澄んだ記録を目指して   作:上条@そぉい!

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のんびり(当社比)


『のんびり日和』

『のんびり日和』

 

 さて、今日は事務所に客が来るとかでどっか行ってろと暖かい言葉をカヨコから頂いたので私は適当にぶらついている。ゲヘナに居るとあの風紀委員長に噛みつかれる可能性がある為今日はミレミアム学園に来ている。もちろん不法侵入だからバレるととてもヤバい。ここはお堅い連中が多いから話も通じ難いのだ。

 そんな話がフラグになったのか、最初に出会ったのは

 

「げっ」

 

「あっ」

 

 太ももが太い女こと、なんだったか……不味い、太ももが太い事しか頭に思い浮かばない。

 

「……なんだっけ」

 

「ユウカです!ユウカ!早瀬ユウカ!」

 

「ああ、そんな名前だったか。シャーレで会った時以来だな」

 

 以前は「先生」の依頼報酬を貰いに行った時に会ったな。随分と細かい奴だったのを覚えている。

 

「ってそんな事はどうでもいいんです!貴女また不法侵入してます!?」

 

「な、なにを根拠にそんな事を」

 

 全力で目を逸らしながら鬼巫女は後退する。それをツカツカと足を踏み鳴らし距離を詰めるユウカ。

 

「貴女が来るなんてシャーレから聞いてませんから!消去法でそうなるでしょう!」

 

「ぐぅ!」

 

 まるで裁判で証拠を突きつけられた検察官側の弁護士のように呻く鬼巫女。我が意を得たりとばかりに更に距離を詰めるユウカ。

 いや、この場合は自分の信用のなさを悲しむべきなのか。日頃の行いのせいなのか。

 

「ええい!こうなったら逃げる!」

 

「あっ、待ちなさい!」

 

 回れ右、全力反転。走り出す判断に至るまで僅か2秒。背後からドタバタとこちらを追いかけ走るユウカの足音が聞こえるが無視無視。

 

「随分と足音が重いなアイツ……」

 

 足が太いと足音も重くなるのだろうか。どうでもいい事を考えながら鬼巫女はパルクールの如く壁を蹴りスルスルと木を登るように建物から建物の上を飛び回り逃げ切る事に成功した。

 

「くっ、流石に速いわね。だけど今日という今日は逃がさないわよ!」

 

 毎度毎度なんだかんだで逃げられているユウカは今回こそは捕まえると息巻き、通信で連絡をとる。

 

「聞こえてるでしょノア!C&Cに連絡!ついでに目撃情報の有無も調べて!今回こそは捕まえるんだから!」

 

「はいはい、既にしてますよー。でもユウカちゃん。これ「先生」は知ってるんです?」

 

「前に確認したから平気よ。いくらシャーレ預かりで無罪放免になったとは言え、部外者にこうズカズカ入られても困るわ。シャーレが超法規的だとしても限度があるし」

 

「まあユウカちゃんがいいなら良いんですけど(その方が面白そうですし)」

 

 逃げ切れたと思っている鬼巫女だが、事態は結構大きなものへ。ミレミアムを巻き込んだ鬼ごっことなってきた。

 

 一方で鬼巫女は追ってこない事を確認し、何処かの建物の屋上で一息ついていた。ポケットに入れていた紙パックのお酒を取り出し、ついていたストローを指してちゅーちゅーと飲みながら高い所から下々で青春を謳歌する少女たちを見る。

 ゲヘナと違ってこっちは品がいいというか。やはり自治区が違うだけでそこにいる人も変わるものなのか。どうでもいい事に考えを滑らせていると、目の端でキラッと光るものを見つけ、即座に体を伏せる。

 瞬間、自分の背後が爆発。よく見れば床に大きな亀裂が。

 

「あっぶねぇ……殺す気かよ」

 

 先程あったのは狙撃だ。それも対人用じゃない。対物とか言われる威力マシマシの。さっき光ったのはスコープの反射光だろう。とすると……

 

「あっちか」

 

 体をできるだけ出さないように伏せながら光のあった方を見る。ここを狙えるのは数あるうち、一つだけ今の建物より高い建物だけだ。それが分かれば後はなんとかなる。

 そのまま走り出し、フェンスを乗り越えて屋上から飛び降りる。その間にも数発撃たれるが壁を蹴り落下の軌道を変えて回避。地面に着地する。その場に誰もいない事を確認して、狭い裏路地へと向かった。

 

「やれやれ、散歩にしては少しハードワークが過ぎるんじゃないか」

 

 

 

「──逃げられたか」

 

 膝立ちで構えていた銃を下ろす。褐色肌に白を基調としたメイド服が映えるその姿。彼女の名は角楯カリン。C&Cが誇るスナイパー。射線から逃れたターゲットについて通信を開く。

 

「ターゲットは逃走。予定通り裏路地へと逃げた」

 

 通信先の同僚からの返事は早かった。

 

「りょーかいー、作戦通り向かってるよー。あっ、先輩そっちじゃないよ。こっちこっちー」

 

 間延びした声に少しだけ不安になった。

 

「──しかし、話には聞いていたが確かに只者ではないな」

 

 カリンは先程の事を考える。撃つ直前、ターゲットはこちらに気づいたと確信している。距離はあった筈なのに間違いなく目があったと感じる程に。ヘイローをつけていない「先生」と同じ存在。しかしその身体能力は私達キヴォトスの住人と同じか、それ以上。

 未知数の実力を持つターゲットに少しだけ興味を持った。どんな経歴があればあれ程の……いや、今考えることではないな。

 

「私もこれから位置を変える。ターゲットを補足したらまた連絡する」

 

 それだけ伝えて通信を切る。

 

 

 

 

 一方その頃。話にあがっていたシャーレでは、仕事に追われ必死に書類を捌く「先生」と、それを手伝う空崎ヒナの姿があった。

 

 ──ごめんねヒナ、仕事を手伝わせて

 

「ううん、これくらい大丈夫。今日は当番だったし2人でやれば早く終わるでしょ?」

 

 本当は一緒に買い物をする約束だったけれど、仕事に追われる先生の都合を無視する訳にもいかず。ならば早く終わらせた方が建設的だとヒナは考えた。風紀委員会でも似たような事はあるし、慣れたものだ。それに、この後先生と一緒に買い物をしに出掛ける事を考えれば苦にはならない。

 既に買い物をする2人の姿が頭にあるのかヒナの書類を捌く手の速さは普段の3倍は速かった。

 

 そんな訳でもう仕事も一段楽つく、といったところでシャーレに一本の連絡が入った。それに対応していたのは先生だが、その表情は曇っている。

 

「どうしたの?」

 

 コテン、と首を傾げるヒナ。見る人が見ればあざといと言われるそれも天然がやれば立派な武器だ。罪悪感を感じつつも先生は答える。

 

 ──ちょっと問題がね……ミレミアムで「鬼巫女」が暴れてるって。

 

 だから行かなくてはならない。と先生は話す。その結果どうなるかを考え、即座に壁に立て掛けていた銃を掴むヒナ。

 

 ──ヒ、ヒナ?

 

「行こう先生。手早く終わらせる」

 

 普段ではありえない即決だが、ヒナにとっては最優先事項だ。有り体に言ってしまえば、予定を潰されて激オコで凄みを発しながら銃を握る風紀委員長がいた。

 鬼ごっこはまだまだ続く。




盛大に周りを巻き込み最終的に遊び倒して疲れて終了。周りはヘトヘトだったが本人は満足。
その後先生によって反省を促すダンスで説教されました(適当)
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