戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
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「ぐぉおおおお!!」
ミドル・フラットウェルの乗機ツバサはミルクトゥースの猛攻を捌き切れずに撃墜されていた。機体の頑強さを前に押し潰された形となった。
『見た! 来た! 勝ったッ!!』
「乳歯(ミルクトゥース)を卒業した際に付けた名前でしたが、随分と気に入って頂けたようで……」
彼の中では、エアやセリアとは比較にならない程喧しい声が響いていた。ツバサからパイロットが脱出したことを確認すると、彼は別所の援護に向おうとして、損傷した状態で飛行している2機のLCを補足した。直ぐに通信を入れた。
「お二人共。中身はご無事ですか?」
「全然平気ですよ~! それに比べて、そっちは損傷も見当たりませんね。茶会でもしていたんですか?」
「お前の減らず口は何?」
ペイターのLCはボロボロだと言うのに、パイロットの方は健壮と言う外なかった。一方、1317のLCは損傷こそ中程度に留まっていたが、声色には疲労が見て取れた。
「ご友人、大丈夫ですか? 怪我などは?」
「いや、問題はない。ただ、想像以上に相手の逃げ足が速くて、補足するのに手間取った。そして、逃げられた」
「ここは相手側のホームグラウンドなんで、仕方ないですよ。生きていただけ、良しとしましょう」
珍しいことに、ペイターは1317のことをフォローしていた。彼の貴重な気遣いのシーンを見ていると、上空からフラフラと緩やかに下降して来たのは、五花海の鯉龍だった。
「いやぁ、皆さんお揃いで。よろしければ、護衛の方をお願いしたいのですが」
これまたペイターと同じく、五花海自身は無事だが機体の方はボロボロと言うパターンだった。どうやら、想像以上に解放戦線は手練れが残っているらしい。
彼を撃墜したACも近くにいるかと思い、スキャンを掛けたが見当たらなかった。別の場所に援護に向っているのかもしれない。
「ふむ、ご友人達の安否が気になりますね。特に、レッドの方は機体反応が消失しているのが気になります」
「生きていれば、連絡があっても良い筈ですが」
五花海の言う通り、ミシガンから教育を受けたレッドならば、安否の確認の重要さは分かっているハズだ。それが出来ないということは、本人に何かしらがあったのだろう。
直ぐにでも援護に駆け付けたい。しかし、負傷した3機を守らなければならない。ブルートゥはレイヴンに連絡を入れた。直ぐに応答があった。
「アレ? ブルートゥ、どうしたの?」
「ご友人。今は、大丈夫ですか?」
「うん。おじいちゃんに勝ったよ!」
お爺ちゃん。ということは、解放戦線のトップであるドルマヤンを撃退したということだろうか? 彼女の手が空いているならば、好都合だった。
「申し訳ありません。付近にレッドがいないかを探して貰えませんか? 彼と連絡が取れないのです」
「オッケー!」
彼女は直ぐに快諾をしてくれた。これで、心置きなく負傷した3機を護衛しつつ撤退できる訳だが、ザイレムの攻略を放棄することにも繋がりかねないと考えていた。
ここに乗り込んで来た時は無人機やドーザー達からの手荒い歓迎もあったが、今は残骸が散らばり荒涼とした雰囲気に包まれていた。
「ふむ。カーラ達からのご歓迎はここまででしょうか。カエサル、貴方はどう思いますか?」
『知らん!!』
声を上げたばかりの彼は、非常に喧しく攻撃的でもあった。もしも、レイヴンやエアと引き合わせたらどの様な会話をするのだろうか?
そんなことを考えていると、この場が戦場であるにも関わらず。心は浮き立つばかりであった。
~~
時間は少しばかり前後する。復活したドルマヤンの動きは、今までに相手をしたことが無いタイプだった。だが、レイヴンはこの動きを知っている。
『レイヴン、これは』
「うん。私と同じ動き方」
相手の思考を聞き取り、その上で行動を選択する。フロイトは蓄積された経験と天才的な感で近似的なことを行っていたが、ドルマヤンの場合は本当に同条件で戦っているのだろう。なので、AC戦闘と言うよりも互いに高速での思考合戦が繰り広げられていた。
こういった場合、様々なシチュエーションを体験して来たドルマヤンは幾通りもの選択を瞬時に用意できるので、レイヴンの動きを誘導しながら立ち回れていた。
「うぉおおおお! セリア! 見ていてくれ!!」
HAL826という最新鋭の機体に、旧式のACが肉薄している。互いにコーラル粒子と闘志を撒き散らしながらの格闘戦が続く。
互いの思考を読んでは、都度に行動を変化させていく。流動する思考の流れを制御し、瞬時に行動を変える反射神経が物を言うやり取りの中、アストヒクが振るった、パルスブレードが『IB-C03W4:NGI 028』シールドユニットを切り裂いた。
『命中させますか…!』
「ふん!」
レイヴンも返す一撃で『IB-C03W2: WLT 101』を振るうが、容易く避けられる。見てから避けたのではなく、予め振られることが分かっての回避だろう。
攻撃がどの様に来るか。という軌道まで含めて、相手に思考が漏れているのは、正にレイヴンが普段見ている世界の反応だった。だから、彼女は直ぐに次の手を打った。
「む!?」
振り切った腕を跳ね上げる様にして動かして、アストヒクのパルスブレードを叩き潰した。だが、ドルマヤンも次の手を読んだのか、瞬時にアサルトアーマーを展開した。コーラル粒子を用いて展開された為、パルス爆発は真赤に染まっていた。
咄嗟に回避行動をとったが避けられる物ではなく、HAL826に少なくないダメージが入り、姿勢も大きく揺らいだ。そこに叩き込まれたのは銃撃でもミサイルでもなく、BASHOフレームの堅牢な拳だった。
『素手で殴って来るだなんて!』
【だが、避けれんだろう?】
銃撃は銃口から視線まで含めて、彼ら同士ではあまりにも回避しやすい代物だった。故に、どんな機動でやって来るか直前まで読めない格闘攻撃は非常に回避しにくい物だった。そして、それはドルマヤンも同じだった。
「だったら、こっちも!」
先程、コーラルアサルトアーマーにより干渉を受けた為か、ブレードが展開できなかった為、レイヴンもまた素手で殴り合っていた。
互いのマニピュレーターが拉げ、装甲が凹み、衝撃が内部を揺らす。お互いにコーラルをオーバードーズしていると言っても限界があり、先に音を上げたのは……加齢で体力の衰えていた、ドルマヤンの方だった。
「ぐ、うぬぬ……」
「うぅ……」
『レイヴンがここまで追い詰められるとは』
動きが明らかに鈍くなった所で、彼女に目掛けてミサイルが飛んで来た。こんな状態でも避けられるが、その後にまでは気が回らない。
見れば、駆け付けていたキャンドル・リングがアストヒクを担いで猛スピードで逃走していた。
【レイヴン! 勝負はお預けだ! 君のことを見逃す代わりに、帥父は回収させて貰う!】
態々、言わなくとも伝わるだろうと踏んで。心中だけで呟いていた様だ。
実際、先のアサルトアーマーの一撃で武装を展開できなくなった彼女には、追いかける術がなく、彼らを見逃す他なかった。
そして、暫くした後。ブルートゥからの連絡を受けて、彼女がレッドの捜索に乗り出そうとした時である。再び、通信が入って来た。
「戦友。派手にやってくれたようだな」
「あ、ラスティ! 何処に行っていたの?」
「色々と用事があってね。それよりも君に伝えたいことがある。ベイラムのパイロットが怪我をして気絶している。ツィイーが今介抱をしているから、2人まとめて保護して欲しい」
『つまり、ツィイーさんが投降するということで?』
一緒に逃げないということは、ツィイーが投降することに他ならない。エアの声は聞こえていないが、補足する様にラスティが付け加えた。
「ツィイーは投降する形になるが、戦友。君の口利きを頼む」
「おっけー!」
『そうですね。ウォルターに相談しましょう』
程なくして、座標のデータが送られて来た。レイヴンが彼女達を迎えに行って、保護した矢先。カーラの降伏宣言が、ザイレム中に響いていた。