あれからシャーレを通じて各学園の主要部室や委員会から人を集め、作戦会議が行われた。作戦名『虚妄のサンクトゥム』、キヴォトスの各地に落ちてきた虚妄のサンクトゥムタワーを二週間以内に破壊する計画──それに不安はない、と言ってしまえば嘘になる。これに失敗する事はキヴォトスの滅びを意味するのだから、その責任はとても重い。
だがそれを指揮する『先生』の顔に憂いはない。これまでにもそんな事が無いわけじゃなかった。言ってしまえば『いつも通り』だから。
しかし、それよりも気になるのは──
──鬼巫女、何処に行ったのかな
依然として連絡がつかない1人の友人の事を考える。間違いなく。居てほしい人物だ。実力も当然だが、いるだけで安心感が違う。彼女がいるだけで、なんとかなるだろうという漠然とした雰囲気があった。言わばムードメーカーのような立場だったからだ。普段ならこんな状況でも笑って酒を飲んでただろう。
『ミレニアムはビックシスターの残したシェルターを確保しています、治安維持、及び生徒の避難は問題ないです……先生、鬼巫女は知りませんか?彼女が居なければ、この先のサンクトゥム攻略──ひいてはその先を攻略するのは難しいと思っています』
先ほどの作戦会議で明星ヒマリが、そう私に聞いてきた。私はてっきり便利屋と動いているものだと思っていたが、それを聞いた鬼方カヨコがその不在を告げた。『野暮用で少し留守にする』とだけ書き置きを残して消えたらしい。その後、一切の連絡も目撃情報もない。確かに私もそれは聞いたが、まさかまだ居ないとは思っていなかった。普段らしくない彼女の行動には何か意図があるはずだ。
『こちらでも依然として探しています……ですが、思ったよりよろしくはないですね。各学園でも探していただけると助かります』
そう告げてヒマリは話を締めた。
──鬼巫女が居ない?それは……少し不味いかもしれないね
──え?あの年寄りいないのー?せっかくまた揶揄えると思ったのに
通信していたトリニティからはそんな声が上がったし
──彼女居ないの?ゲヘナでも見てないけど……
ゲヘナではイオリがそう呟き、無言で服を掴むカヨコ。言いようのない不安が込められた表情に
──大丈夫でしょう、彼女なら。あれでも思慮深い方ですから
作戦会議室に居た浦和ハナコがフォローしていた。
そんな風に言い合う生徒達を横目に、私は赤く染まった空を見る。
──早く帰ってきてほしい。君は自分を部外者って言うけど……
こんなにも心配する人達がいる、君も無関係じゃないんだ。
ちゃんと彼女も居場所があった。本人はあまり気にしてないしいつまでも自分は関係ないってスタンスですけど。