強化人間部隊ヴェスパーの9人目   作:ねむい

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 ノインたちのショッピングが終わってから数時間後のお話。





外伝2 C1-249、スッラ

 

 

 

 

 サブジェクトガードに配備されたMTは、BAWS製二脚MTよりも性能に優れている。威力の高いレーザーガンを携行し、ミサイルを搭載した機も存在する。

 

 ウォッチポイント・デルタには、複数の防御システムが備わっている。今はそのうちの一つだろうレーザー砲台の破壊に当たっていた。

 

『本部に連絡しろ!』

 

『これは…本部と繋がりません!』

 

 MTパイロットらの焦燥をよそに、レイヴンは敵を破壊していく。パルスブレードや軽リニアライフル、ミサイルを駆使して効率的に雑兵を排除し、脅威となるレーザー砲台に対してはアーキバス製のパルスシールドで防御する。出力が高くなるタイミングを狙ったイニシャルガードによって、シールドの展開と敵砲台のレーザーとを上手く合わせて被害を最小限に抑えていた。

 

『応援は来ない』

 

『殲滅しろ』

 

 彼女が慕う男の声の通りに、MTも砲台も形が残らない程度にバラバラにしていく。レーダーから徐々に敵反応が消えるのを見ながら、ハンドラー・ウォルターはコーラル反応のあるウォッチポイント・デルタ最奥部をドローンのカメラ映像越しに見据えていた。

 

『そのあたりは片付いたようだな』

 

 621付近のレーダー内敵反応が消えた事を確認し、次のエリアへと向かわせるよう指示する。彼女の機体LOADER 4にはまだ数発の被弾しか見受けられず、リペアキットを使うまでもない程度の損傷しか無い。

 このままなら補給させるまでも無いか、そう考えながらシェルパの輸送用意を済ませ、621の動向を見守る。

 

『何だこのACは…!?』

 

『排除する』

 

 MTからの総攻撃をまともに受けるはずもなく、回避したり避けられない攻撃は盾で弾くなどして前進し、続くレーザー砲台までを破壊すると、残ったMTを殲滅しにかかる。

 手際の良さに助けられている事を自覚しながらも、目的が終わっていないことを彼女に告げて最奥部へと進むよう指示を下した。

 

『マーカー情報を送信した。次へ向かえ、621』

 

『わかっ…た』

 

 拙いながらも了解の意を示し、マーカーから後に続いている洋上道路を進ませる。

 

『あれがウォッチポイントの主機能だ。内部に侵入し、最下部の施設を破壊し────待て』

 

 ウォルターがマーカーを削除し、それ以上進まないよう指示する。621はそれに従い、付近の敵存在を確かめるべくスキャンを行う。

 反応がひとつ。ACだ。

 

 

 

『───ウォッチポイントを襲撃するとは。相変わらずだな』

 

『…! 貴様は…!』

 

 そのACは、ウォッチポイント中央部の屋上から姿を見せた。武装やフレームのいくつかに、オールマインドからのログハント報酬となるパーツが組み込まれている。

 

『お前がウォルターの新しい犬か。臭うな。多く殺してきたやつの臭いだ。お前みたいなのは良く漂ってくるのでな。殺した方が上策なようだぞ? ハンドラー・ウォルター……』

 

『…妄言に耳を貸すな、621』

 

『私は老婆心で言ってやっているだけだがな…聞く耳持たず、か。では消えてもらうぞ』

 

 バズーカを撃ち込んでくる。それを跳躍して回避する。着弾点に複数の爆発が見られる。威力だけは高火力を誇示する既存品のどれにも劣らないものらしい。

 降りてくるACの識別名がモニタに移る。

 

『スッラ…! 何故この仕事を知っている?』

 

『さあなぁ。少なくともお前には荷が重いと、私は思うがね、ウォルター』

 

 識別名、スッラ。AC、エンタングル。

 

『C1-249…第一世代の生き残りだ。621、気を抜くな』

 

『そこの犬、お前には同情するぞ』

 

 戦闘を継続しつつも、スッラは揺さぶりをかけてくる。感情が死んでいることを知ってか知らずか、その口撃は止まることはない。

 

『ウォルターの甘言は甘い蜜だろうとも。そして須らく罠だ。617…お前の先達はそうして死んだぞ』

 

『621……… ……  ……スッラを排除しろ』

 

 621はスッラからの口撃を受けても動じることはない。感情が揺れ動くことが無ければ、きっと揺さぶられることもないのだ。だが、今までの活躍が嘘であったかのように621の、彼女の操縦は鈍っていた。

 

『甘いな、ハンドラー・ウォルター。そうやって何匹の犬を使い殺してきた? 封鎖機構を相手に大した立ち回りだったそうだな』

 

『どこまで知っている? 俺は……あいつらを使い潰したかった訳ではない。お前は…お前は、殺しだけを請け負っているというだけではないな…? 裏で誰が糸を引いている?』

 

『殺して確かめてみるか? 621』

 

『その名を、呼ぶな…!』

 

 ウォルターからの怒りが伝わってくる。621にとっては初めてのことだった。無愛想だが根は親切な彼が、怒りを露わにするなど。

 その後もスッラからの言葉は続き、射撃戦を以てそれを遮ろうとする。彼女にとって、ウォルターを惑わすこの男は敵だ。それ以上でもそれ以下でも無い。排除の対象だ。

 

『……おっと』

 

 しかし、不意にスッラの動きが止まり、2、3発撃ち込んだ621の攻撃を躱すと、ウォッチポイントから離れようとする。

 

『何を考えている…?』

 

『本命が来る。この下へ行け。ハンドラー・ウォルター、お前の狙いはそれのはずだな』

 

『……621、警戒は怠るな』

 

 彼女がこくりと頷き、ウォルターに返事をする。

 そのままスッラの監視の下、ウォッチポイント中核下層、最下層へと潜っていく。やがて辿り着いたのは、コーラルの湧出を検知、管理する制御装置のコア。

 

『…破壊しろ』

 

 その言葉に従い、621は武装をぶつけて制御コアを破壊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 コーラルが逆流する。抑えられていたコーラルの全てが、621と彼女のAC、LOADER 4を巻き込んで噴出する。凄まじいエネルギーの奔流に巻き込まれ、衝撃で意識を失った621の機体は、そのオートパイロットの示すままにウォッチポイント・デルタ上層へと飛び上がった。

 

 

 収束コーラルの局所爆発が、宙をほんのひと時ばかり赤く染めた。美しく燃え上がる中空を、ひとつの機影が遮った。青白いパルスアーマーを展開し、まるで花火のようにミサイルを撒き散らすそれは、2()()のACを見据えていた。

 

 

 

 

 

 







 独立傭兵C1-249 識別名 スッラ
 ウォルターと浅からぬ因縁を持つ傭兵。ウォルターの猟犬の一人を手にかけており、また殺しを専門に請け負ってもいる。その能力は極めて高く、また情報戦にも長けている様子。
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