無間の中は様変わりしていた。以前来た時はだだっ広い空間の中に扉があるだけだった筈。しかし、今目の前に広がるのは、人だけが消えてしまったような遊園地である。
誰もいない筈なのに、定期的に鳴り続ける音楽はその不自然さがホラーな演出のようで恐ろしさすら感じる。
「……これでどうしろって?アトラクションに一喜一憂できるほど若くはねーぞ」
床がレンガ調になった、人が沢山通る事を想定されたであろう道幅の広い通りを歩きながら鬼巫女はボヤく。相手が何をしたいのか、その意図が読めない。
その時、ファンファーレが鳴り響き、金属同士が擦れる甲高い音を鳴らしながら何処からともなく列車がこちらに向かって走り出してくる。
その上にはニタリと不気味に笑う人よりも大きい太った猫のような何かが乗っていた。その服装はまるで手品師のようだ。
こちらに向かって突撃してくるので、ジャンプで列車を避けて着地。その列車は白煙を煙突から撒き散らしながら急ブレーキで止まる。
「各駅停車、って感じでもなさそうだ……」
そこから降りてきた太った猫は礼儀正しく、腹の位置に手をキープしながらお辞儀を一つ。ポンッとカラフルな煙と紙屑を撒き散らしながら手元にステッキを取り出すと、それでカンカンと床を叩き出す猫。
「まるで不思議な国にでも迷い込んだアリスだな」
それならあの猫はさしずめ魔法使いか?バスでも走らせていた方がお似合いだろうに。
そんな私の軽口に反応はない。ステッキで床を叩いた所から、ポンポンと煙を上げながら現れるのは太った猫をそのまま小さくしたやつがいくつも現れるではないか。しかも、召喚されたそれは無軌道に動き出し、壁やアトラクションに当たって間抜けな音と共に爆発する。
「なるほど、退屈はしなさそうだ」
屈伸で足を幾度か動かし鬼巫女は笑う。どうやら相手は私を消耗させたいらしい。この奥にいるであろう奴の意図はそういう事だろう。一度勝った奴に対する警戒心が強いな。それだけ私が脅威だと見られているのか、或いは弄びたいという愉悦心から来る遊びか。
「少しだけ相手してやるか」
どのみち、これを越えなければ先には進めなさそうだ。さてやるか、と動き出す前に、後ろから音が聞こえるので振り返ってみる。
何もない空から降って来たのは大玉だ。ゴムボールのように跳ねるそれは二つある。まるでサーカスで使われる玉乗りのような柄の大玉にそれぞれ器用に乗っているのは二人。ネズミをデフォルメしたような奴に少し暗さを感じるネズミ?のような奴。柄や服装からして、姉妹か?
また敵が増えた。面倒が増えるのはよろしくない。
「オーケーオーケー、よーくわかった」
手品師にピエロのネズミ二人組が相手か。遊びに付き合ってやるよ。
「各駅停車かもしれないが、お前らの終点はここだ。地獄か天国か。好きな方を選ばせてやるよ」
戦いは、これから始まる。
何事もなくボスまで到達、とはいかないです。ラスボス前の前哨戦はよくある話。という訳で総力戦ボスこと『ゴズ』『シロ&クロ』同時のボスラッシュが始まります。