澄んだ記録を目指して   作:上条@そぉい!

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やる気ゼロの彼女は通常時ランク強上位くらい。大雑把ですが。


『子供と大人』

『子供と大人』

 

 もはや小鳥の囀りの如く当たり前と化した銃声を背景に私はブラブラと歩き続ける。どうやらこの街は一塊というわけではなく、いくつもの自治区の集まりで形成されているらしい。もっとも、その集まりから外れた不良達の溜まり場のような場所もある。というか行ったことがある。

 現在私がいるのはゲヘナ学園というまあ結構なデカさの学校が仕切る自治区だ。その割には銃声は止まないし、さっき派手な爆発音あったし。つーかなんか噴水みたいにお湯が地面から吹き出してたなアレ。

 そんなカオスな所でどう治めてるのかと疑問に思ったが、意外とそこはしっかりしてるらしい。自警団のような組織が取り締まりをしている。前に紛争地域に首突っ込んだ時に出会ったあの頭の輪っかをつけた少女達はその類だったかもしれん。

 

 あ、そうそう。頭の輪っかの事なんだがこの街では割と常識というか。ヘイローと呼ばれるものらしく、つけてるやつは兎に角頑丈で銃弾程度じゃ物ともしないらしい。で、つけずにほっつき歩くやつは珍しい──というかあり得ない。はっきり言って異常とまで言い切られた。この街でつけてない人はいない。当たり前にあるはずのものがないのだから異常だと。

 まあこんな銃弾交わる日常だ、いつ死んでもおかしくないわな。多分余程のバカしかやらんのだろうな。

 キーホルダーの玩具の如く銃をぶら下げて歩く学生達を見てると感覚がバグったように思える。ほら、また。私の横を通り過ぎて駆け抜けて──げっ。

 

 白く長い髪に4本の角、腕につけられた風紀の腕章。小学生かと思うほどに小さい背丈。もしやカヨコやムツキに口酸っぱく見たら逃げろって言われてた奴では?

 今の私は変装(?)しているだけで無関係の人間だから目をつけられたら不味いと。しかし、ここで回れ右で逃げた所でむしろ怪しまれるというものだ。ここは大人しく通過して何事も無かったように過ごすしかあるまい。

 

 1秒、2秒、と緊張が高まる瞬間。目を合わせる事なく向こうと交わり、通過する──

 勝った……計画通ry

 

「待って」

 

 背後から聞こえる涼やかな、澄ました声が聞こえてくる。

 ば、バカな。私の隠密を……と表情を変えないままに脳内で愕然としながら立ち止まる。あー、振り向きたくねぇ。便利屋の連中にこの事がバレたらなんて言われるか想像がつくだけに気のせいと言い倒して逃げたい。

 絶対ムツキとかニヤニヤ顔で煽り倒すのが目に見えるので避けたい。

 

「ん?なんだ?」

 

 全力で誤魔化す方向で固めて何でもないような顔をしつつ振り返る。うへぇ、よく見りゃこいつえげつない武器ぶら下げてんなぁ。『電動ノコギリ』とはまた。こんなもんよく街中でぶっ放すな?

 

「貴方、見ない顔ね」

 

「最近こっちに来たばかりだからな、道案内ならいらないぞ」

 

「そう」

 

「……」

 

「…………」

 

 

 沈黙が続く。もういいよな?私行っていいよな?

 

「学生証」

 

「うん?」

 

「学生証、見せて」

 

「ガク……セイショ?」

 

 なん……だと……!?突然ぶち込まれた未知の概念に恐れ慄く私を前にずいっと、手をこちらに差し出す少女。はよ出せという合図だろう。

 ……えぇ、どうしたもんか。はっ、そうか。学生証とはつまり、何かの比喩、もしくは隠語なのではないか……?

 焦りの中で生まれるピコンと電球が光るような天啓が鬼巫女の脳内を駆け巡る。つまり!ここで!必要なのは!これだッ!

 ポケットを弄り、そっと少女の手に乗せる。おもむろに少女は手の上のものを見ていればそこにあったのは──!

 

『鬼殺し』といかつい墨文字で書かれたパッケージ(空)であった。酒の無さを誤魔化す目的でずっと持っていた酒の抜け殻。空の紙パックであった。

 

「じゃ、そういう事で!」

 

 会釈してくるっと180度反転、何事も無かったようにスタスタと歩いていく鬼巫女。その足取りは心なしか結構早い。というか走ってる。

 それに対する少女の答えは言葉よりも雄弁であった。無言で手の上のゴミをスパァン!と力強く投げ捨てて、ジャキッとぶら下げていたゴツい銃を構えぶっ放してきたのだ。

 銃弾をハリウッドダイブで避けながら鬼巫女は全力疾走を開始した。

 

 コンクリートを削り取る勢いで乱射される機関銃をゴロゴロと転がりながら回避する。

 土煙をあげながらこちらに迫る幼女、幼女なのか?よく分からんがいまだに追いかけて来る。

 

「もういいだろー!?さっさと諦めてくれ!」

 

 反撃してもいいが、それしても後で便利屋連中になんて言われるか……いや何も言わなそうだなあの社長なら!

 

「怪しい奴をそのままにするわけがないでしょ」

 

「その割には私情入ってそうだなオイ!あ、あれか!見るからに飲めない体型だし『私は飲めるけどお前は飲めないのなw』的な煽りだと思ったか!いやそんなことねぇから!」

 

「…………いまチビって言った?」

 

「言ってねぇよ!?自覚あるんかい!」

 

 うおおお、なんか弾幕更に厚くなってきた!このまま逃げてもずっと追いかけてきそうだな。何か方法はないか……

 ズサァ!とスライディングで裏路地を抜けて大通りに入ると目に映ったのは戦車だ。なんであるんだとか思わないでもないが今はラッキーだ。少し借りるとしよう。

 ジャンプで戦車の上に飛び乗り、ハッチを開けようとするも開かない。鍵でも付けられているのか。

 

「ええい!手段は選べん!」

 

 思いっきり力を入れて引っ張ればバキッ!と音を立てて鍵は壊れて蓋が開き、スルリと入れば中には黒いマスクをしたセーラー服の少女がいた。

 

「あ!?なんだお前!?」

 

「話は後だ!後ろみて見な!」

 

「何だと?」

 

 そこにはゴゴゴと覇気を出しながらこちらに迫る幼女の姿が!

 

「ゲェ!あれは風紀委員会のヒナじゃねぇか!」

 

「そんな名前なのかは知らんがそうだ!あとは言わなくてもわかるだろ!」

 

「ず、ずらかるしかねぇ!やっとブラックマーケットでコイツを手に入れたんだ!」

 

 しれっと運転席に座り、ハンドルを握る鬼巫女。

 

「揺れるぜ!掴まってな!」

 

「お、おい。お前運転できるのか……?」

 

「生憎初心者マークは外せないが安心しな!ポルシェよりよっぽどたけぇコイツはピンボールの如くぶつけたって壊れやしねぇさ!アクセル全開で飛ばすだけの簡単なもんだ!」

 

「安心できる要素ねぇ!?」

 

 ズガガッ!と幼女の放つ弾丸が装甲を削り始め、もはや猶予はない。ブルンッ!と轟音唸らせ戦車は発進、流石にこれには追いつかねえはず、と一息つく。

 

「ふぅ、流石に逃げきれたろ……兄弟、煙草とかねぇ?一息つきたいんだが」

 

「馴れ馴れしいなこいつ!?煙草……あ、なんかおまけで貰った備え付きのがあるぞ、ほらよ」

 

「実はいい子だろお前?まあさんきゅ、火は……」

 

 素直に渡された煙草を口に咥え、火を探そうとした所で後ろから物音が。具体的にはエンジン音が聞こえ始める。

 

「……ちょいと後ろ、見てくんない?」

 

「お前が見ろよ」

 

「いいじゃねぇかお前と私の仲だろ?」

 

「出会って数分なんだけど?」

 

 現実を見たくなくて2人して擦り付け合いが始まるも事態はそれを許さない。ドゴンッと戦車のケツ目掛けて何かがぶつかり大きく揺れる。

 恐る恐る上につけられた蓋を開けて覗き見るもそこには車に乗り込み、片手で機関銃を握る幼女の姿が。

 

「「ぎゃぁー!まだ来てるー!?」」

 

 こちらを確認して迷いなく機関銃をぶっ放してくる相手。頬をかすめたぞ今!

 

「あ、ラッキー。弾が掠めて煙草に火がついたわ」

 

「言ってる場合か!逃げるぞ!」

 

 唸りをあげて戦車が道路にあるものを薙ぎ倒し直進する。次第に差は詰まり追い詰められ始めていた。

 

「ぐわぁ!?ハンドルが爆発したぁ!?」

 

 相手がずっと撃っていた弾が運悪く機関部にでも当たったのだろう。もはやコントロール不能だ。

 

「お、おい!目の前に建物が!」

 

「くそっ、突っ込むぞ!掴まれ!」

 

 建物の入り口を派手にぶっ壊しながら戦車で突っ込む。衝撃が車体を揺らすも何とか無傷だ。壁に衝突して停車する戦車の上から這い出るように脱出するとそこにいたのはロボットみたいな見た目の黒服と、頭に覆面をつけた武装集団と、便利屋のメンツが揃っていた。

 それを見つけて一言。

 

「どういう状況?これ」




例のbgmが流れてる……(幻聴)
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