連邦生徒会の非常招集は失敗に終わった。突然の『先生』の失踪。生徒会長補佐の七神リンの不信任可決による連邦生徒会の機能停止。そして突然起こったカイザーコーポレーションによるクーデターによってDU.自治区、サンクトゥムタワーの掌握。
様々な事が起こった。その中で生徒達に助けられ、シャーレをようやく取り返した『先生』は再起動したシャーレにて溜まっていた不在時の留守電を聞く。あれだけ青かった空は薄暗い赤へと染まったキヴォトスの空を見ながら。
『先生、今どちらに……?至急相談したいことがある。例の予言の事だが──』
『先生、アリウス自治区で発見された品について、お話があります』
『先生、今何処にいるの?今日の非常対策委員会、待ってたんだけど』
『……先生、ご無事でしょうか』
『先生!非常対策委員会のこと、今知りました!会長がいなくなって──少々お時間頂きますが、今から向かうので待っててください!……なっ、戒厳令に封鎖?先生、──一体何が起きてるんですか!?』
『先生、なんだか嫌な予感がするのですが……先生はご無事ですよね?』
『あら?電源が消えて──?先生、どうされたのですか?』
『先生──シロコちゃんが消えちゃった……どうして、こんな……』
『先生、鬼巫女のこと知らない?書き置きを残して消えちゃって──嫌な予感がするの』
様々な問題が起きている。だが『先生』の顔に焦燥感はない。いつもと同じだ。山積みの問題だとしても、一つ一つ解決してきたのだから。
それよりも気になるのは……やはりシャーレの窓から見える、聳え立つ捻れた塔だろうか。それと……それに比べて薄く一瞬だったが空から何か落ちてきていたような──
「ようやく理解に至った──先生、あなたの力は、これ以上作用しない」
その声に目を向ける。いつの間にか、そこに居たのか。あるいは待っていたのか。かつて会ったゴルコンダがいた。
──あなたは、ゴルコンダ?
「ゴルコンダはもういない。私は『フランシス』だ。デカルコマニーと共に、新たにお前を見守る者。従って、最後の宣告を傾聴せよ」
「この物語は、一つのジャンルは掲げていたが故に『先生』が主人公である事ができた。物語であったから、あなたは無敵だった──これはそういう物語だった」
「彼女はその物語から逸脱した『特異点』であったが故に縛られる事なく動ける者だった……しかし、今となっては……」
「この物語は覆された。脈絡、構成、ジャンル、解釈……全てが破壊され──その意味は絡み合い、混ざり、撹拌され、統制出来ないほどに褪せてしまった」
「これが──もう、物語ではなくなったとするならば、お前はもう何者でもない。学園と青春の物語は、幕を下ろした」
──違う
フランシスの言葉を途中で遮る。それは違う。自分が主人公等と思ったことは一度もない。この物語の──キヴォトスの主人公は生徒達だ。私ではない。その生徒達がいる限り、この物語に終わりはなく、そして幕を下ろすにはまだ早いのだ。
──全てが沈みゆく物語だとしても、そんなことはどうでもいいんだ。どんな未来であろうと、私たちは進み続け、乗り越えるのだから。
きっと、私の酒好きの友人も。笑ってそう言うだろうから。
「であれば、それを見守るとしよう。先生──いや、主人公よ」
さては彼女が居ないと本編と大して変わらないな?