だってさ。君は、あなたには私の心なんて分かりっこないなんていうけれど、君だって、ただの一度だってボクの心を理解したことなんかないだろう?

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メタフィクションなんて大嫌い!

 

「……気に入らない」

 

 世間であるメタフィクションもののゲームが話題になっていたので遊んでみたのだけれど、これは大失敗だと言わざるを得なかった。このゲーム、事あるごとにプレイヤー、つまりボクの事を責め立ててくるんだ。

 例えば……

 

『あなたがこの世界を訪れなければ彼が死ぬこともなかったのに!』

『あなたの言うとおりにしなきゃならない私の苦痛がわかる?』

『外の人には人の心がないのかしら?』

 

 まぁ、こんな具合だ。だからメタフィクションものは苦手なんだ。

 心を傷つけられたなんて言われてもボクには君を傷つけない選択肢なんか与えられていなかったし、君がボクの心をこうして傷つけていることを棚上げしているのも全くもって不愉快だ。

 別にボクだってメタフィクションものの全部が全部嫌いなわけじゃないんだ。ゲームから責め立てられるのが必ずしも許せないわけじゃない。だけど……自分だけが被害者、みたいな立場を取られるとなんだかもやっとする。

 苦しみや悲しみなんて本来誰とも比べられないものだ。だからこそ、互いに互いを尊重し合うのが文明人ってものだろう?それをおざなりにしてるのが許せないんだよ。

 

 

 

 「と、思うんだけどメタフィクション好きな君としてはどう考える?」

 

 あのゲームを遊んでから数日後。

 悶々とゲームへの不満を募らせていたボクは、そんな気持ちを募らせながら近所のコンビニで買い物をしてたんだ。

 そこで、たまたま出会ったのが彼女、絵本 宙(えもと そら)だ。腐れ縁のゲーム友達でボクと違ってメタフィクションものが大好物。多少の嗜好の違いはあれど、同性のオタク仲間は貴重なのでこうして会うたびに駄弁っている。

 

 そんな彼女にこんな話をしても正直肯定はしてくれないだろうなと思っていた。だって、自分が好きなものを嫌っているなんて話をされていい気分になる奴なんかいないだろう?

 ボクだってそんなのわかってるけど、それでもこの気持ちを一人で抱えたくなかったんだ。

 そう思っていたんだけれど、彼女の返答はボクにとって意外なものだった。

 

「そうだね、確かに私もそれはムカつくかも」

 

「えっ」

 

「えっ、って何さ。……もしかして君はこれぐらいのことで私が怒るとでも思っていたのかい?」

 

「そんなことはないけれど……肯定されるとまでは思ってなかった」

 

 我ながら失礼だと思ったけれど、それでも声に出てしまうくらいには意外だったんだ。半分絵空事の世界を生きているような彼女がある意味、絵空事を悪く言うような言葉に同意するとは思ってもみなかったから。

 

「私だってさ、好きなものの全てが好きなわけじゃない。誰だってそうでしょう?ムカつくこともある。だから君の言うことも理解できる。それでも好きなのはムカついてもそれを許せるぐらい好きだからだよ」

 

「……なるほど」

 

「それにさ、君だって言うほどメタフィクションが嫌いではないんじゃないかな?」

 

「……?」

 

「考えてもみなよ。本当に嫌いなものなら考えたくもないし、そんな真剣に向き合ったりもしない。……君は多分物語に真摯に向き合ってるから、人を深く傷つけようとしてくるものを許せなかったんだ」

 

 そうか……そうだったんだな。ボクは真剣に向き合っているからこそ許せていなかったんだ。だけど、それでも……。

 

「でもまぁ、正直嫌いなことには変わりないね」

 

「……この話の流れって、嫌いなものが嫌いじゃなくなるパターンじゃなかったの?」

 

「それこそ、物語じゃあるまいし。ただ、全部が全部嫌いなわけじゃない。どこかに好きな要素があるから向き合いたいと思う。それも事実なんだろう。だから……これからもムカつきながら向き合っていこうと思うよ」

 

「……利来(りく)、君って面倒くさい女だよね」

 

「君ほどじゃないさ」

 

 それから、あのゲームの主人公ほどでもね。

 ……あの子がボクの気持ちを理解してくれるとは思っていないけれど。あの子は相変わらずボクを嫌っているだろうけど。それでもボクにとってあのゲームは嫌いなだけじゃないってことぐらいは伝わってほしいなと、そう思えた一日だった。


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