七海建人は苦労人である。
そしてその苦労の原因は大体がとある先輩2人のせいである。
ならば今集まっている中に、その2人がいればため息を吐きたくなるのは自然なことであった。
まあ、この集まりの中には七海よりも苦労している後輩が1人いるし、今も片方の問題児に絡まれているのだが。
因みにもう1人の問題児は七海の同期である灰原と会話している。
彼──伊地知は五条と夏油の後輩であることは周りでは結構有名である。そのため周囲の補助監督からもその2人の対応を押し付け…頼まれる事が多い。
数日前に五条から虎杖の引率を頼まれた件の任務でも伊地知が担当していた。
とは言っても、今回に限り伊地知も七海もあまりそういう事は気にしていなかった。
何せ夜蛾学長を含め、高専の頃の面子が皆集まっている。個々で食事を食べに行ったり飲みに行ったりはあれど、こうして全員が集まるのは珍しい。
出来れば冥冥や歌姫もいれば、と思う面々であったが流石にその2人は来ていないが。
或いはもうすぐ行われる交流会の時であれば冥冥も歌姫も居るだろうが、その時は逆に七海と灰原の予定が合うかわからない。
まあ、そんな面子である。主に五条のせいではあるが、真面目な話が3割程度になってしまうのは仕方ないというか必然とでも言えるものだった。
むしろ真面目な話があるだけマシなのかもしれない。
このまま他愛もない話を記すのもアレなので、今回は真面目な話だけ切り抜くとしよう。
まず最初に話題になったのは、七海が交戦したツギハギ顔の呪霊のことだ。
その力や被害、そしてアリスが仕留め損なったというのはかなり大きい。
連絡を受け出張を爆速で終わらせてきた五条もあまりいい顔をしていない。
「1番問題なのはやっぱり有栖が仕留め損ねた事だね。普通の呪霊であれば短時間でそこまで移動することはほぼ無いのに」
「そうね…。七海から連絡を受けてから1、2時間といった所だけど、結構な範囲をやったわ。それで逃げられたのだから、明らかに普通じゃないわね」
「偶然というよりは、有栖を知っていて逃げた可能性が高いね。七海や順平君の話だと完璧に意思疎通出来た様だし、非術師を呪術師に改造したのは順平君で判明してる。呪詛師なんかと繋がっているかもしれない」
七海が軽く話した所ですぐにその結論に至ったのは特級の3人だ。
有栖は良くも悪くも有名だからなーと呟いているが、その呟いている本人を含めたこの3人は有名である。
呪詛師と繋がっているならこの3人を警戒するのは当たり前だと言えた。
他の者も意見はないのだろう、話を続ける。
連絡を受け、色々と情報を集めていた夜蛾からだ。
「七海が戦った後から改造人間を見たという報告は入っていない。本格的に隠れていると見た方が良さそうだな」
「解剖した感じ呪力張ってるから窓の見落としとかは無いと思うよ」
硝子も補足をつけるが、七海はまだ軽くしか話していないので伝えていない情報もある。
「それですが、奴は人間を小さく改造して体内にストックをしていました。今も行方不明になっている内の何人かはヤツの被害に遭っていると思われます」
「厄介だな…」
「とりあえず窓や補助監督にも情報を広げて発見次第祓うしか無さそうですね…」
祓う、という言葉に疑問があったのだろう。七海の隣で灰原が声を上げた。
「そういえば、七海の攻撃は効かなかったんだよね?どうやって祓えばいいんだろう」
「そこは僕達に任せてよ。相手が呪霊なら傑は取り込めるし、有栖はどうせ問題ないでしょ。僕は最悪茈で消し飛ばすし、それでも駄目なら無量空処で止めて傑か有栖呼ぶよ」
そう答える五条は何も気負っていない。ほかの2人も同じ感じで、その実力をよく知っているここの面子は満場一致で任せる事にした。
この3人なら心配する必要などほとんど無いのである。
「あと、魂って言っていたのよね?なら釈魂刀が行けそうかしら。彼にも話を通しておいた方が良さそうじゃない?」
アリスの言葉を聞いて顔を歪めるのが2人。それを無視してアリスは夜蛾と話を進めていく。
魂を切り裂く釈魂刀、その真価を発揮するには魂を認識する必要がある。それを自在に振るうのは伏黒甚爾だ。昔の星漿体の事件以降、縛りの下高専の元で任務をこなしている彼だが、最近は恵がいるからか体術訓練の相手なんかをしたりもしているらしい。
一応給料は出ているのだが、尽くをギャンブルに溶かしているのは相変わらずだ。まだプロヒモニートのギャンブラーじゃないだけマシであろうが。
そんなロクデナシではあるが、案外父親をしているし同じ境遇の真希なんかに対する態度は悪くない。
虎杖は呪力操作の訓練を優先していたためまだあまり関わりはないが、おそらくフィジカルギフテッドである彼とも相性はいいだろう。恵とも仲が良い。
1度殺されかけた五条とあまり相性が良くない夏油とはよく喧嘩が起きそうになっているが、大体は口だけで終わるかアリスが止めている。
所詮その3人はアリスにボコボコにされた者達でしかないのである。
アリスとしても別に甚爾との関係は悪くないのだが、3人の間の空気はめんどくさいのでさっさと止めている。
「あとはやっぱり順平君ね」
「呪霊によって呪術師に変えられた、ね。呪物を食ったといい、今年は粒ぞろいだねぇ」
「まあ、学長の試験突破したから入学しているんだ。ならまあ様子を見ればいいさ」
吉野順平。虎杖が接触した後、紆余曲折があり母を保護、本人は1年として高専に入学したのだ。
まだ少しツギハギ顔の呪霊──真人と言っていた──のことを思っているそうだが、結局はアレも呪霊なのだ、その内否が応でも分かることになるだろう。
それに子供を導くのが教師の仕事だ。
元々真人から高専の事を聞いていたらしく、あまり拒否などもされなかった。それも呪詛師と通じているという意見を固くした。
「しっかし、今年の1年は6人か。中々大変だねぇ、京都の方に移す訳にもいかないし」
「とりあえず五条も今まで通り面倒を見てやってくれ。3年はともかく、2年も4人いるから大変だとは思うが」
その辺の話は教師ではない七海やアリスにはあまり関われない。が、アリスがそういえばと声を上げた。
「確か乙骨君は海外よね?交流会に1人足りないから人数合わせに1年が参加かしら?」
「そうだね〜。流石に順平は出せないから、5人の内1人に頼むことになりそうかな」
リカ解呪後、乙骨憂太は3ヶ月で特級に返り咲いたが、その影響か上から任務を大量に押し付けられそうになったため現在は夏油と五条の計らいで海外任務中である。
任務としては夏油が知り合ったミゲルという術師が持つ黒縄という呪具の調査であるが、実際のところ半分くらいは案内のミゲルと共に海外観光をしているだろう。上層部としても、黒縄という呪具は欲しいので黙認して任務をだしている。
その為、今は2年が3人しかいない。京都高の3年2年が6人なので、1人足りない。
まあ、去年はリカにより一瞬で終わってしまった。今は解呪こそしているものの乙骨は特級である。
乙骨が参加しない方が周りの活躍が見れるのかもしれない。
という訳で話が終わった後ではあるが夏油が1年に伝えに行った。
教室の中からミミズ人間?やらなんやらの話が聞こえてきたが夏油は無視した。内容はともかく、問題無くやれているらしい。
集まって駄弁っていた体を机に戻そうとしたのを制しつつ簡単に説明する。
ミミナナは2人ならともかく、1人しか出ないなら嫌だと辞退。
恵、虎杖、釘崎の3人で誰が出るかになり、ジャンケンで虎杖が勝ち取ったのである。
順平は純粋に虎杖を応援しており、恵と釘崎は自分の代わりに出るのだから負けたら〆ると脅していた。それでいいのか?
因みに既に虎杖と釘崎、ついでに順平もアリスには既に会っており、折角早く帰ってきたのだから見れるかもしれないと思っていた五条はその事を聞き項垂れた。
夏油や硝子がその周りでどんな反応をしていたやらをワザと聞こえるように話しているのが更に拍車をかける。
対応するのがめんどくさくなったアリスがその頭を叩くまでそれは続いたのであった。
交流会は3年、2年+虎杖という形で。
やっぱ東堂にマイブラザー言わせたいよね。