『師匠がラスボス』って燃えますよね?ね?
宜しくお願いいたします。
「グレイマッド殿。これにて我ら王国の勝利ですな!!ガッハッハッハッハ!!!!」
「……そうだな」
小高い丘。そこから見下ろす様に戦況を観る。
背を向け退散する敵国の兵。それを追う我が国の兵。
この状況に成れば、覆ることはまず無い。
我が国の勝利を確信した僕は、ため息を漏らし隣に居る国王に言った。
「もう帰らせて貰う。僕が……ここに居る意味が無い…」
「そうですな。
威勢よく笑った為に唾が飛び散る。
全身を包むフルプレートに付着する音が耳に入る。
全くもって汚らしいものである。
「では」
踵を返し、僕は帰路に着こうとした。
そこ後方から国王が大きな声でこう言った。
「いい加減その重々しい兜を脱ぎ、酒を交わしたいがね!!」
「生憎、僕の顔は古竜の炎によって焼かれている故……。ヒトには見せたくないんでね」
「そんな言葉を吐けるモノはオマエしかおらんな!!なぁ『古竜狩り』よ!!」
◇◇◇◇
「はぁ──ー」
深い深いため息を漏らし椅子に座った。
王国の城。その一室に僕は居る。
「ん──。好敵手が居ないこの世は……つまらんな」
事の始まりは、九十年前に遡る。
僕はこの世界に転生した。剣と魔法、魔物にドラゴン!!!胸が躍った、ワクワクが止まらなかった。
しかし僕は、聖剣の担い手では無かったし、大魔法使いの従者でも無く、王族・貴族の血族でも無かった。
普通の農民。普通の人間だった。
「そりゃないだろぉ!!!」と発狂したのが、自我という自我を取得した3歳の頃だ。
そこからは、血が滲むような。いや、血が溢れ出るほど稽古をした。
「突然どうしたの?騎士にでもなりたいの???」と薪を抱える母の冷笑を受け止め、「オマエは農家のセガレなんだよぉ!!!!」と鍬を振るう父からの
その甲斐あって僕は、十歳の頃には満足に武器を振える様になった。
それから逃げ出す様に家を出、街や都市をうろつき、名を売り始めた。
そして僕に転機が訪れた。それは各国の総力を挙げた『古竜狩り』であった。
この世界は、一匹の古竜が多くの土地を独占し、人間や亜人、魔物や動物は追いやられた。
古竜の力は圧倒的で、大きな口から放たれる炎のブレスは都市を焼く程だ。
つまるところ『古竜狩り』は、弱種族から古竜への下剋上だった。
「え!?あの古竜に挑むの??カッケー!!!」と僕はその列に並んだ。齢十五の少年は第一次古竜狩りに参加したのだ。
結果はボロ負け。コテンパンに負けた。
僕は運良く重大な傷を負わなかった。
そして第二次古竜狩り。それも大敗で終わった。
その際僕は顔を焼かれ、壊死した左脚を切り落とした。
そこから僕は山に籠った。
この世には「損傷した身体を治す魔法が有る」と耳に入れ、まずは体の修復と言う事で文献を漁った。
魔法を使った事が無かった僕にとって本は、師匠の様なモノだった。
初等魔法から始まり、中級。そして魔法を自力で編み出せる様に成るには、八年の歳月をかけた。
自作の魔法で傷を完治させ、次は古竜の鱗を断ち切る為に剣技を練り直した。
そして顔を焼かれてから十三年後。僕が二十八歳の時、第九次古竜狩りに参列した。
僕の魔法・剣技は古竜に有効だった。しかし圧倒的に火力が足りなかった。
『火力が無い』。それは長期戦を現した。そうなれば魔力が底をつき敗北する……と。
その事を学んだ僕は離脱し、再び山に籠った。
思うような火力を再現出来ないまま一年経ったある日、僕に天啓が舞い降りた。
『ならいっその事、長期戦に対応すればいい』
古竜の心臓は、鼓動を打つたび魔力が生成される。つまり古竜の身体は、魔力で満ち満ちた最上級の『補給食』だと──
第十次、第十一次古竜狩り。
それにて、切り取った古竜の肉片を摂取することで、僕自身の魔力が回復するのを確認した。
研究の為にソレを採取し早々と離脱した。
山に帰るなり研究に没頭した。
三年後。目当てのモノが完成した。
古竜と同じく『鼓動を打つたび魔力が生成される心臓』を──
第十三次を待たずして、僕は単独で古竜に戦いを挑んだ。
十日間の激戦。
それは僕が心から待ちわびていた戦いそのものだった──!!
遂に僕は古竜の首を落とし、その心臓を喰らった。
単独で古竜を殺した僕には数々の異名が付いた。
『
それからの展開は早く、各国・各種族が古竜の土地を奪取しようと躍起になった。
その際僕は、王国側に付いた。理由は簡単だ。金払いが良かった。
古竜が死んでこの五十年余り……宿敵という宿敵は現れず、僕の心は色を失った。
ここ最近は、国家や種族の対立ばかりだ。
全てが腐ってしまったんだな、と感じた。
その原因は、古竜を殺した僕にあるのかも知れない。しかし、腐っているモノを拾い上げる程、僕は親切な人間では無い。
「新たな……僕を越えるような風が…必要なのか……」
ふと鏡を見る。
兜を脱いでいるので、そこに素顔が写る。
ずっと変わらない顔。魔法で顔を治したから……二十三歳の時か。
少し長い灰色の髪。薄い青の瞳。亡き母に似た整った顔。
身体も二十代で止まっている。
その所為なのか、精神も止まっている様に度々感じるのだ。
「風……と言っても弟子を取る?この僕が?」
鏡の僕は不満そうに言った。
「僕が弟子を取り、弟子にこの世に蔓延する瘴気を払わせる。そして最後に……弟子と戦う…?」
よくゲームで見る『師匠がラスボス』という関係。アレ?これ凄く良くないか??
「ライバル……好敵手を育てる……?あぁ面白そうだ…!」
「やるからにはカッコよくしたいな……。半年程度、稽古を見て去る……良くないか?」
「わぁ!!なにそれカッコいいぞ!!!じゃあ僕は魔王だな!!!」
気色の悪い自問自答し、結果が出た。そして賽は投げられた──
『沢山の弟子を育てこの世を正し、願わくば僕の好敵手とする』
と、なると…今の王国から離れなければならない……。僕の死を偽装するか……。生憎、死体は戦場に山ほどある……。
そこからは早かった。
戦場まで転送し遺体を一つ拝借して、自室に戻る。
その遺体の傷を完璧に癒し、顔に火傷跡を魔法で付ける。
椅子に座らせて喉をナイフで掻き切り、机の上には遺書を用意した。
内容はこうだ。
『好敵手が居ない世は酷く悲しいものに成った。国王よ許せ。これが私の、最期の我が儘だ』
完璧だ──!!
これならばこう思うだろう。『古竜狩りは退屈の余り自死した』と──
いつも着込んでいる愛鎧は、置いて行く事にした。
身元バレはしたく無い。そんな浅はかな考えによるものだ。
僕は兜を持ち言う。
「いつの日か…僕の弟子が、オマエを着る日が訪れるかもだな……。ありがとう……。一緒に古竜と戦った戦友よ」
それを机。遺書の隣に置き、窓に手を掛ける。
「じゃあちょっくら師匠になって、魔王になってくるわ」
いかがでしたでしょうか?
誤字脱字など有りましたら報告お願いします。
今回も突拍子も無く書いていきますので、宜しくお願いします。
古竜狩りですが、悉く敗北しています。
通常は、少しチョッカイをだして1~2割の死者を出して退散します。
本文に書いていませんが、第八次古竜狩りでは7割という膨大な死者を出し、再編までに時間が掛かりました。
それ以来は、死者が1割を超えたら退散……と。
古竜にとっては、食事(別に摂らなくてもいい)がワザワザ眼前まで来てくれるので、報復や先手は打ちませんでした。強者のよゆう、というヤツです……。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
では、また~