気まぐれな神から実況中継ヨロ。というメッセージを今日、受信したずんだもんなのだ。
キャンセルしていいっすか?
え、拒否権ない? そうだよね、知ってた。
まったく……急に連絡してくるのやめろよな。
ボクの脳はスマホじゃないっての。
とりあえず……現状報告という名の仕事すっかぁ……。
じゃあ──さっそく、ボクの周りでどんなことが起きているのか、説明するのだ!
いま、ロドス内では──
「きょうもおままごとするのだー」
「やったなのだー」
子供たちの間でボクの語尾が流行ってるのだ!
………………殺せぇッ! ボクを殺せぇッ! 殺してくれなのだ!
「ずんだもんさんもおままごとしよー……じゃなくて……するのだー!」
「するのだー!」
「ふぐッ……わかった……するのだ……クゥゥッ……!」
床で遊んでいる子供たちに合わせてボクもしゃがんで、地べたに座る。
すると。ひとりの子供がボクの背中をさすった。
「なんか、つらそうなのだ……」
「くっ……! お気持ちだけで……! 十分なのだ……!」
「でも、つらそうなのだ……」
「くうっ……!」
ボク、泣いていいっすか? だって、まさか。ボクの語尾が子供たちの間で流行ると思わないじゃん。たしかに真似しやすいけど。前世のボクもときどき、真似してたけど。
「ずんだもんさん……おままごとやめるのだ?」
「っ、大丈夫なのだ……やるのだ……。目にゴミが入っただけなのだ……」
わずかにポロッと流れた涙を指で拭き取る。
まるでずんだの汁だな。なんて摩訶不思議なことを考えながら。
ボクはおままごとにベストを尽くした。
とびっきりの笑顔で。
でも──心はナイアガラの滝だった。
来世はずんだもんじゃなくて、ナイアガラの滝になりたい。
ボク…………疲れてんな。
でも、神がボクを気遣ってか、脳内の語尾はある程度自由にしてくれたから、そこだけは感謝してるのだ。
は? 語尾抜けてないんだけど?
ボク………………病んでんのかな。
「ずんだもんさん! また遊ぶのだ!」
「遊ぶのだー! のだー!」
「うん……また……遊ぶ……のだ……」
ボクは子供たちに手を振り、トボトボとその場を後にする。
こんなのがこれからも続くとか……やっぱ、つれーわ……。
「あ! ずんだもんさん!」
「あ……キミは……」
ボクに声をかけてくれたのは、子供たちの面倒をいつも見てくれている優しい女性オペレーターだった。
ずんだもんに転生したとはいえ、ボクの前世は男! かわいいお姉さんに話しかけてもらって嬉しいに決まってる!
え? ずんぽがあるかどうかは……神のみぞ知るのだ!
ボクに声をかけてくれるなんて……もしかして、デートのお誘い?
なーんて、浮かれたボクがバカだった。
「ずんだもんさん……いつも、子供たちと遊んでくださってありがとうございます。じゃなくて……こういうときは……うーん……そうです!
ありがとうございますなのだ! ですよね!」
Huh? ウソでしょ? お姉さんも感染した?
感染するのは鉱石病だけにしてよねなんて、口が裂けても言えないけど。
「最初は……とても変わった人だと……思いましたが……子供たちと遊んでいる姿を見て、語尾が変わってるだけでいい人なんだな、って思うようになりました。でもどうやら、私が知っている世界が狭かった……だけのようです。
……ずんだもんさんのおかげで、私の世界が広がりました。ありがとうございます!」
ちょ、待てよ。
「あー、どういたしましてーなのだー」
さっきからついていけない。
なにやら、神の強制力のようなものを感じる。
もしかして……イイハナシダナーみたいな展開に持っていこうとしてる? ねえ、My GOD?
そうは……させん。させんぞ。
「えっと……なんかいい雰囲気のところ申し訳ないのだが……この語尾は子供たちに悪影響を及ぼすというか……なんというか……やめさせたほうがいいと思うのだ」
「えっ……? どうしてですか? 子供たちがあんなに喜んで、ずんだもんさんの真似をしてるのに……」
だ・か・ら・こ・そ、だYO!
「お、大人になったときに……恥ずかしいと思うのだ!」
「えっ……ずんだもんさんも、大人ですよね……? 毎日、言ってるのに……恥ずかしいという自覚があったんですか? あっ……私ったら、ごめんなさい! つい!」
「いや……いいのだ……」
まあ、本当のことだし。
とはいえ、自分の言葉が自分にかえってくるとは。これぞブーメランだな。深く刺さったゼ……。
「その……なるべくでいいから……やめさせてほしいのだ……」
「うーん、それは……難しい相談ですね。ほとんどの子供たちが使っちゃってますから……」
「そこを! なんとか! してほしいのだ!!」
「ええっ……? どうしましょう……」
すこしの間、悩んでいると。名案が思いついたといわんばかりに女性オペレーターは顔を明るくする。
「あっ! ずんだもんさんが語尾を変えてみるのはどうでしょう?」
「無理……なのだ……」
「ええっ……そんな……」
ハァ……消えたい。
っていうかそもそも、ボクが子供ばっかり相手にしてたのが原因なんだよな。
だって、大人のオペレーターの前で語尾が「のだ」のまま喋るとか──百億倍、しんどいぞ?
まあ、元を辿れば神の仕業なんだが。
ターニャ・デグレチャフもこんな気分だったのかな? いや、一緒にするなとキレられそう。
はあ……もうどうでもいいや。
ボクなんてどうせ、ただのずんだもんなのだ。
はいはい、ずんだはずんだらしくズンズン踊ってればいいんでしょ?
「変なワガママ言ってごめんなさいなのだ……。ボクの話を聞いてくれてありがとうなのだ……。それじゃ、ボクはもう行くのだ……」
「あっ……! ずんだもんさん……! その前に私、伝えたいことがあって……!」
背を向けるボクに彼女が声をかける。
でも、ボクの気持ちはもう……ボロボロなんだよ。
そんなボクになにを言うんだよ。
「ずんだもんさんは……以前、その語尾を呪い、っておっしゃってましたけど……私は……呪いだとは思いません。ずんだもんさんの語尾のおかげで、子供たちがとっても楽しそうに喋ってるんです。それを見たら──見てるだけの私もすごく嬉しくて……。私は……呪いじゃなくて、祝福だと思います」
「えっ……? 祝福……? どこが……なのだ?」
そう返すと、女性オペレーターは子供たちがいる方向を手で指し示した。
「……見てください。子供たちが楽しそうに喋ってる姿を。子供たちの間では、ずんだもんさんの語尾がブームなんですよ。……ずんだもんさんは嫌かもしれませんが……」
「ううん、嫌……じゃないのだ」
よくよく考えたら、ここにいる子供たちは鉱石病を治療するためにここで生活している。楽しく毎日を過ごせることが奇跡に近い。
ボクひとりが我慢することで子供たちの笑顔を守れるのなら──
「やっぱり……やめさせることをやめるのだ!」
「ずんだもんさん……! 本当に大丈夫なんですか……?」
「うん、大丈夫なのだ」
神にいいように丸め込まれたような気もするけど、もうすこしロドスで頑張ってみようと思えた。
「ずんだもんさん、調子が戻ってよかったのだ!」
それやっぱりやめて。