誤字脱字など有りましたら連絡下さい。
楽しんで読んで頂けば嬉しいです!!
竜血帝の一声によって入団試験が始まった。
前回行われたポートゾールの時とは異なり、実にあっさりと開幕した。
ベリタスと言う地もあり、多種多様な種族が騎士団になるべく志願している。
当然だが人間と亜人種は身体つき、秀でた特徴が異なる。
種族ごとに得意とする武器や魔法、戦法がある。
ポートゾール時は人間が九割を占めていたが、今回は四割程度だ。
アルベールには様々な攻撃手段を教えたが……少し不安になってくる。
今回も『壁』を再利用した円形の闘技場が会場だ。
相も変わらず、騎士団長が座するバルコニーは美しく装飾されている。
その一番左に居るのは『蒼天の翼』騎士団、団長クラリスだ。
彼女の後ろには、タバコの従者であるルーカスが腕を組み志願者を見ていた。
そんな彼は観客席に居る僕を見つけたのか、手を大きく振った。
やめな???腕折るぞ???
その後、ルーカスは何度も指差しした。
クラリスの逆鱗に触れたのか、一発腹にパンチを食らわせ膝を折り視界から消えて行った。
どうやらアルベールの一戦目が始まったようだ。
酒の準備は十分だ。どうか、おいしい肴にしておくれ。
◇◇◇◇
一戦目が始まった。
冷たい空気だが空は雲一つ無く、これらか昼にかけて気温を上がっていくだろう。
アルベールは事前に選び抜いた訓練用の剣を構える。
相手は魔族。人間とほぼ同じ容姿だが、目の色や耳のとがり方、髪色に特徴がある。
そしてもう一つ。魔族は皆、魔力量が多い傾向があり、魔法の攻撃を得意とする種族だ。
彼は燃えるような赤い髪と眼をしている。
手には杖と魔導書。魔術師らしい身を覆うローブ姿だった。
「では、一試合目。アルベールとプカウスの試合を始める。勝利条件は、我々の判断および相手のダウン。全ての武器には殺傷能力を除いてはいるが、確実では無い。貴公らと結んだ誓約書を遵守する」
双方、武器を構える二人に監督役として二人の騎士団が付く。
その内の一人の監督官が慣れた口調で言った。
いくら武器の殺傷能力を削いだとしても、当たり所が悪ければ死んでしまう。
万が一の場合に備え、契約書と今回のように確認がはいる。特に一試合目は顕著であった。
「では…はじめ!!」
コールと共に、魔術師プカウスは杖に魔力を込め詠唱を始めると、杖に熱が帯びていった。
それと同時に魔導書に書かれている防御魔法を指でなぞる。
本来であれば魔法の同士使用は非常に困難な業だ。
しかし魔力の扱いに長けている魔族にとって、同時使用は容易なモノだった。
プカウスは杖による攻撃魔法と、魔導書による防御魔法により故郷では秀でた魔術師だった。
ベリタスの地までの数々の模擬戦も無敗で終わった。
剣一本携えたアルベールに対し、今まで同様に勝利で終わると思っていた。
だが──
「ハァ!?ックソ!!」
あろうことか眼前の剣士は、
その行動に対応する為、全ての詠唱を中断し、杖で剣を振り払う。
「なっ…!なんの真似を…!!グゥ!?」
今までにない行動。それに戸惑ったプカウスは強烈な衝撃を受けた。
手の甲で杖を叩き落としたアルベールは、その勢いのままに背負い投げをする。
舞う砂煙を浴びつつ、華麗に関節技に移行しプカウスを拘束した。
何度も抵抗したが、屈強な肉体と体幹を得たアルベールには効果は無かった。
監督役の二人は同時に手を上げ、アルベールの勝利と下した。
拘束を解き、地に倒れるプカウスに手を差し出した。
「もし詠唱を短縮していれば…俺の負けだったかもしれない」
「……。はぁ…少しキツイ事言うね」
「
すまない」
「いいんだ。これが戦場なら俺は死んでいた。自分が調子に乗っていたと、しみじみ思ったよ。目が覚めた」
手を取り立ち上がると、ポンポンと砂を落とす。
「この天才である俺を負かせたんだ。オマエ、勝てよ?」
「そのつもりだ。負ける気は微塵も無い…。ありがとう」
アルベールはそう言うと剣を拾いに歩んだ。
遠くに観客席。そこで美味しそうに酒を飲むキニスを見て微笑みながら。
◇◇◇◇
ポートゾールの際は二日に分かれて行われたが、今回の進み具合は異常だった。
三回戦で全て終わった。今回の参加者のレベルが明らかに高かったからだ。
各団長はこれまでの模擬戦を見て、その目星をつけた。
入団数が決まっている為、それ以上の摸擬戦は大怪我の恐れがあるとし、騎士団長と竜血帝によって終わりを迎えた。
騎士団員の出入りは、団によっては激しい所もある。
即戦力として使いたい。そう言った意図があるのだろう。
「次!3の12番!プカウス!!」
アルベールと戦った魔術師。プカウスが呼ばれた。
数歩前に出、緑の団長を見上げた。
「二つの騎士団からの勧誘!『緑玉の眼光』『漆黒の湾爪』『紫焔の逆鱗』」
そうアナウンスが入るなり三人の団長が拍手を送った。
黒髪細身で隈が濃い男、片目を隠す長い髪の女。そして不敵な笑みを浮かべ、顎に手を当てる大男。
複数の勧誘がある場合、受験者が決定する事が出来る。
三つの騎士団の勧誘は今まで無かった為、会場がどよめいた。
「緑の騎士団……。『緑玉の眼光』へ!」
それを言うなり、己の上司となる騎士団長に一礼をし、プカウスは列に並んだ。
一回戦で敗退したと言えど、彼の魔法への理解度は非常に高い。
勧誘があるのは妥当だろう。
もし彼がフリーの状態であれば、僕は声を掛けている所だ。
己の弱点を受け止める事が出来る。謙虚で才能ある者は、際限なく強くなる。
しかし彼は騎士団へと行ってしまった。無理に引き抜こうなどとは思わない。残念。
次はアルベールの番だ。彼の師匠ともあり、少し緊張している。
だがまぁ大丈夫だろう。三回戦い全勝したからな。
「次!3の13番!!アルベール!!!」
少し長い金髪を揺らしながら前に出る。
そしてバルコニーを見上げると、十の眼がアルベールを覗いた。
「……!?おぉ、こりゃあ凄い…!!五つ全ての騎士団からの勧誘!!『純白の天角』『漆黒の湾爪』『蒼天の翼』『緑玉の眼光』『紫焔の逆鱗』!!!!」
この闘技場は一気に静まり返った。
その静寂を打ち破ったのは、五人の団長。その祝福の拍手であった。
それを皮切りに一番の盛り上がりを見せた。
まるで竜王国に座する最強の称号。その二代目の幻影を夢見ながら。
しかしコレで終わらない。
まだ肝心な『選択』を終えていない。
歓声と喝采は徐々に消え、皆が彼の一言を待った。
そしてアルベールは、胸を張って告げた。
かつての約束を果たす為に。
◇◇◇◇
弟子が居なくなった僕は、また当ても無く歩いていた。
山の中腹。昼過ぎにベルタスを出立し二時間経った。
太陽は傾き、気温が下がりつつある。
ペースを合わせる必要がなくなったので、このまま峠を越えよう、と耽った。
その時──
「じいさん」と後方から声がした。
振り向くと、鎧を装備した馬に跨るアルベールがコチラに向かっていた。
何故馬を操れる?と疑問に思ったが…この子は田舎のボンボンだったわ。
当然、その程度の嗜みはあるのか……
馬を寄せ降り、付近の木に手綱を固定した。
そしてアルベールは十メートル程離れた所に移動し、口を開けた。
「じいさん…俺には、まだやらないといけない事がある…!!」
「?…君の目標は成就して…晴れて蒼の騎士団の一員と成った。それ以外に野望でも出来たのか?」
「あぁ。じいさんの弟子になってから色んな事を学んだ。それで思ったんだ。蒼の騎士団への入隊は…所詮ただの『過程』だったと…」
アルベールは背中に携えた聖剣を手に取り、引き抜いた。
その聖剣は確かに黄金に輝いていた。
「俺は…竜血帝を越えて、アンタを越えて……古竜狩りを越える。もっと強くなって…俺は──」
再び黄金の時代を創る──
と、言った。
『黄金の時代』。それは僕が古竜を殺した後に訪れた。
全ての種族・宗教が手を取り復興を目指した時代だ。
黄金に輝く麦畑。収穫した穀物を分け隔てなく平等に分け合い、名が付いた時代の事だ。
しかしそれは、たったの二年しか続かなかった。各国がその最中に力を蓄え、土地の取り合いの戦が始まったからだ。
彼は病弱で、よく絵本を読んでいた、と聞いた。
その黄金の風景は、著者によって様々に解釈される。アルベールが読んだ物は、随分マトモな物語だったらしい。
事実法国では、黄金の時代を否定している。異種族、異教徒と手を組むなど悍ましいと。
「……。僕が言うのも少し可笑しいが……地獄を見ることになるぞ?」
「…この剣を手に入れてから何となく分っていた…。俺は…何かを犠牲にしないと目的を成しえないって」
「そうか、その覚悟が有るのなら安心だ。…で、聖剣を僕に向けているけど…戦うの?今から?」
「あ、いや!ただ…じいさんに見てもらいたくて…。ついさっき輝く様になったからさ……」
「なんだ残念。だが良かったな。その志を維持するのは難しいと思うが、オマエなら出来るハズさ」
「…ありがとう」
アルベールは鞘に聖剣を仕舞うと馬の下に歩んだ。馬に乗り、手綱を握った。
僕はその姿に向かって手を差し出し祝福した。
「さぁ征け蒼の騎士!君の手で黄金の時代、その幕開けを──!!」
それを聞いたアルベールは、この言葉を心に刻んだのであった。
◇◇◇◇
それから僕は南下した。
いつも通り行く当ても無く、計画も無くただひたすらに。
もう一日、二日歩けばオロ・ファロス国に入る。
古竜の
暇つぶしでその山を眺めるのもいいだろう。
放牧が盛んな地帯だ。濃厚なアイスクリームでも食べに行こう!!
そうして僕は細道を進む。
辺りを見回すと、萌木色の新芽や雑草。遠くからは動物の気配を感じる。
春が来た。
もう少し経てば、穀物や野菜の種を撒ける時期だろうか。
「今年も豊作だといいな~。お腹いっぱいパンを食べたいな~」
その辺で拾った枝をブンブン振り回しながら歩く。
果たして三人目の弟子は、出来るだろうか……
お疲れさまでした。
これにてアルベール編は終わりです。
本来ならば、この位の話数で終わらせたいのですが、ミラ編はキニスと王国の関係もあり長くなっています……
その後の活躍は、ある程度進んだら『騎士編』として書きたいと思います。
3人目は決まっているので、どんどん書いていきたいと思います。
今回はこれで終わりです。
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。
では、また~