キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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楽しく読んで頂ければ幸いです……





第13話 蒼天の翼、クラリス

 四日も経てば彼との仲も良くなる。

 最初は寡黙な青年と思っていたが、案外おしゃべりな一面もあった。

 それは彼の幼少期に関係していると思う。

 

「九ッ……じゅ、十…!!」

 

 アルベールは僕が自作した懸垂用の器具から手を放す。

 生成魔法とはつくづく便利なモノである。

 足りないものを即席で作れるし、解体も容易だ。

 

「よし!三セット目終了!!午前の稽古は終わりだ」

「ハァハァ……はい…」

 

 肩で息をするアルベールに水を差し出す。

 それを受け取り、数回と分け、時間を掛けて飲み干した。

 飯や酒でも一気に摂取するのは危ないからね。僕がそう指導した。

 

「午後は接近術の稽古をするよ。剣はまだだね」

「じいさん…。どうして、先に…接近、術なんです…?」

「そりゃあアレよ」

 

 息が整ってきたアルベールを横目に言う。

 

「騎士団だからだよ。騎士団は民を守らないといけない。例えば…民から緊急の連絡が入るとする。どうやら……盗賊が襲ってきたようだ。キミは助けにいくだろう?」

「ああ、民を守る為の…騎士団だからな。最速で現場に行く」

「うんうん。で、到着した。()()()()()()()()()キミ達は後手に回っている。先手は打てない。そうなると──

「人質を取る…のか」

「正解正解。盗賊は幼女を盾に言うだろう。武器を捨て馬車を用意しろ、と」

「何故人質が幼女なんです?」

「別にいいだろ。例えだ例え」

 

 ゴホンと咳をして話を戻す。

 

「幼女奪還の為、アルベール。キミはどうする?武器を捨てるか?逆に剣を振るうか?……申し訳ないが、キミの剣が盗賊に当たる前に、幼女の首にナイフが先に刺さぞ」

「……答えは出てますね」

「まぁ、そういう事だ。あとキミは今後、室内、洞窟、荒野に泥地、森の中で戦う事になるぞ?果たして満足に聖剣が振るえるかな?」

「……」

「僕が言いたいことは、『使える武器を増やせ』ってこと。適材適所。この世の全ての戦には、それぞれ最適解の武器がある。それを状況に応じて選択する事が大切なのさ」

 

 僕は弓矢を作り構え、空を飛ぶ鴨を射る。急所に的中した鴨は、翼をはためかせ落下した。

 その後近くの木を狙い、一発放つ。パスッと音を立て、幹に矢が刺さる。

 

「ね?弓矢は鳥を穿てるが、木は倒せない。当たり前の事実だけど、とても大切なことなんだ」

 

 僕は仕留めた鴨の元に行き、拾い上げ戻る。

 一旦地面に置き、再度弓を木を狙い構える。

 

「ただし──」

 

 僕は自身と弓矢に強化魔法を付与し、指を放した。

 空を切る音。先ほどよりも強力な一矢は、木を軽々と倒した。

 

「強大な力ならば、その有象無象は一掃できる。……まぁつまりは……」

 

 火力(パワー)が一番大事と言った。

 一気にダサくなった。でもしょうがない。火力は正義なのだから。

 

 こうして僕のクソダサ講義は終わり、鴨を捌いて焼いて食べた。

 美味しかったです。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 食事を終え、近場の町に進もうと荷物を整理していた。

 そこに思いがけない人物から声が掛かった。

 

「そこの御仁、少し時間を頂いて宜しいですか?」

 

 馬に跨った二人組。黒いマント姿で、深くフードを被っていた。

 その一声を皮切りに下馬し、フードに手を掛けた。

 

「私は蒼天の翼騎士団。その団長のクラリスです」

 

 そう名乗る彼女は、細かく美しい装飾で彩られた兜を外した。

 とても綺麗な人で、薄水色の長い髪は結われており、紫水晶のような瞳が僕を覗いた。

 入団試験の際に遠目だが、その素顔は確認していた。

 しかし、こうやって間近で見ると恐ろしい程に認識が変わった。

 

「竜血帝と相まみえたアナタに興味を抱きまして、こうして入団祭を抜け出して参りました」

「……僕に?……彼じゃ無くて???」

 

 背を向け、この場からゆっくり退散しているアルベールの背中を指さした。

 

「……!?」「あ!アルベール君じゃないか!?僕だよ僕!覚えているだろう???」

 

 案の定、クラリスは面白い程に反応した。

 一瞬目を反らし口元が緩んだ。可愛らしい団長だこと。

 つうか、その横のモブ。オマエ誰だよ?場合によっては首を刎ねるぞ。

 

 クラリスの横。背の高く爽やかな若人は、アルベールの下に駆け寄った。

 旧知の友の如く、アルベールの首に腕を回し、その男は笑った。

 

「ルーカスさん……お久しぶりです」

「覚えてくれて嬉しいよ~。一年ぶりだね~元気そうで良かった!!あ、でも…試験に来てたっけ???」

「確かに居ましたよ、ルーカス。彼は最後まで剣を振り続けました。……我が騎士団の一員として、恥ずかしき言動です。訂正なさい」

 

 冷ややかに、甲冑の音を鳴らしながらクラリスはルーカスに迫る。

 

「……分かったよ、お嬢。悪いな、アルベール」

「いえ、目立った実力が無かった俺がいけないんです」

 

 ルーカスはポンポンと青年の背を叩くなり、クラリスに言う。

 

「じゃあ俺は、灰髪旦那の聞き取りをするわ!旦那…一本どうだ?」

 

 懐から取り出すは、タバコのケースだった。

 それも一個二個三個四個と様々な種類のタバコが出てきた。

 

「嗅ぎタバコ?噛みタバコ?パイプ?葉巻にシガレット。どれにする?」

「え……じゃあ……シガレット…で」

「ほいほい、はいドウゾ。では、タバコ嫌いなお嬢から離れますか、旦那」

 

 僕はタバコを貰いクラリスを見る。

 ルーカスを見下す様な、冷酷な視線を送っていた。

 タバコ嫌いじゃなくて、オマエ嫌いなんじゃないのか……?

 

 そうして僕とルーカスは、お二人の風下。

 しかもえらく離れた木の下で、タバコに火をつけた。

 深く吸い込み、ハァとため息交じりに吐きだしたルーカスは僕に言った。

 

「で?旦那は何者なんだ?」

 

 先程までの調子の良い姿は此処にはなく、クラリス以上に冷淡な視線を僕に向けた。

 警戒以上、敵視未満。そんな感じだ。

 

「何?コレが本心ってことか?」

「お嬢の為ならば、道化を演じるなんざ安いモンさ」

「大変そうだな」

「それはお互い様だ。()()()殿()?」

 

 僕は少し身構えた。

 まだ名を名乗っていないハズなのに、僕の名を知っている。

 竜血帝との遊戯でも、自身の名は明かしていない……

 ならば、僕の身の回りを探った、って事だよな…

 

「宿舎の台帳で旦那の名を調べた。あと他も……」

 

 そう言うとルーカスは調書をポーチから取り出した。

 

竜王国(ウチ)の硬貨は、他国と比べ純度が高い。その特性を利用して、直近の過去を洗った。旦那が竜王国に来てからの金のやり取りを、だ。だが…判らなかった。旦那は、竜王国(ウチ)の通貨を使用していたからな…。もし旅人ならば、他国の通貨が混ざるハズだが……そうでは無かった。一時、盗人だと案が挙がったよ」

「随分……ヒマそうで……」

「まぁウチはワケ有りでね。少しヒマなんで、部下を総動員して調べ上げたのよ」

 

 硬貨の純度率だって????そんなとこまで頭が回るワケ無いだろ!?

 クソォ…ヘルマンから貰ったお金が裏目に出た……

 正直に話すか……

 

「信じて貰えないと思うが──」

 

 僕はこれらを伝えた。

 

 古竜狩りの隠れ弟子であること(嘘)。

 弟子に技術の継承をしていること(本当)。

 竜血帝。ヘルマンの知り合いで、お金を恵んで貰ったこと(半分嘘)。

 

 それが上手くいくかは、全くの未知領域だった。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 彼にとっては、口からタバコが落ちる程、衝撃な内容だったらしい。

 自身を落ち着かせる為に二本目のタバコを取り出し、火を付けた。

 

「だ、だが…!しかし、それなら筋が通る……!竜血帝との一戦も、他団長の呟きも……!あぁ、信じよう。なんせ旦那は……アルベールから信用されているからな」

「アルベールの信頼が凄まじいな」

 

 何故か許された。

 これ以上面倒事に巻き込まれないと思うと、安堵の息が出た。

 この男、ルーカスと言ったか。やけにアルベールに対して熱が有るな……

 

「勿論だとも!!…ノーゼフさんが、自慢の息子の様に接して居たからな」

「ほぉー。失礼を承知で聞くが、そのノーゼフ氏は?隠居されたか?」

 

 その問いを聞いてルーカスは顔を上げた。

 タバコの灰を落とし、再度吸い直すと口を開いた。

 

「……亡くなった。アルベールと別れて数日後に。ある貴族が毒を盛りやがった…許せるワケがねェ…」

「貴族が毒を……」

「ああそうだ。ノーゼフさんは貴族出でよ…それが気に入らなかったらしい」

 

 首を何度も横に振りタバコをふかす。まるで嫌な過去を思い出すかのように。

 そして語った。

 

「ノーゼフさんが死んで、お嬢は後を継いだ。私が成るしかない、って言ってよ。今ですら、二十に満たないガキなんだぜ?……周りからの卑しい言葉に屈せぬ様に、傷つきながら立ってるんだ…」

「あぁ、だから『氷の女』なのか」

「そうだ。まるでゴーレムのように感情が無い。冷酷な女だとさ。……ふざけやがって」

 

 長いため息と共に、煙も吐かれる。

 その後、数秒の時を経て笑った。

 

「だが見ろよ旦那。お嬢が笑ってるぜ?あの時…村に療養していた以来の顔だ」

「ん~おぉ、本当だ。結構可愛いじゃん」

「おっと~旦那ぁ?手ェ出したらタダじゃ置かねぇからな?」

「へいへい。あ、僕の聴取はもう終わりか?」

「おぉ、そうだった。もう終わりで良いだろ。捏造しておくか?ただの一般人ってよ」

「大丈夫。そのままでいいさ。あっ……!!」

 

 聖剣関係で唐突に思い出した。ヘルマンに伝えたい事があったことを。

 

「どうした?」

「えっと…。キミは竜血帝に合う事は出来るか?伝言を頼みたいんだが……」

「団長経由なら問題ない。要件は?」

「それがな…生前、僕の師匠が口酸っぱく言っていたんだけどさ──」

 

 古竜狩り。かの英雄の『工房』には入らないで欲しい──

 

「『工房』だぁ?山に籠って技術を練り上げた、って聞くが……初耳だ」

「どこかに隠されてるらしいけど、そう簡単に見つからないと思う……。もし発見したら、竜血帝に管理して欲しいんだ」

「了解。必ず伝えておく」

「ありがとう」

 

 僕は彼にそう伝え、遠くから二人を眺めた。

 何か話している。楽しそうだ。

 

「旦那、春先にまた試験が行われるんだ。…大丈夫だと思うが、頼むぞ…。彼はお嬢の光なんだ」

「任せとけ!超絶一級品にして送り出してやる」

「……。すまない。そして、ありがとう」

「そう畏まるなよ、気持ち悪い。…なぁルーカス、葉巻を貰えないか?久しぶりに吸ってみたくて」

「!?あぁいいぜ。なら俺も吸おう。そういや、まだ聴取が終わってなかったわ」

 

 彼から葉巻を受け取り、指先から生じさせた炎でゆっくり火を付けた。

 こりゃあ葉巻が終わるまで聴取が続きそうだ。

 

 今日の午後の稽古はお預けにしよう。

 オッサンはオッサンらしく、彼らの青春の成就を願おうじゃないか。

 

 

 




お疲れさまでした。
いかがでしょうか?

今の時点でアルベールは16歳。クラリスは18歳です。
クラリスは歴代最年少で騎士団長となりました。
彼女の団は、他の団よりも規模が少なく、評価もボチボチなのです。それを覆そうと、日々頑張っている女の子です。

ルーカスは幼少期、クラリスの父であるノーゼフに拾われました。
その為、ノーゼフ亡き現在、恩返しもありクラリスを支えている柱でもあります。
クラリスを思うストレスで、ヘビースモーカーに成りました。
タバコ臭が大嫌いなクラリスに若干嫌われています。可哀そうな男。

今回はこれで終わりです。
次回も読んで頂ければ嬉しいです!!!

では、また~
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