キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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10話目です。
楽しんで読んで頂ければ嬉しいです!!!!


第10話 与太話

 僕は王国を出、東北東に進んでいる。

 その土地の美味しいモノを巡りつつ、半ば観光の様に一ヵ月間、時を過ごした。

 王国から逃れる、という目的もあった。

 

 幾ら偽装工作はしていても、ネズミの様に逃げ回っていたら勘付かれるだろう。

 しかし、その逃亡はここ最近、意味を無くした。

 王国が滅んだのである。

 

 安息期を経て、再び戦の火は燃えだした。

 しかし死者が山程積まれる戦など無く、国王の逃亡によって無血で終わった。

 この王国を討ち果たした(?)国こそ、僕が現在いる<スーブモンテ竜王国>である。

 

 スーブモンテ竜王国は少し面白い国で、国王と『竜血帝』が国を治めている。

 竜血帝は竜王国最強の槍で、古竜亡きこの五十年の間、その名を貫いてきた。

 

 で、その竜血帝が僕の目の前に居る──

 

 小麦の収穫の時期を終え、息が白くなる季節。

 街道から少し離れた所で、僕らは焚火にあたっていた。

 

「あー寒寒(さむさむ)……。毎度この季節は、ションベンのキレが悪くて困る…」

「あ、分かる。体の衰えを感じるよな」

「ウルセェ灰狂い。オマエにだけは言われたくないな」

 

 そう指さして言う壮年期の男は、篝火に再度手をかざす。

 この男の名は<ヘルマン・サング・ドラコーニス>と言う。竜王国では、『竜血帝』と言われている。

 僕と対称的な大柄な身体と、逞しい筋肉、太い首。白髪が混じる短髪に、整えられた髭が特徴だ。

 

 僕は、()()()()の彼に「会えたらいいなぁ」と軽い気持ちでいたが、こうも簡単に会えるとは思ってもいなかった。それ故、今なお驚いている…

 

「よし、もう良い頃だろう!一緒に掘るぞ!!」

 

 僕は焚火を蹴散らし、熱々の灰や燻る木々を素手で退かし始めた。

 

「相も変わらず……まぁいいさ、手伝うぞ」

 

 その後、古竜狩りと竜血帝は、「熱っ熱っ」言いながら熱せられた地面を掘った。

 お互いの手は、熱により重度の火傷を負うが、瞬時に回復していく。

 そして遂に、厚い鉄製の鍋を掘り当てた。その中身は──

 

「おぉ美味そうな肉だ。猪か?」

「そうそう。川で落ちていたのを拾ったんだ。ラッキーだろ?」

「その食い意地は……何十年たっても直らんな……」

 

 厳選による厳選により、肉はイヤな味一つせず、香草と香辛料によって極上の料理に変わった。

 笑い話をしつつ、僕らは食事を開始した。

 

 懐かしきあの時の様に。

 一時パーティーを組んだあの夜の様に。

 

 しかしもう……あの頃のメンバーは、ヘルマンしか居なくなってしまった。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 ヘルマンが酒を持っていた。安い酒、だが、懐かしい。

 

「ほーお?それで今は、各地を渡り歩いて弟子を増やそうと……。それは何故だ?」

「言わん」

「はぁ?……まぁよい。…それで弟子は何人できた?」

「…一人だけ」

「……。なぁ、ウチに来ないか?オマエなら無名からでも一年あれば…。俺と同等の…」

「いや、遠慮するよ。国のしがらみには…もう十分だ」

 

 陽が沈み、辺りはより一層寒くなった。枝や葉っぱで簡単な壁を作ったので、風は防げる。暖かい。

 

「てかさ、よく僕と分かったな……」

「昔々に一度、兜脱いで見せただろう?その時の顔は、昨日の様に覚えているからな」

 

 ガハハハハと笑うヘルマンを見て、酒を飲む。

 

「そう言うオマエも、何故この国に?」

「観光と弟子探し……。この一か月間、収穫が無いんだ……。なぁ、誰か良いヤツ知ってるか?」

「ドアホ!!そんなヤツが居れば、我が騎士団が即採用しておるわ!!!」

「頼むよぉ~。僕には弟子取りの才能が無いんだぁ~助けてくれ~~」

 

 僕はヘルマンにダル絡みをする。

 観念したのか彼は息を吐き、ガサゴソとポーチを漁った。

 

「ほら。見せてやる」

 

 手渡してくれたのは、騎士団員補充の計画書であった。

 難しい単語や、承認サインの欄など…頭が痛くなってきた……

 

「この街道を進み、三叉路を北に行くとポートゾールと言う街に着く。そこで、騎士団補充と銘打った『入団祭』が開かれる。…オマエはそこの脱落者でも弟子に取るがいい」

「ポートゾール……祭り……初めて知った……」

「そんなんも知らずに放浪していたのか貴様は……。今年は参加者が多い。その分、ヒトも多く来るだろうし、露店も増える。弟子取るついでに遊びに来い」

「ほぉー、いいね。そうするよ」

 

 あぁ、そうそう。と彼は継ぎ足した。

 

「入団祭ではな、王国から手に入れたオマエの鎧を披露する事になっている。これで、集客モリモリよ」

「うわ、ひでぇ……僕の鎧を餌にするな」

「古竜狩りはもう死んでるからな。死人に口なし。何も聞こえん」

「こんやろぉ」

 

 僕はその計画書を彼に返し、脳内で予定を練った。

 

「あとオマエに、これもやるよ」

 

 ポンと渡させた巾着袋を、僕は受け取る。

 中身を確認すると、沢山の銀貨と小金貨が数枚入っていた。

 

「うわぁ!太っ腹!!ありがとうございます!!美味しいモノいっぱい食べます!!」

「食いモンに使うのかよ…まぁいいけどよ……」

 

 ヘルマンは燃え上がる焚火に向かって、淡々と呟いた。

 

「悔しいが……オマエは、俺たち人類や、亜人に至るまで、古竜の束縛から解放させた英雄だ。竜血帝などと俺は言われているが……あの古竜には勝てる未来は浮かばない……」

「おいおいヘルマン。一文無しを褒めても何も出ないぞ?」

 

 僕は小金貨を手に取り言った。しかし、僕の一言は彼に届かなかったようだ。

 

「オマエには……全てを裏切る権利がある。あの古竜を討ち果たしたからな」

「」

「もし、オマエが全てを裏切るのならば、俺はオマエに剣を向ける。俺は、(いびつ)でもこの世を愛しているからな」

 

 男は続ける。

 

「何の目的かは知らねえが、()()オマエを見逃してやる。だが、世界に牙を向けた時は話は別だ。俺は、俺の命を懸けてオマエを殺す。いいな?キニス」

「了解した、戦友」

「はっ…。ただの俺の……与太話だ。……真に受けるなよ…」

 

 そう言い終わるとヘルマンは立ち上がった。そして指笛を甲高く鳴らす。

 数秒後、空から一匹のドラゴンが風を立て、地に着いた。

 血の色のような鱗を持つドラゴン。小さい……伝令用だろう。

 

「もう戻らんと…サリィちゃんに叱られる……」

「誰だよ…当初の野望どおり、可愛い子ちゃんに囲まれて居るのか?」

「最初だけだ。……今は怖い姉ちゃんに尻を叩かれてるわ」

「マジか。見に行くわ」

 

 ドラゴンの鞍。そこに括り付けている甲冑を着るヘルマンは、僕に告げた。

 

「そういや、彼女の墓……赤いバラはオマエか?」

「そうそう。丁度通りかかったからな。やっぱり彼女には、赤が良く似合う」

「奇遇だな、俺も真っ赤なバラを供えてやった。生前良く親しんでいたからな」

 

 深紅のヘルムを被り、竜血帝となった彼は、赤いマントを翻した。

 軽々とドラゴンに乗り込む。

 最後に「またポートゾールで会おう」と言って飛んで行った。

 

 ドラゴンの羽ばたきによって消えてしまった火を再度付け直し、僕は座った。

 夜の闇と静けさに襲われる。

 木を焼べ、揺れる炎を見つめる。

 

 結局僕は、一睡もせずに朝を迎えてしまった。

 

 

 




お疲れさまでした。
いかがでしょうか?

キニスとヘルマン。オッサン二人が焚火を囲む話でした。
彼らのパーティーは、第十二次古竜狩りの後に結成しました。
面識はその前からあったそうです。

スーブモンテ竜王国については次回詳しく書こうと思っています。
ですが先にザックリ解説だけ。

竜王国の二角である『国王』『竜血帝』は指揮する兵が異なります。
それぞれが、それぞれの親分の命令で動きます。
基本的に敵地への戦いは、国王軍で行います。
しかし、安息期後の戦いは、国王の懇願を受けた竜血帝が、騎士団を派遣しました。
結果、敵国の主はすでに逃げ出しており、戦利品として英雄の鎧を受け取りました。

以上になります。
まだ次回も読んで頂ければ嬉しいです!!

では、また~
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