澄んだ記録を目指して   作:上条@そぉい!

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当時正月の便利屋イベだったので便乗して書いたものです。
なおここから時系列を明確にせず短編のように書いていきます。どういう時系列なんだろう?って考えるのも面白いと思った、というのは言い訳で本編をなぞる様に書いていったら死ぬほどつまらなかったので。
──辞めました(肉食獣並感)


『年の始まり』

『年の始まり』

 

 

 いつもの如く事務所で寝ているとカヨコに蹴り起こされて目が覚める。いつもの日常すぎて、もはや何も言うまい。

 

「初詣に行くよ、もうみんな準備できてるから早くして」

 

 そこで初めてカヨコの姿を見れば随分と着飾った姿だった。着物姿は初めて見たが随分と堂に入っている。元々そうだったのではと思わせるような馴染みっぷりだった。

 

「仕方ねぇなぁ……」

 

 普段の私ならめんどくさがり外に出ることもしないだろうが。我ながら随分とコイツらに甘くなったと苦笑いだ。

 重い腰をあげてカヨコについて行き外に出れば既に便利屋の連中は着物姿に着替えて待っていた。

 それを見て思う事は一つ。

 

「よく着物なんて用意できたな、金がねぇって騒いでなかったか?」

 

「だからこれはレンタル品だよ!結構可愛いでしょ!」

 

 今時は着物なんてレンタルしてるのか。いやむしろ今のニーズに合わせた結果なのか?

 それはともかく、返す言葉はこうだ。

 

「馬子にも衣装って奴だな、まあそれなりには似合ってると思うぞ」

 

 そう言ってはしゃぐムツキの頭をポンと一撫でして私は先を歩く。

 

「ほれ、行くんだろ。正月なんだ、甘酒の一つでも配ってるだろうしな」

 

「もー、素直じゃないんだから!」

 

「ってなんで顧問が仕切るのよ!私社長!」

 

「自己紹介か?腐るほど聞いただろう」

 

「違うわよ!」

 

 そう揶揄えばプリプリして怒る社長にカラカラと笑う鬼巫女。そうして初詣に向かうため、神社に向かう中。私だけがジーパンにTシャツといういつものラフスタイルだからか、横に並ぶと少し浮く。

 

「…………」

 

 便利屋と私を見比べ、同じ事を考えたであろうカヨコに

 

「着ないぞ」

 

 先に釘を刺す。そんな肩筋張りそうな服は着ないぞ

 

「でも寒くないの?」

 

「年中変わらんからなぁ……気にしたことがない」

 

 時たま変えるが結局これに戻る。楽なのが一番いいんだよ。

 

「勿体無い……顔はいいのに」

 

「なんだその棘のある言い方。良いんだよこれで」

 

 そんなこんなで割と早く神社に到着するもそこには人の集まりがごちゃごちゃと。それだけでやる気が失せる私だが便利屋は特に気にしてないようだ。

 

「この中入っていくのか……」

 

「ふふん、これを聞いたらそんな事言えなくなるわよ!」

 

 愚痴る私に自信満々な顔で社長がフフンと鼻を鳴らす。

 

「ここはなんと!願いが叶うと呼ばれている神社なのよ!」

 

「ほーん?胡散臭い話だなぁ」

 

「ちゃんと願いが叶ったって人も多いみたいだよ?」

 

「その逆もあったけどね」

 

「なんだ、ムツキもカヨコも詳しいな」

 

「さっきアルちゃんから聞いたからね!」

 

「その為に皆に金を用意してもらったわ!それで今年一年をいいものにするの!」

 

 名案!とばかりにキラキラした目で宣言する社長に私は訝しんだ目を向ける。

 

「神頼みは嫌いなんだがなぁ……」

 

「意外だね、むしろ日常的になんとかなれーっ!って感じなのに」

 

「神様ってのがいるのか居ないのかはさておき、顔も性格も知らない誰かに自分の人生願ってどうするよ。それが己を左右するものならなおさらな。そんな奴に頼るほど自分の人生ってのは軽いものじゃないだろ?だから私は嫌いなんだよ」

 

 感謝するのはいい、頼るのはダメだ。ツキってのは自分が離したり掴んだりするものだろう。

 

「ふーん。じゃあどうするの?」

 

「酒狙いで来てるだけだよ私は。行くなら行って来な。私はそこらで探すさ」

 

 年始には甘酒と相場が決まっている。ただでさえキヴォトスでは酒が手に入りにくいのだ、これを逃す手はない。それを話せばカヨコは呆れた顔だが止める気はないようだ。ひらひらと手を振って私は便利屋と離れた。

 

「か、カッコいい……!」

 

 そんな鬼巫女の姿にハードボイルドを感じ取ったアルがキラキラと目を輝かせている。

 

「どうする?行くの?」

 

「……はっ!い、行くわよ!これは便利屋68における重要任務!曲げるのは許されないわ!」

 

 そう言って便利屋68は賽銭箱へと向かっていった。道中にトラブルがあるだろうな。社長がやる気を出した時ほどやらかすジンクスが便利屋にはあるのだ。

 

 

 それから私は適当に酒を探し歩くも特になく、テンション落として人混みから逃げるように神社の階段に腰を落としてボーッと顔を俯かせていた。また事務所に戻って寝直すかと考えていたところに爆発音と銃声が神社に響き渡る。何が起きたかと顔をあげれば武装した集団と誰かがドンパチしていたのだ。

 

「ありゃ……アビドスか?なんでまたこんな所で銃ぶっ放してんだ」

 

 見知った顔がいくつかあるのを確認して鬼巫女は立ち上がりダッシュ。その勢いのままアビドス学校の生徒と撃ち合う機械兵の1人にドロップキック。ズシャァ!!!と地面と熱いキスをしながら吹き飛ぶ機械兵を横目に着地。

 

「面白そうなことやってんね、混ぜろ」

 

 勝手に乱入した鬼巫女は手当たり次第に機械兵を殴り倒していく。

 

「あちゃー、相手が可哀想だなぁ」

 

「ん、あの人が居るならこっちも余裕」

 

「ただやりすぎないか心配ですねー」

 

 こちらに向かって放たれる弾丸を避け、時に掴み取りながら鬼巫女は話しかける。

 

「勢いのまま飛び入り参加したが、何の騒ぎだこれは?」

 

「うちの生徒がねー、この神社の人に騙されたらしくて。おじさんたちがお礼参り……って感じかなー」

 

「ほう、そんな感じか……メンツからして騙されたのはツインテールの嬢ちゃんか。相変わらず騙されやすいねぇ」

 

「ん、その動き。ちょっとやってみたい。教えて」

 

 狼耳の少女、シロコはマイペースに敵を撃ち抜きながらこちらにフンスと息を吐く。

 

「あん?経験則で予測しながら動くだけだぞこれ。お前にはまだ経験が足りん。もうちっと大人になってから出直してこい」

 

「ん、こう……?」

 

 私の動きを真似しようと奇怪な動きをしだすも額に弾丸を受けて蹲るシロコ。

 

「動きだけ真似しても意味ねーよ。いいか?銃ってのは結局のところ自分の手の延長線だ。染み込むほど撃って動かして、その軌道から何まで把握してスタートラインなんだよ」

 

 スポーツで言う所の野球のグローブなんかがいい例だろう。銃弾は直線にしか飛ばないのだから、結局は自分の手の動きの延長なのだ。

 

「だから、慣れるとこんな真似もできる」

 

 銃を撃つ機械兵に肉薄し、横から殴り倒しながら腰に差していた自動拳銃を引き抜き、真横に向かって発射。その弾丸は壁のごく僅かな凹凸に当たり跳弾。軌道をクネクネと様々な場所に跳ねながら他の機械兵の頭を撃ち抜いた。

 

「ほれ、分かったなら諦めろ」

 

 その様子を見ていたシロコは立ち上がり再び撃ち始める

 

「ん、わかった師匠」

 

 その目は絶対真似してやるという意思が見え、諦める気がないのが分かった。

 

「誰が師匠だよ弟子にした覚えはねーぞ」

 

「いけない事教えないでほしいなって思うんだおじさん」

 

「諭してやるつもりだったのに何処で間違えたかねぇ」

 

「ああ見えて負けず嫌いですからシロコちゃん……」

 

 そんなことを言いながらも敵を掃討していくアビドス……いや、対策委員会だったか。そんな名前の集団。もう私が手を出すほどでもないと判断してズボンのポケットから取り出す煙草で一服。

 

「ふー、やっぱりこれだわー……ゲホッゲホッ」

 

 煙草を吸いながら咳き込む。口を抑えてて咳き込んでいる私を心配したのかおっとりした生徒、確かノノミと言ったか。そいつが顔を覗き込んでくるがヒラヒラと手を振って気にするなと合図する。

 

「ゴホッ……あー、最悪だ全く」

 

 抑えていた手を離し、手の中を見るとべっとりと血が。誤魔化すように呟き手を握る。

 

「大丈夫ー?顔色悪そうだけど」

 

 そう言って何でもないような顔をしながらさり気なくこちらを気遣う気配を見せるのはホシノと言ったか。なんつーか、アビドスの奴らは優しすぎるな。これが便利屋なら心配しつつも揶揄ったりふざけ倒すからな。誰に似たのやら。

 

「いや何、煙草が少し喉にな。辞めた方がいいのは分かってるんだが、もう悪癖に近いなこれは」

 

 ──タイムリミットは案外近いかもしれないな

 

 そう心の中で呟きながら紫煙を燻らせ、昇っていく煙を見上げた。その横で銃を撃つのを辞め、じっと鬼巫女の顔を見るシロコをあえて無視しながら。




とある事情でキヴォトスに来る前から弱体化してる人。例えるなら3部承太郎が6部承太郎になったくらいの弱体化。
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