キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

15 / 20
15話目です。
誤字脱字など有りましたら連絡下さい。
楽しんで読んで頂けば嬉しいです!!




第15話 二人目の弟子、聖剣アルベール

 竜血帝の一声によって入団試験が始まった。

 前回行われたポートゾールの時とは異なり、実にあっさりと開幕した。

 ベリタスと言う地もあり、多種多様な種族が騎士団になるべく志願している。

 

 当然だが人間と亜人種は身体つき、秀でた特徴が異なる。

 種族ごとに得意とする武器や魔法、戦法がある。

 ポートゾール時は人間が九割を占めていたが、今回は四割程度だ。

 アルベールには様々な攻撃手段を教えたが……少し不安になってくる。

 

 今回も『壁』を再利用した円形の闘技場が会場だ。

 相も変わらず、騎士団長が座するバルコニーは美しく装飾されている。

 

 その一番左に居るのは『蒼天の翼』騎士団、団長クラリスだ。

 彼女の後ろには、タバコの従者であるルーカスが腕を組み志願者を見ていた。

 そんな彼は観客席に居る僕を見つけたのか、手を大きく振った。

 

 やめな???腕折るぞ???

 

 その後、ルーカスは何度も指差しした。

 クラリスの逆鱗に触れたのか、一発腹にパンチを食らわせ膝を折り視界から消えて行った。

 どうやらアルベールの一戦目が始まったようだ。

 酒の準備は十分だ。どうか、おいしい肴にしておくれ。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 一戦目が始まった。

 冷たい空気だが空は雲一つ無く、これらか昼にかけて気温を上がっていくだろう。

 アルベールは事前に選び抜いた訓練用の剣を構える。

 相手は魔族。人間とほぼ同じ容姿だが、目の色や耳のとがり方、髪色に特徴がある。

 そしてもう一つ。魔族は皆、魔力量が多い傾向があり、魔法の攻撃を得意とする種族だ。

 

 彼は燃えるような赤い髪と眼をしている。

 手には杖と魔導書。魔術師らしい身を覆うローブ姿だった。

 

「では、一試合目。アルベールとプカウスの試合を始める。勝利条件は、我々の判断および相手のダウン。全ての武器には殺傷能力を除いてはいるが、確実では無い。貴公らと結んだ誓約書を遵守する」

 

 双方、武器を構える二人に監督役として二人の騎士団が付く。

 その内の一人の監督官が慣れた口調で言った。

 いくら武器の殺傷能力を削いだとしても、当たり所が悪ければ死んでしまう。

 万が一の場合に備え、契約書と今回のように確認がはいる。特に一試合目は顕著であった。

 

「では…はじめ!!」

 

 コールと共に、魔術師プカウスは杖に魔力を込め詠唱を始めると、杖に熱が帯びていった。

 それと同時に魔導書に書かれている防御魔法を指でなぞる。

 本来であれば魔法の同士使用は非常に困難な業だ。

 しかし魔力の扱いに長けている魔族にとって、同時使用は容易なモノだった。

 

 プカウスは杖による攻撃魔法と、魔導書による防御魔法により故郷では秀でた魔術師だった。

 ベリタスの地までの数々の模擬戦も無敗で終わった。

 剣一本携えたアルベールに対し、今まで同様に勝利で終わると思っていた。

 だが──

 

「ハァ!?ックソ!!」

 

 あろうことか眼前の剣士は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 その行動に対応する為、全ての詠唱を中断し、杖で剣を振り払う。

 

「なっ…!なんの真似を…!!グゥ!?」

 

 今までにない行動。それに戸惑ったプカウスは強烈な衝撃を受けた。

 手の甲で杖を叩き落としたアルベールは、その勢いのままに背負い投げをする。

 舞う砂煙を浴びつつ、華麗に関節技に移行しプカウスを拘束した。

 何度も抵抗したが、屈強な肉体と体幹を得たアルベールには効果は無かった。

 

 監督役の二人は同時に手を上げ、アルベールの勝利と下した。

 拘束を解き、地に倒れるプカウスに手を差し出した。

 

「もし詠唱を短縮していれば…俺の負けだったかもしれない」

「……。はぁ…少しキツイ事言うね」

 すまない」

「いいんだ。これが戦場なら俺は死んでいた。自分が調子に乗っていたと、しみじみ思ったよ。目が覚めた」

 

 手を取り立ち上がると、ポンポンと砂を落とす。

 

「この天才である俺を負かせたんだ。オマエ、勝てよ?」

「そのつもりだ。負ける気は微塵も無い…。ありがとう」

 

 アルベールはそう言うと剣を拾いに歩んだ。

 遠くに観客席。そこで美味しそうに酒を飲むキニスを見て微笑みながら。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 ポートゾールの際は二日に分かれて行われたが、今回の進み具合は異常だった。

 三回戦で全て終わった。今回の参加者のレベルが明らかに高かったからだ。

 各団長はこれまでの模擬戦を見て、その目星をつけた。

 

 入団数が決まっている為、それ以上の摸擬戦は大怪我の恐れがあるとし、騎士団長と竜血帝によって終わりを迎えた。

 騎士団員の出入りは、団によっては激しい所もある。

 即戦力として使いたい。そう言った意図があるのだろう。

 

「次!3の12番!プカウス!!」

 

 アルベールと戦った魔術師。プカウスが呼ばれた。

 数歩前に出、緑の団長を見上げた。

 

「二つの騎士団からの勧誘!『緑玉の眼光』『漆黒の湾爪』『紫焔の逆鱗』」

 

 そうアナウンスが入るなり三人の団長が拍手を送った。

 黒髪細身で隈が濃い男、片目を隠す長い髪の女。そして不敵な笑みを浮かべ、顎に手を当てる大男。

 複数の勧誘がある場合、受験者が決定する事が出来る。

 三つの騎士団の勧誘は今まで無かった為、会場がどよめいた。

 

「緑の騎士団……。『緑玉の眼光』へ!」

 

 それを言うなり、己の上司となる騎士団長に一礼をし、プカウスは列に並んだ。

 一回戦で敗退したと言えど、彼の魔法への理解度は非常に高い。

 勧誘があるのは妥当だろう。

 

 もし彼がフリーの状態であれば、僕は声を掛けている所だ。

 己の弱点を受け止める事が出来る。謙虚で才能ある者は、際限なく強くなる。

 しかし彼は騎士団へと行ってしまった。無理に引き抜こうなどとは思わない。残念。

 

 次はアルベールの番だ。彼の師匠ともあり、少し緊張している。

 だがまぁ大丈夫だろう。三回戦い全勝したからな。

 

「次!3の13番!!アルベール!!!」

 

 少し長い金髪を揺らしながら前に出る。

 そしてバルコニーを見上げると、十の眼がアルベールを覗いた。

 

「……!?おぉ、こりゃあ凄い…!!五つ全ての騎士団からの勧誘!!『純白の天角』『漆黒の湾爪』『蒼天の翼』『緑玉の眼光』『紫焔の逆鱗』!!!!」

 

 この闘技場は一気に静まり返った。

 その静寂を打ち破ったのは、五人の団長。その祝福の拍手であった。

 それを皮切りに一番の盛り上がりを見せた。

 まるで竜王国に座する最強の称号。その二代目の幻影を夢見ながら。

 

 しかしコレで終わらない。

 まだ肝心な『選択』を終えていない。

 歓声と喝采は徐々に消え、皆が彼の一言を待った。

 

 そしてアルベールは、胸を張って告げた。

 かつての約束を果たす為に。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 弟子が居なくなった僕は、また当ても無く歩いていた。

 山の中腹。昼過ぎにベルタスを出立し二時間経った。

 太陽は傾き、気温が下がりつつある。

 ペースを合わせる必要がなくなったので、このまま峠を越えよう、と耽った。

 その時──

 

「じいさん」と後方から声がした。

 振り向くと、鎧を装備した馬に跨るアルベールがコチラに向かっていた。

 何故馬を操れる?と疑問に思ったが…この子は田舎のボンボンだったわ。

 当然、その程度の嗜みはあるのか……

 

 馬を寄せ降り、付近の木に手綱を固定した。

 そしてアルベールは十メートル程離れた所に移動し、口を開けた。

 

「じいさん…俺には、まだやらないといけない事がある…!!」

「?…君の目標は成就して…晴れて蒼の騎士団の一員と成った。それ以外に野望でも出来たのか?」

「あぁ。じいさんの弟子になってから色んな事を学んだ。それで思ったんだ。蒼の騎士団への入隊は…所詮ただの『過程』だったと…」

 

 アルベールは背中に携えた聖剣を手に取り、引き抜いた。

 その聖剣は確かに黄金に輝いていた。

 

「俺は…竜血帝を越えて、アンタを越えて……古竜狩りを越える。もっと強くなって…俺は──」

 

 再び黄金の時代を創る──

 

 と、言った。

『黄金の時代』。それは僕が古竜を殺した後に訪れた。

 全ての種族・宗教が手を取り復興を目指した時代だ。

 黄金に輝く麦畑。収穫した穀物を分け隔てなく平等に分け合い、名が付いた時代の事だ。

 しかしそれは、たったの二年しか続かなかった。各国がその最中に力を蓄え、土地の取り合いの戦が始まったからだ。

 

 彼は病弱で、よく絵本を読んでいた、と聞いた。

 その黄金の風景は、著者によって様々に解釈される。アルベールが読んだ物は、随分マトモな物語だったらしい。

 事実法国では、黄金の時代を否定している。異種族、異教徒と手を組むなど悍ましいと。

 

「……。僕が言うのも少し可笑しいが……地獄を見ることになるぞ?」

「…この剣を手に入れてから何となく分っていた…。俺は…何かを犠牲にしないと目的を成しえないって」

「そうか、その覚悟が有るのなら安心だ。…で、聖剣を僕に向けているけど…戦うの?今から?」

「あ、いや!ただ…じいさんに見てもらいたくて…。ついさっき輝く様になったからさ……」

「なんだ残念。だが良かったな。その志を維持するのは難しいと思うが、オマエなら出来るハズさ」

「…ありがとう」

 

 アルベールは鞘に聖剣を仕舞うと馬の下に歩んだ。馬に乗り、手綱を握った。

 僕はその姿に向かって手を差し出し祝福した。

 

「さぁ征け蒼の騎士!君の手で黄金の時代、その幕開けを──!!」

 

 それを聞いたアルベールは、この言葉を心に刻んだのであった。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 それから僕は南下した。

 いつも通り行く当ても無く、計画も無くただひたすらに。

 

 もう一日、二日歩けばオロ・ファロス国に入る。

 古竜の(しとね)があるアウルム山脈。今や禁足地となっている。

 暇つぶしでその山を眺めるのもいいだろう。

 放牧が盛んな地帯だ。濃厚なアイスクリームでも食べに行こう!!

 

 そうして僕は細道を進む。

 辺りを見回すと、萌木色の新芽や雑草。遠くからは動物の気配を感じる。

 春が来た。

 

 もう少し経てば、穀物や野菜の種を撒ける時期だろうか。

 

「今年も豊作だといいな~。お腹いっぱいパンを食べたいな~」

 

 その辺で拾った枝をブンブン振り回しながら歩く。

 果たして三人目の弟子は、出来るだろうか……

 

 

 




お疲れさまでした。

これにてアルベール編は終わりです。
本来ならば、この位の話数で終わらせたいのですが、ミラ編はキニスと王国の関係もあり長くなっています……

その後の活躍は、ある程度進んだら『騎士編』として書きたいと思います。

3人目は決まっているので、どんどん書いていきたいと思います。
今回はこれで終わりです。
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。

では、また~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。