そんな訳で話が進み、アトラ・ハーシスの船の占領作戦が発表された。
『以上が作戦内容となります。指揮は先生にお任せする事になりますが……よろしいですか?』
その場を仕切るのはこの船の艦長的ポジションに収まる七神リンである。服装も他の生徒と違い、いかにもなロングコートだ。
──うん、大丈夫だよ。
何でもないように言っているが、『先生』もだいぶ無理をしているな。外は良くても、中身がグズグズだ。よく立ってられる、と呆れ半分で私は考えるが、それを言えば五十歩百歩だと言われるので黙っておく。
そんな私も今は船内にあった椅子を適当に引っ張り出してきた。流石に疲れたので座らせてもらったのだ。
今も生徒たちと話し合い、細かいところを詰めている『先生』のやり取りを眺めていたら
「鬼巫女、大丈夫ですか?」
横から話しかけられた。誰かとそちらを向けば、相変わらず重そうな機械の銃を背負う少女こと、天童アリスがいた。
「……なんだどうした、別に気にすることないぞ」
私が勝手にやったことだ。別にアリスが気にすることは何もない。しかし、悲しそうにアリスは首を横に振る。
「ケイが言ってました。鬼巫女、無理をしているって。アリスの代わりをしたって」
ケイ……あぁ、アリスの中にいる奴のことか。それに言ってんのは先ほどの障壁ぶん殴りの件か。
「ガキが心配なんかしてねーで、前だけ向いてりゃいい」
どっちにしろ、私がやってたさ。私が他人の為なんて殊勝な事するわけが無い。どんな時だって私は自分の為にしか動いていない。今回だってそれさ。他人が勝手にやった事を自分のせいだと責めるのはお門違いだと、私は沈んだ顔をするアリスの額を軽く突いた。
「それでも責めるなら、そうだな……」
せめて良かったと笑ってくれ。結果的にであれ、お前にとって得であったなら、笑ってくれなきゃ私の気分が悪くなるのだから。私の為に笑ってくれ。
そう言って、私は雑にアリスの頭に手を乗せくしゃくしゃにした。
「それに、まだ終わりじゃ無い」
ゆっくりと椅子から立ち上がり、私は何もない空間を睨む。それを不思議そうにアリスが首を傾げるが、私には気配で分かった。
睨んだ先の空間が歪む。そこから穴が生まれ、出てきたのは──
「よう、シロコ。
その人物は、私のよく知る、しかし知らない砂狼シロコであった。随分と大人びた姿だが、僅かに澱んだ気配は似てるようで違う誰かであると看破させた。
「師匠……やっぱり分かるんだね」
シロコの感情の薄い顔が、誰にもわからない程に歪む。ぐるりと、船内を見回せば、知らない知る顔がいくつもあった。
しかし、船内にいた生徒たちは突如として現れた砂狼シロコに、臨戦態勢に入る。
──シロコ
「先生、ここまで来たんだ。無駄なのに」
当然、シロコの仲間であるアビドスの連中は動く。狙いはシロコの捕縛。色彩のせいでこうなった、と考えてまずは捕縛。話はその後であると結論をつけていたからだ。
「無駄だよ」
まるで、ゴミでも捨てるように気軽に、当たり前のように手から放り投げられたのは手榴弾。爆発はすぐだった。
爆炎の中で、消えゆくシロコと目が合った。話しかけようとした私を見て、シロコは持っていた拳銃を横に向け射撃。弾丸は船内に存在する僅かな凹凸を跳ねて複雑な軌道を描き、私の顔に直撃した。
着弾を見届けてシロコはそのまま消えた。
「なるほど──」
飛んできた弾丸を歯でキャッチし、地面に吐き捨て私は笑った。ちゃんと教えたことは覚えていたらしい。
「腕あげたな、あいつ」
どうなるのかは分からないが、私にも似た経験があるだけに、この後に待ち受けるだろう砂狼シロコの事情を考えて眉を顰めた。
格ゲーは、顔の同じ誰かと戦ったりは日常茶飯事なので……