私も腹をくくって第4章カルバノグを読まなくては。毎回この曇らせあるんだろうなぁって諦めと覚悟が決まらなくてですね……いい加減読まないとストーリーが書けない。
水が硬い地面を打ち付ける音が響くボルトやらネジやらが床に落ちている部室。私は今ミレニアムのエンジニア部に来ていた。
「こう天気が悪いと気分も悪くなるな」
窓の外は大雨だ。暇な私はその雨を頬杖をつき眺めていた。雨が好きな奴もいるだろうが私は嫌いだ。理由はシンプルで濡れると体が冷えるからだ。昔はそのせいで眠るのに苦労した記憶があるから、そのせいもあるかもしれない。
「そうかな?私はそう気にならないが」
そう答えるのは白石ウタハ。私が頼んでいる機械を弄る手を止める事もなく雨の音を聞いている。
「個人的に嫌いなだけだ、それでどーよ。頼んでたやつは」
前にメイド服着せられたから、その詫びを要求したらタダでなんか作ってやる、と言われたので頼んでいた訳だ。いや、別に脅した訳じゃない。そんな事すると『先生』がめんどくさい。
「一つはできてる、君の前にあるやつだ。わざわざ中身のプログラムはヴェリタスに頼んだんだ。性能は保証するよ」
確かに私の座る席、その前の机に置かれている端末がある。それを持って色んな角度から見る。その視線は訝しみを多分に含んでいる。
「そこは心配してないが……変な機能つけてねーよな?」
エンジニア部の連中は腕がいい。その代償なのか勝手に変な機能をつける癖があった。『先生』なら欠点があった方が可愛いなんて言ったかもしれないが、私から言わせればロマンより実用性を求めて欲しいね、普段使いするものなら特に。
「本当ならつけたいんだけど、無しと言われてしまったからね……代わりにこっちは期待していい。今作っている最中だけど自信作になる」
本当かよ?まあ楽しみにするけどよ。私が頼んでいたものは二つ。一つは携帯だ。というのも、私は今まで連絡手段を持っていなかったのだ。別に困ってなかったし。普段は事務所にいるから連絡はそっちから入る。しかし『先生』からモモトーク交換しよう、と言われた時に持ってないと断ったらすんげー悲しそうな顔されたもんだから。私も思わず携帯どっかで持つと言ったんだ。そのまま忘れてたけど。
で、今回いい機会だから、と頼んで今に至る。本命はもう一つの方だが……こいつは私の趣味というか、遊び心から来るものだ。今は出来ていないが、いつかお披露目の機会があればいいな。
そうして暫く雨の音とウタハの機械をいじる音だけが行き交う部室、私は肩をゆすられて自分が寝ていた事に気づいた。垂れ穂のように下がっていた頭を起こし窓の外を見れば、もう雨は上がって夕焼けの赤い空が雲の隙間からこちらを覗いていた。
「随分と寝ていたね、寝不足かい?」
「別にそんな事はないぞ。最近ちょっとな」
ここの所、うたた寝をする事が増えた。暇な時とか、いつの間にか寝ている事があるのだ。別に気にしてはいないがこうも多いと少しな。
椅子から立ち上がり、背筋を伸ばす。ポキポキと骨が伸びて鳴る音がする。
「完成は暫く後になる、来てくれたのにすまない」
そう申し訳なさそうに目を伏せるウタハ。
「別に気にしてねーよ。いい暇つぶしになった」
考えてみれば、こうした静かな時間とはあまり縁がなかった。騒がしい便利屋にいるのもあるが、私の人生はあまり静かとは言えるものではなかった。ま、私の事はいい。
まずは貰った携帯で誰に連絡しようか──
プログラム製作者明けの明星