ARMORED CORE VI 戦車道の少女達 作:くろがね四駆
――レイヴン達と杏達は互いの情報を交換した。
此処は別世界な事、そして学園艦という街が存在する巨大な船だという事、大洗女子学園の戦車道復活の事……。
強化人間の事、独立傭兵の事、企業勢力の事などを互いに説明した。
生徒達は今日は解散となるが、杏がレイヴン達にAC機体を格納できる場所を案内していた。
場所は学園艦の内部、案内された場所についていくと、広々としたAC格納庫がそこにはあった。
AC機体なら10又は20機、MT機体なら30機以上は格納できるだろう。
「これは凄い、空母型の船にAC格納庫があるとは……しかし、どうやって格納庫を作ったのだ?」
「実は戦車同連盟が協力してくれまして、これもそこで整備している人のおかげです」
杏が既に格納されているAC機体を整備している、一人の男を見た。
男は杏達に気づくと、ゆっくりと立ち上がり口を開いた。
「……ケッ、やっと来やがったか。 野良犬」
ACの整備をしていた男、それはレイヴン達がよく知るレッドガンの一人、G5イグアスであった。
「イグアス先輩……アンタがこの格納庫を管理しているのか?」
「なんだ、レッドも来てやがったのか。 まあ人数は多い方が良いだろうぜ」
するとイグアスは、隣にいたエアに気づく。
じっとエアを見つめると、イグアスは若干驚いてレイヴンに言う。
「……おい野良犬、なんで耳鳴り女が人の姿してやがる?」
イグアスの言葉にレイヴンは違和感を感じる、何故イグアスがエアの事を知っているのだろうか。
確かに以前イグアスは、
「……イグアス、エアの事を知ってるのか?」
「あぁ? 知ってるも何もお前らと俺が…………あークソ、そういうことかよ」
一人で自己解決したかのようにイグアスは、髪をクシャクシャとかきながら再び口を開く。
「おそらくだが、俺はテメェの知ってる方の俺じゃねえ……パラレルワールドってやつだ」
「パラレルワールドだと?」
――イグアスが話す内容は壮絶だった。
コーラルリリースの事、オールマインドの計画、レイヴンと戦って死んだ事……。
「――とまあ、死んだ俺だったが……どういうわけか、身体は戻ってるしACも元通りだ」
話が長かったからか、イグアスは途中に軽い食事をしながら説明をしていた。
ついでにレイヴン達も貰っていた。
「おい耳鳴り女。 テメェも食っとけよ、いくらコーラルだからって人の姿じゃ腹は減るだろ」
「ありがとうございます、では頂きます」
エアに食事を渡すイグアスを見て、レッドは意外そうな顔で見る。
それに気づいたイグアスがレッドに言う。
「あぁ? 何見てやがる」
「……イグアス先輩、そんな事出来たのですか?」
「アホか、もう何年この世界で暮らしてると思ってんだ。 平和すぎて丸くもなるぜ」
二人がそんな会話をしている中、レイヴンはパンをかじる。
……するとレイヴンが少し黙った。
「レイヴン、どうかしましたか?」
「……イグアス、俺に何のパンを渡した?」
「テメェには飛び切り辛いカレーパンを渡したが、気づかずに食ったみてぇだなぁ」
イグアスはニヤニヤと笑っている中、レイヴンは静かに辛さに悶え震えている。
「そういうところは変わらないようですね」
「当たり前だ、そもそも一度くらいは野良犬の悶える面が見たかったんだ」
スッキリしたようにイグアスは、呆れているレッドに言った。
――しばらくしてレイヴンは辛みが無くなっていき、話に戻ってくる。
「さて本題だが、この格納庫の管理をしているのは俺じゃねえ」
「なに? では誰が管理をしているのだ」
「ああ、ソイツは――――」
「……俺が管理をしている」
――声が聞こえた。 レイヴンにとって、それはよく聞き慣れた声であった。
レイヴンはすぐに後ろを振り向いた。
振り向くとそこには、杖を持った老いた男が立っていた。
エアも杖の男を見て驚いている。
レイヴンは思わず声を上げ、男の名前を言った。
「ウォルター……?」
「……久しぶりだな、621」
レイヴンを唯一621と呼ぶ男、ハンドラー・ウォルターは微笑んだ。
そして杖で体を支えながら、レイヴンに近づく。
「実は俺も、この世界に来ていたんだ」
「ウォルター……本当に貴方なのか?」
レイヴンは、感情という機能を失いながらも、今だけは精一杯に出し切ろうとしていた。
そんな姿を見て、ウォルターは嬉しそうに言う。
「621、コーラルの影響で感情が少し戻っているようだな……」
するとウォルターは、近くにいたエアを見る。
少し考えた後、ウォルターは口を開いた。
「お前がエアだな? ……今まで621の事をサポートしてくれて感謝する」
「ウォルター……私は、貴方達の計画を……」
「……エア、これは621がお前を信じ、自分の意志で決断した。 それが友人達の意志に背いていたとしてもだ」
ウォルターの言葉にエアは涙をポロリと流す、そしてレイヴンの肩に手を置き微笑んで言った。
「……621。 お前にも、いい友人ができたな」
――この言葉が、レイヴンにとって最初で最後の涙を流した時であった。
レイヴンにとってウォルターは親も同然であった。
膝が崩れ落ち、感情という機能が一時的に回復したようであった。
それはコーラルを浴びて、この世界に来た影響であろうか。
だが、今のレイヴンにとって……そんなことはどうでもよかった。
そんな光景をレッドとイグアス、そして杏が見ていた。
イグアスは泣いているレイヴンは見て、レッドが見たこともない優しい表情で言った。
「……ケッ、野良犬もちゃんと泣けるじゃねえか」
「……イグアス先輩、まさかアンタがこんなサプライズを用意するとは」
「たまには、こういうのも悪くはねえなと思ってな」
――レイヴンとエアが泣き止むまで時間がかかったが、ウォルターは泣いている二人を止めようとはしなかった。
それほど友人が出来た上に、一時的だが感情で泣いているレイヴンの事を喜んでいるのだろう…………。
ウォルターは絶対に出したかったので出しました。