「いやー今日は寒いねー」
「そんな薄着で言っても説得力はねーぞ。なんでまた水着なんて引っ張り出してんだお前」
夜の寒い風が吹く此処はアビドス高校。といっても校舎に人はおらず在籍している生徒も数えるほどしかいない。そんな所に私は小鳥遊ホシノに呼び出され、この場に足を運んだ。
わざわざ向こうから連絡が来るのだ、何かしらの問題があったのだろう。
(……最近こんなことが増えた気がする。生徒の悩みとか聞くのは『先生』の役目であって私はただの便利屋だぞ。なんでこんな事に?)
まあふざけているようで、真面目なホシノがこうして呼んだのなら、それは『先生』ではなく私にしか出来ない。話せない何かであるのだろう。しかしなぜ水着なのか?
「今はこっちの方が力が出るからねー、鬼巫女がいるなら前線は任せられるしさー」
「よくわからんがそんなもんか……で?何かあったのか」
こいつがそう言うって事は、荒事でもしようって話か。これで銀行強盗しようとか言い出したら私は帰るぞ。シロコじゃねーんだから。
「んー……まあ、これは私の勘なんだけど」
周りに人がいない事を確認して、ホシノはそこまで言って止めた口を再び開く。誰にも聞かれたくないからこそ、この時間のアビドスに呼び出したのか。
「カイザーPMC、知ってるよね」
「あぁ、お前の時に一度ドンパチやり合ってるからな」
あの時は社長が借りは返すとかで、助けに入ったんだったか。珍しくムツキなんかもやる気だったのをよく覚えてる。
「最近また活発に動き始めてるんだ。またここに手を出そうって感じではないんだけど……」
どうだろうな。向こうの頭がどう考えてるのか。
「それに合わせてヘルメット団とか、またこっちで出没し始めてるから。少し変だなぁって、おじさん思ったんだ」
あいつら懲りてねーな、一度ブラックマーケットの方でシメた筈だが。
「で、それをシメるって話か?その手伝いでもすりゃいいのか」
「それもあるんだけどさー……何かヤバいことになった時、きっと一番しがらみもなく動けるのは鬼巫女だと思う。だから、先生の事助けて欲しいんだ」
「それも……勘か?」
「うん」
その割には確信めいた感じがあるな?しかし、カイザーPMCねぇ?そういや結局エデン条約の時にあった、巡航ミサイルの出所は分からずじまいだった。もしやそこから流れてきたんじゃないだろうか?
それに、改めてあの時にカイザーPMCはアビドスを手に入れて何がしたかったのか。自分の自治区が欲しかった、と見ることもできるが、それは通過点だろう。手段であって、その先の目的は不明のままだ。
黒服を問い詰めれば何かしら出てくるかもしれんが、どうせ煙に撒かれて終わるだろうな……こちらを物理的にどうこうできる奴ではないが、ルールの範疇で悪さをする奴だからな。
頭の中で思考を巡らせていると、何も言わない私に
「……ちょっと?聞いてる?」
「ん?分かってる分かってる。とにかく任せろ。悪いようにはしないさ」
「本当に?頼むよ?」
「わーってるって!そっちも、依頼するからには報酬頼むぞ」
無償で依頼を受ける便利屋がどこにあるのか……いや、うちだわ。うちの便利屋割と見栄張って報酬無しで受けたことあるわ。
「うん、楽しみにしていいよ」
そう言って彼女は銃を取り出し、寂れた町の方へと足を向ける。私もそれに続いて歩いて向かう。
「後はハンティングの時間か」
「うへー、私からすると残業って感じだねぇ」
その夜、ヘルメット団の悲鳴が静かなアビドス自治区で聞こえた。
ホシノがこうして対面で頼むって、割と信頼されてるのではないだろうか……いやまあ、その分やらかしも多いのでトントンですけど。