たぶん続きません。
昨今のネット小説だかでありがちな転生だか憑依だか、まあトリップとでもいうべきものをオレはしてしまったようだ。
事故や重篤な病気なんかがあった記憶はないが、気づいたらぬら孫の淡島(偽)になって知らない部屋にいたのだから、きっとそうなのだ。
……見た目だけの変化だったらどれほどよかったことか。
長い時間をかけて独特な体質と折り合いがついてきたころ、金髪グラサンの怪しい男と偶然友人になったことで、自分がどんな世界に来てしまったかに気づいた。
―『推しの子』だ、これ
オレは激怒した。(略)オレには『推しの子』がわからぬ。オレは、二次小説の読者である。二次小説を摂取し、妄想で遊んで暮らしてきた。けれども原作に対しては、人一倍に鈍感であった。
我がことながら、なんとも情けない。だが一応コミックスは揃えていたので許してほしい。
包装されたままだったけど。
閑話休題。とにかくオレには二次小説由来の聞きかじったような原作知識しかなかった。
だがそんな穴だらけの原作知識からでもわかることはある。娘のように思っていた星野アイが殺害されてしまい、この金髪グラサンの不審者は復讐のために失踪してしまうのだ。
こいつと友人になってしまったのだから、そんな結末は回避したい。
だが所詮は元無産二次小説オタクの一般人、どうやったら回避できるかなんて思いつかないし、仮に思いついたとしてもうまく立ち回る自信もない。できることといったら淡島由来の父性と母性を発揮するとか、槍とかで数か所貫かれても死なないことくらいか。いやなんで死ななかったんだ淡島(真)。
とりあえず、オレには原作知識を有効活用できるような頭がない。掲示板モノの世界だったらどこかの有能な名無しが助けてくれたかもしれないが、自分にはそんな有能な伝手なんて――
――あるじゃないか。それもほぼ一人でプロダクションを設立して所属アイドルグループをドームまで連れて行ってしまうようなとびきりの伝手が。
結論:全部ゲロることにした
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「やめとけって言ったろ?殺されるやつなんて」
休日の昼の苺プロにどこか物騒な言葉が響く。
「いつ問題が起きるかわかってんだ。それならこんな逸材を逃す手はねえよ」
だが金髪にサングラスをかけた男はしたり顔でそう答えた。
幻想の輝かしい将来が明確な形を持ちつつあることをこの男は疑っていないようだ。
しかしその男と対照的に、隣の男の顔は疲れたような顔をしている。
この状況が彼にとって喜ばしくないことをその表情がはっきりと語っていた。
「たしかにお前の判断に任せるって言ったけどよ、壱護」
――オレがアイのマネージャーってどういうことだよ