何とか年明けには間に合いました
「とりあえず場所を移すぞ」
エボルトが手を虚空にかざす。するとその掌から、赤いエネルギーが溢れだした。
次の瞬間、先ほどまで広がっていた奇妙な空間が崩れてゆく。そして、眩い光と共に元のコンクリートの壁が目の前に現れた。
だが目を開けた時には、既にバイカイザーの姿は消えていた。
「悪いなー千華。俺もあいつらの事を甘く見ていたようだ」
「分かってて止めませんでしたよね?」
「さあーて、何の事かな?」
「………もういいです。それよりもあいつら、どうしますか?」
俺が見つめる先から、三つの足音が近づいてくる。言わずもがなその正体は、
「よっ、久しぶりだな。伊能」
「エボルト………!」
姿を現したブラッド族、主に伊能からの強い視線が向けられる。ただし、先ほどのように戦闘態勢に入るような動作は見受けられない。ボトルは奪われたが、まだ最上とは合流できていないようだ。
俺もすぐさま変身出来るようボトルを構える。だが、横からエボルトが耳打ちをしてきた。
「こいつらの相手は俺がやる。お前は、あいつらと遊んでやれ」
あいつら?その言葉を言うよりも早く、大きな破壊音が背中に伝わってきた。思わず後ろを振り向くと、そいつらは姿を現していた。
「見つけたぞ!エボルトに島田千華、それに………誰だあいつら?」
「少なくとも味方同士………じゃないみたいだな。万丈、行くぞ!」
「応!」
俺達を発見した途端、勢い良く駆け出してきたビルドとクローズ。形態はラビットラビットとクローズマグマ、パンツァーでやりあうには少しきついだろう。それにグリスとローグの姿が見えない。どこかに潜伏して奇襲でも狙っているのだろうか。
ベルナージュがいない今、メタルビルドを使うのは危険だが、ここは少々リスクを背負ってでも………………
『すまない、遅くなった』
(……ベルナージュ!)
十数分ぶりに彼女の声が聞こえた。心なしか、いつもより声が震えているように感じる。
『最上魁星の罠に嵌められていた。だが、今は問題はない。いつでもいけるぞ』
(頼んだ!)
ハザードトリガーをベルトに接続、ボトルをスロットへと挿入する。
「変身」
メタルビルドへと変身すると、ドライバーからビートクローザーとカイゾクハッシャーを展開、二刀流の
構えを取る。
「狙うのは万丈龍我だ。ハザードレベルを上げさせろ」
「……了解」
再びのエボルトの耳打ちに返事を返し、ビルドとクローズの両者を迎え撃つ。
「はあ!」
先手はビルドのフルボトルバスターの大振りの一撃。二刀をクロスさせて危なげなく防御する。近距離で競り合う俺とビルド。純粋なパワーはこちらが上。だが、得物の質量分あちらに分がある。
真っ向からのぶつかり合いは不毛だろう。
「ほらよっと!」
「!」
膝を曲げて拮抗を崩す。そのままビルドの膝元を切りつけ、流れるように腹元へ二撃目。
さらに体勢を崩したところへ腕を振り上げるが、それを阻むように衝撃が走った。
『左からだ』
「報告遅くない?」
「どおりゃ!」
クローズのナックルパンチが顔面に突き刺さる。間に腕を何とか滑り込ませ、衝撃を中和するが、後方にあったコンクリート壁をぶち抜いた。
なかなかきつい。にしても、以前戦った時より動きが早かった。これは多分、対策されてるな。
(多分こっちの性能もバレてるよな)
『恐らくな。それにもう一つ、』
(なんだ?)
『お前は気付いてないかもしれないが、体に疲労が蓄積している。私の力で治癒も出来るが、エボルトにばれる危険性が……」
(分かった分かった。要するに無理はするなって事だろ?)
『………そうだ。済まない、私が付いていたならこんな事には』
(反省は後。今は負けずに時間を稼ぐ方法考えてくれ)
桐生戦兎の性格からして、こちらの能力を解析していてもおかしくはない。現状パンツァーでは力不足だし、メタルビルドでやり切るしか方法はないだろう。
だがメタルビルドの弱点、搦め手の少なさを突かれるというのは、なかなかにキツイものだ。
メタルビルドの特徴は、その圧倒的スペックを使ってのゴリ押し。相手のペースに飲まれる前に、速攻で戦闘を終わらせるのがメインの戦法だ。しかしその反面手数が少なく、相手側の特殊攻撃を耐える術もほとんどない。もちろん装甲の防御力も桁違いではあるのだが、それでも限度というものがある。
今回ビルドは、その搦め手を二人の連携というやり方で再現したのだろう。多方面からの同時に攻撃。遠距離からならばともかく、近距離でそれを行うのは、相当な技術と信用がなければならない。
………本当に厄介だな。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦
「それで?どうして裏切ったんだ~わざわざそれ相応のポジションも用意してやったのに」
少し場所を移した場所では、エボルトと伊能達が対峙していた。元を辿れば同郷の者達だというのに、彼らの間ではお互いにお互いを蔑むような目線で睨み付けていた。
「人間の社会的地位などに興味はない。まさか貴様、我々ブラッド族の使命を忘れたわけではあるまいな」
「んなわけあるかよ。俺の心はお前達と同じだ。この地球という惑星を滅ぼす、ただそれだけだよ」
「それはどうやろな~?あの千華という地球人、それに桐生せ………えーとなんやったけ?」
「戦兎だ。二度と間違えるな」
「おーこれは堪忍。けどなエボルト、お前少し人間に肩入れし過ぎとちゃうんか?」
「そうね。いくらエボルトドライバーが破壊されていたとしても、あなたのやり方は少し遠回りし過ぎよ」
エボルトは内心、少々穏やかではなかった。無論彼らが裏切るのも想定の内だったし、万が一そうなったとしても大丈夫なように、保険もいくつか掛けていた。しかし、それではないのだ。
伊能達は元々、エボルトよりも力の弱い個体であったはずだった。それが簡単に倒されないよう、保護してやり力を与えてやったのは、他ならぬエボルトだ。だがその事ついても、何も恩着せがましくとやかく言うつもりはない。
もっと他に、彼らへの不満があった。
彼らは人間を甘く、そして都合よく見過ぎている。自慢ではないが、人間の脆さも弱さも醜くさもそしてその強さも、エボルトは散々目の当たりにしてきた。だからこそ、腹が立つ。
何も知らない者達が、自分のおもちゃで勝手に遊ぶのが、どうにも。
「……お前達は、一つ勘違いをしている」
「勘違い、だと?」
「ああそうさ。それもとっっっても重大な勘違いをな」
「なんや?勿体ぶらんではよ言うてみい」
「そうだな。んならまあ、お披露目会といこうか」
変身を解除したエボルトは、寄生本である石動惣一の体へと姿を変える。そしてパチン、と指で音を鳴らした。
それと同時に四人の前に、三人の仮面ライダーが姿を現す。
「あっ?なんだこりゃ⁉」
「あれは、エボルト!」
「………時間切れですか」
呼び戻された仮面ライダー達の反応は三者三様。万丈は困惑し、戦兎は警戒し、千華は諦観を示した。
「お前達はさっき言ったな。まだアレは完成していないと」
「エボルト………貴様まさか!」
「ああ、内心ひやひやしたよ。でもギリギリで完成した。究極のドライバーがな!」
空気が変わった。いや、世界が変わったと言った方が良いかもしれない。
ここにいる全員がその目で確かに確認した、その存在を。だがそれと同時に拒んだ、その在り方を。
自分達が今まで見てきた何にも当てはまらない、超常的な何か。体が無意識の内にアラートを脳内に響かせている。
一方で自身の変身を確認したエボルトは、ゆっくりとその隅々までを舐め回すように見つめる。そして腕の感触を確かめるように肩を回すと、両手を広げ宣言した。
厄災の復活を。
「フェイズ1完了」
ラスボス復活で年明け、なんか雰囲気悪いっすね
あっそれと年明けなのでタグとあらすじの整理をしておきました
・千華
エボルトすげー
・戦兎
エボルトやべー
・万丈
エボルト半端ねえー
・ベルナージュ
なんでアイツ(エボルト)変身出来んの⁉
・エボルト
伊能達に若干プッツン
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