ミレニアムの一角。彼女が残したデータと睨めっこをする少女がいた。色素の薄い肌に白髪、車椅子に座るその姿。ミレニアムが誇る天才、『全知』明星ヒマリ。彼女は今データを見ながら事態の悪さを把握しつつあった。
「推測に推測を重ねるようなものですね……ですがリオがあそこまで偏執的だったのも納得というものです」
無名の司祭、その遺産。アリスもまたその一つだ。しかしこのデータに書かれているものが事実であるならキヴォトスにとって未曾有の大災害がくる。こんなものを残して姿を消した彼女に苛立ちはあるが、それを言ったところで始まらない。
「エイミ、シャーレに連絡をした後でいいです。『彼女』にも連絡を」
「『彼女』って……鬼巫女のこと?ずっと監視してたけど、やっと接触するんだ」
エイミと呼ばれた少女は表情を変えないまま手元の端末を操作する。くるりとディスプレイから目を離して車椅子を回転、エイミの方を見る。
「彼女はこのキヴォトスにおける『特異点』……現存する本物の特異現象そのものです。慎重になっていましたが、事がここまで来たなら、彼女の協力が必要になります」
これまでの彼女の事件での立ち振る舞いや、その振るう力の正体。それらは最初のうち、その凶暴性がキヴォトスに向けられる事を危惧しての事だったが、次第に杞憂だとわかり、それからは好奇心からその力の正体を探り続けた。
そして、ヒマリの予測が正しいなら。彼女はこれからのキーマンになり得る、jokerである。だからこその協力要請だったのだが。
「ダメ、繋がらない」
「え?」
まさか繋がらないとは思わなかったヒマリは声を漏らす。
「電源、切ってるみたい」
「えぇ……?」
まさかの展開に頭を抱えたくなる。いや、本人の性格からしてこうなる可能性がないわけではないけども。キメ顔で言った手前、これで予定が狂うのはあまりにカッコ悪いではないか。
「こうなったら直接捜索を……試しにキヴォトス中のカメラ映像を見て探しましょうか」
しかしここに居るのはただの美少女にあらず。キヴォトス一を自称する天才であり、私以上のハッカーはいないと自負している。その腕を持ってすれば、鬼巫女の捜索などあっという間──な筈だ。
「普通に先生に聞いてみたらいいんじゃない?」
しかし、集中し始めていたヒマリの耳にその言葉が入る事はなかった。事態は着々と進む。その水面下で動くものは、いずれ這い出て地上へ顔を出す。その時、少女達を待つもの。そして鬼巫女を巡る思惑は何処へ向かうのか。その時が近い事をヒマリは感じていた。
実は色んなところでその存在があった人。