」
改めて顔を見る。泥だらけで、傷だらけ。ボロボロだけど、それでも握られた拳には力があった。
「その心のままにやりゃいい。確かに虚しいかもしれないが。『それでも』って足掻き続けるのが人生ってものなんだぜ?」
私はこれまで幾つもの『それでも』を見てきた。アビドスの奴らも、ミレニアムの奴らも。便利屋の奴らも。全て分かった上で『それでも』続けてきた奴らだ。
「それでも……足掻いていい……のか?」
そう尋ねられた。答えは自分の中にとっくにあるだろう?ちょいと弱気になっただけさ。
「お前がそう思う限り、それはお前にとって正解であり続けるだろうさ。クイズと違って○か×ではなく正解だと信じるのがコツだ」
その生徒は立ち上がりこちらに頭を下げた。
「すまない。弱気になっていた、もう少し頑張ってみる事にする。……私にも『それでも』と言えるものがあった」
「そうか」
ゴシゴシと涙を拭うと、勇ましい顔で何処かへと走り出して行った。
慣れない事はしたくねー、なんて思いながら立ち上がる鬼巫女。そこでふと思い出す。
「あ、やれやれなんて顔してる場合じゃなかった。依頼内容的にあれそのままにしておくのは不味くね?」
焚き付けておいてアフターフォローもないとか、偉そうな事言える立場無くなるわ!
急いで私もその後を追いかけた。
「うおおおお!待てぇ!私も連れてけ!」
くっそ、意外と足速え!見失う!
それでもぉ!(ガンダムUC)