突然の乱入によって船内は騒然となった。置き土産で爆破された結果、この船に深刻なダメージが入ったようで、予定が狂ったらしい。
ヒマリに『やってくれてもいいんですよ?』的な視線を浴びたが、知らん。私にもそこまで余裕がある訳でも無いし、私頼りは一番ダメだ。いざという時に動けるのはお前らであるべきであって、私ではないのだ。
それに、こっちも休み休みではあったが、私の目的である色彩に紛れ込んだ空間の捕捉に成功した。少しでも消耗を避けようと細々とやっていた結果時間が掛かったが、これでようやく私も動ける。
──鬼巫女
そろそろ行くか、と椅子から腰をあげようとしたところを『先生』に話しかけられた。
「ん、まだなんかあるのか」
色彩の攻略自体は『先生』と生徒がいれば何とかなるだろう、と私は見積もっている。現れたあのシロコと……ワープした時に、微かにした気配からして、恐らく先生もどうにかできるだろうよ。だから私はもういいかな、と自分の目的の為に動こうとしている訳なのだが。
──帰って、くるよね?
「……」
その言葉に私はいつものように軽く返事を返せなかった。はっきり言って、勝算がない訳では無いが、不利なのはこっちだ。五体満足で帰って来れる自信は、百戦錬磨の私をして断言できるものではなかった。
『先生』は他人を見る目は人一倍、一級品といっていい。私が何も言わなかったとしても、薄々何かを感じ取るくらいの事はできる。普段と違う鬼巫女を前に、心配していたのだ。
「人の心配してる場合じゃないだろ?」
だから私は誤魔化した。実際問題、『先生』は無理に無理を重ねている状態だろう。大人のカードを使ったか。使うと言う事はそれ相応の状況だったのだろう、とは思うが人の心配ができる立場ではない。
──……
「……」
お互い無言になる。言いたいことがあるのだろう。しかし状況がそれを許さない。
『先生、お時間です』
リンから催促が来る。名残惜しそうに、『先生』はこちらを見ていた。
──絶対帰ってきてよ
「……善処するよ」
そう言葉を交わして、2人はその場を後にする──
「鬼巫女」
前に、再び声を掛けられる。誰かと思えば、その人物は鬼方カヨコである。いまだに心配の表情を崩さない彼女は、私の手を掴むと、強引に何かを掴ませた。
「これ、貸してあげる。ほら、いつも鬼巫女、銃持ってなかったじゃん」
それは、いつもカヨコが愛用する拳銃であった。少女が扱うにしては少し大きめで、銃口には音を減らす減音器がついた特徴的な銃。
「おいおい、そりゃいいがお前はどうすんだ」
これが無いと、お前が困るだろう。しかしカヨコは笑って首を振った。
「大丈夫、予備があるから。……ちゃんと、返してね。大事なものだから」
流石に、だったら貸すなと軽口を返すのは憚られる。その意図を分かっていたから。これは帰ってこい、というカヨコなりのメッセージであり、願いなのだろう。それが分からないほど鈍くはなかった。
「わーったよ、壊れても知らんぞ」
受け取った銃を、服の下、ズボンのウエスト部分に銃を強引に差し込んで仕舞った。
「じゃ、行ってくる。色彩の方は任せた」
「うん、いってらっしゃい」
手を振り合い、私は空間に隙間を開けて、無間に侵入した。その穴が消えるまで、カヨコはずっとこちらを見ていた。
あれ……カヨコがヒロインみたいな感じに……?