澄んだ記録を目指して   作:上条@そぉい!

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最終章全部見終わりました……よかった……それしか言う言葉が見つからない。予告が不安でしたが、きっと我らが、私の鬼巫女さんなら全て吹き飛ばしてくれる!と現実逃避が既に始まっております。


『再起』

 ぱちっと目を開く。青い空が目を飛び込んでくる。どうやら私は気絶していたらしい。しかも、遥か空の上にいたはずなのに空が見えると言う事は、あそこから落下して来たのだろう。全身が酷く痛む。

 仰向けで大の字で倒れていた私は瓦礫の下敷きになっていたようで、顔だけが外にこんにちわ状態だった、随分と間抜けな姿だ。

 

「──ッ!ゴホッゲホッ!」

 

 起きあがろうとして、喉の奥から迫り上がって来る血の塊を大きく吐いた。酷く赤黒いそれは地面を汚した。

 

「…………」

 

 無言のままそれを見つめ、暫くしてから瓦礫をどかしながら立ち上がり、手の甲で口を拭う。気を失ってる間、何があったのかは知らないが、キヴォトスに奴の気配が充満している。既に始まっているのは間違いない。

 しかし、奴は何故私を生かしたのか?気を失ってるならトドメを刺せばいいだろうに。

 

「……まあいい。生きてたなら、なんとかするさ」

 

 理由なんて考えても碌な答えを持たないんだ。今は生きてた事をラッキーだと思っておこう。

 筋肉痛を起こした後の怠さのような重い体を無理やり動かして私はその場を後にする。

 

「クックック、やっと起きましたか」

 

 特徴のある笑い方には覚えがある。そちらに目を向ければ、いつもとは様子の違う黒服がいた。つるりと、のっぺりした顔はなく、随分とささくれ、中身が見えるようであった。

 

「イメチェンか?前の方が趣味がいいぞお前」

 

「それは私も同感です……少し油断しました。『色彩』に意志があるとは予想外でしたので」

 

「そうか……」

 

 普段ならさっさと話を切るんだが、黒服のいつもとは違った様子に私は口を閉ざす。いつもと違い、私に勢いがない事を黒服は分かっていたのだろう。スーツの懐に手を伸ばし、そこから取り出したものを私に差し出した。

 

「……これは?」

 

「『無名の司祭』が残した遺産の一つです。生徒の間では『不思議なアメ』なんて呼ばれていました……『色彩』が我々ゲマトリアを襲い、収集した遺産を根こそぎ奪っていきました。しかし、これだけは残っていたのでね」

 

「……」

 

 差し出された手の中にあるそれを手に取る。光に反射して、キラリと光沢を放つそれは確かに飴のようだった。

 

「それの効力は神秘の増強、副作用がないわけではないのですが……簡単に言ってしまえばブースト、一時の魔法です」

 

「……そいつは──」

 

「ええ、貴女にも効果があるでしょう?キヴォトスで生まれたモノではないにせよ、影響はあると予測してますので」

 

「有難いが……どういう風の吹き回しだ?敵対とは言わねーが、施しをするような仲でもないだろ」

 

「そうですね……ええ、『先生』と共に貴女はゲマトリアとは対立する事になってました。しかし、事情が変わりました。こうして集め研究して来たものを、『崇高』を目指す我々を嘲笑うかの如く『色彩』は奪っていきました」

 

 そう言って自分を嗤うようにクツクツと肩を揺らす黒服。

 

「仕方ないと割り切れるほど、どうやら私は冷徹ではなかったようです……貴女の言い方を借りるなら、落とし前をつけさせたいのですよ。『色彩』を打倒しようとする先生。その助けになるであろう貴女に力を貸すのは、おかしいですか?」

 

 こいつもにもそんな感情があるのか、と私は少し驚いた。目的の為ならその他は一切不要と切り捨てるタイプだと思っていただけにその驚きは大きい。

 

「別に、その感情はおかしくないだろ。むしろお前にもそういうのがあるってだけで私も見方が変わりそうだ」

 

「クックック、それならゲマトリアにでも入りますか?」

 

「そいつはまた別だ。音楽性の違いで解散するバンドみたいな事になるのが目に見えてるんでね」

 

「残念です」

 

 貰ったそれをポケットに仕舞い込み、私は黒服に背を向けて歩き出す。黒服はそんな私の背中に見る。

 

「先生は『ウトナピシュティムの本船』を起動し、空に向かいました。最後の決戦、既に残された時間は少ないですよ」

 

 その言葉に足を止めて勢いよく振り返る。

 

「バッカ、お前それを早く言えよ!」

 

 なんで最後にそれ言ったお前!今の消耗した私では単独で空の彼方へ再び向かうのは難しい。なんらかの補助が必要だ。

 あー、くっそ!こんな時だってのに思いつかん!

 

「クックック、性分ですのでこればかりは責められても」

 

「ほんとお前いい性格してるわ!やっぱ嫌い!」

 

 ええい、どうする。時間がないから休んでから行くのは無しだ。全てが終わっちまう。焦りだけが自分の内でジリジリと焦げ付いていく。しかし手段が──ッ!

 

「ある!あるぞ!」

 

 ──完成は暫く後になる。来てくれたのにすまない。

 

 藁にもすがる思いで今までの記憶をひっくり返して、脳内で過去に聞いていた言葉をリフレインする。私は天啓のような稲妻に体を打たれた。確か前にあれを頼んでたよな私!

 

「じゃあな黒服!こんなことしてる場合じゃねぇ!急がねーと!」

 

 ノロノロと、いつもとは違い遅いペースで私はとある場所に向かって走り出し、まだなんとか生きていた携帯を取り出し起動する。連絡先は──




と言うわけで虚妄のサンクトゥム攻略戦はカットします。理由は至ってシンプルで、彼女が参戦すると、諸々の皆の活躍やらが全部鬼巫女さんに掻っ攫われてしまうのが確定しますので……いや、総力戦ボス好きなんですけどね。カイテンジャーvsペロロジラとか大興奮しながら見ましたし。
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