今日の私はトリニティ学園に来ている。と言っても今回は暇つぶしではない。仕事だ。『先生』がトリニティでの依頼をしている間の護衛を頼まれたのだ。以前にエデン条約で事件があったようにまた似たような事があるかもしれない、と警戒した結果である。正直杞憂だとは思ったが『先生』は私と違って脆い、万が一というのを考えるのは仕方がない。
それで今はティーパーティのナギサと会談中で私は出て行けと言われたんで外を歩いている。先程暇つぶしではないとは言ったが、実のところ今暇であるのは間違いない。だから会談が終わるまで私はトリニティ学園内にある商業施設、その商店街らしい場所を歩いていた。
「おーおー、青春してんなぁ」
私の横を通り過ぎる生徒達はどいつもこいつも楽しそうに隣の友達と歓談して笑い合っていたり、デザートを買い食いして笑顔だったりと、青春しているなぁ、という感想しか出てこない。
そんな私の向かいから青春の空気には似合わない表情を浮かべ、歩く少女が目についた。黒いセーラー服を改造したような服装に、腕につけられた腕章。トリニティ学園が誇る正義実現委員会のメンバー、羽川ハスミその人だった。今は何故か片手に紙で包装されたクレープを持っている。
いつ見ても思春期の子供がしていい体格じゃないな、なんて思うが本人はそんな事知らずこちらに気づき、近づいてくる。
「いいところにいました、少し聞きたい……いえ、相談が」
「ん?藪から棒だな。私から言えることなんて少ないぞ」
多分私の経験から話すことなんて、参考にならないだろう。
少女はぐっと何かを堪えるように何度か口を開くか逡巡し、ようやくその重い口を開いた。
その表情に私もガチな相談かと思い身構えた。
「私……どうやったら痩せられるのでしょうか……!」
「…………」
ん??これフリか?突っ込んでいいのか?ネタなのかガチなのか判断がつかなくて私も何を言ったらいいのか分からねーぞ。
「……何か言ってください!私は本気なんです!」
「お、おう。よかったフリじゃなかったか」
どうやらマジらしいので私も一安心。これでフリだったらどうしようかと。しかし何故私にそんな話を。
「親しい人にこんな相談するのは恥ずかしいですし、かと言って見ず知らずというのも。そこでちょうどよく来た貴女に」
なるほど。理解はした。なら私が最初に言うことは一つだけだ。
「まずその手に持ったデザート置いてから話せ。話はそれからだ」
デザート握りながら痩せたいとか言われてもギャグにしか見えんわ!お陰で大真面目にフリかどうか悩んだじゃねーか!
「ハッ!?」
言われて初めて気がついたようで愕然と自らの手の中に収まるクレープを見つめるハスミ。
「いや気づいてなかったんかい!無意識!?無意識だったのか!?」
だとしたら重症だぞお前!
「クッ……!」
悔しそうにしながらパクパク食べるな!おい!真面目に聞いてた私が馬鹿じゃねーか!くっ殺せみたいな表情してんじゃねー!
結局、パクパクと食い進めて完食したハスミは満足したような表情でその場を後にした。
「いや、痩せる話は何処に行った……?」
やっぱフリだったのでは?この話は無駄に突っ込んで、私が疲れただけに終わった。
痩せたきゃもう断食を覚悟しなきゃダメなレベルだと思うのハスミさん。