キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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17話目です。
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第17話 聖女(痴女)

「騎士くん!!見てください!!春の虫、アオネハ蝶が交尾しています!!はぁはぁ…白昼堂々、人目を鑑みず……破廉恥ですわ…はぁはぁ…」

「虫に人間のモラルが分かるワケねぇだろ。…一生懸命、子孫を残そうと頑張ってるんだ。ほら行くぞ」

 

『虫の営み』を見ながら蝶を観察するレーネに僕は言った。

 今日はとても天気が良く、風も温かい。こういう時に沢山進んでおきたい所だけど…現実はそうはいかなかった。

 原因はレーネだ。事あるごとに寄り道をし、この様な状態になる。そのため、全く進めていない。

 

 だが、悪いことばかりでもない。

 時間を掛けて彼女を見れるので、稽古の内容がより具体的に浮かぶのだ。十人十色。一人一人にあった練習方法が存在する。

 国家の兵の育成などは、質よりも量を優先する為、稽古内容にパターンが少ない。その為、大きく伸びる者、あまり伸びない者の差がハッキリしてしまう。しかしまぁ、それは仕方のない事だと思っている。資金と時間が限られている為の教育・稽古方法なのだろう。

 

 だが僕の場合は異なる。個人でやっている為、細かいところまで拘りを持てるのだ。少数精鋭。しかも時間はほぼ無限にある。確実に一歩ずつ。それが今の僕の、稽古におけるモットーとなっている。

 そのおかげで、彼女の強さの根源を理解できた。そして察してしまった。レーネが今現在置かれている立場について……

 

「よしレーネ。…ここいらで模擬戦しようぜ?昨日僕が言った事を意識して…」

 

 そのことが分かったからと言って、何か変わる訳でも無い。今の彼女は僕の弟子だ。なら弟子なりに導くのが、師匠の務めだろう。なので僕はいつも通りの口調で、レーネに稽古を誘った。

 

「昨日言った『事』…!?そ、それは…私が騎士くんに、一撃与えられれば…人の……い、営みをご教授…」

「言っていない言っていない。脳内で僕のセリフを捏造するな。僕は『相手の行動を予測して攻撃しろ』って言ったんだ…」

「で、では!!その手に持っているモノは!?!?…『亜人の営み』では有りませんか!?……!!もしや、わ、私を…触手プレイで…!!」

「読んだら意外と面白かったんだ!!そういう意図は無い!!」

 

『亜人の営み』の著者、シュロゼガー・カーロリゼは人間と亜人の友好関係について、こう書き綴った。

 

 こと人間と友好的な種族であるエルフや魔人、ドワーフや巨人、獣人などの様々な種族が存在する。その種族は皆、人間との繁殖が可能な種族であると考察できる。しかし、巨人、小人などの繁殖例は実際に目にしていない為、要議論が必要である。

 一方、ゴブリンやオーガ等、忌み者と呼ばれる種族は、人間との繁殖は確認されていない。現に我々人類は、彼ら忌み者の体臭を悉く嫌う性質がある。忌み者の素材を使った服や財布など存在せず、また肉の利用など、どの国家、宗教、地域に掛からわず見られない。ゴブリン、オーガにとって我々人間は、食料、素材であって、また彼らが人間に欲情する様は見られなかった。

 つまり、人間と友好関係を築ける種族は、人間との繁殖が可能の説が濃厚であり、それは一昔前の古竜が原因とも考えられる。太古から古竜に苦しんだ様々な種族は、自身の子の生存率を高める為、多様な種族との関係を持ったと思われる。その際、ゴブリンやオーガなどの忌み者達は、生存戦略から外れ、繁殖の淘汰を食らった。その原因は不明。

 その為、第一次古竜狩りから英雄の登場まで、一度も忌み者は、我らの『古竜狩り』に参戦はしなかった。言語が一致しない、という可能性も有るが、繁殖の有無が一番の決め手であろう。

 

 驚いた。この一言に尽きる。

 実際に僕は第一次古竜狩りから参戦しているが、ゴブリンなどの忌み者は参戦して居なかったし、彼ら忌み者の討伐はとても喜ばれた。

 彼らの住まう洞窟。その付近は以上に臭いと感じる。それも、僕の遺伝子が『敵』と判断しているかもしれない。

 

「騎士くん?騎士くん!!」

「…!?あ、ごめん。色々と思い出してた…」

 

 レーネを見ると聖鈴を構え魔導書を浮かし、準備万全であった。

 まあどうであれ、この様にやる気に満ちた弟子を取るのは嬉しい限りである。

 

「じゃあ昨日の戦いを意識して…では、はじめ!!」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 僕らの模擬戦は中断した。開始する瞬間に森に響いた悲鳴によるものだ。

 ネーレと眼を合わせ、言葉を交わさずに合意した。助けに行くと──

 

「騎士く…いえ、お師匠様。まだ目標は見えませんが、お師匠様は救出をお願いします!!」

 

 細い道を全力で走るレーネは僕にそう言った。自身の身体を魔法で強化しているの為とても速い。それに合わせるよう、僕も彼女の横を走る。

 

「それは何故?君が救出しても良いじゃんか??」

 

 彼女の人となりは理解しているつもりだが、かなり意地の悪い返しをした。

 

「相手の数も、被害者の数も分かりません。ですが、私は一瞬ですが敵の気を反らすことは確かにできます。その隙を縫えるのは…お師匠様しかいません。そちらの方が救出の蓋然性が高いです!!」

「蓋然性って…頭が痛くなる言い回しだな……」

 

 こうしている内に木々は少なくなり、今なお聞こえる怒号が鮮明に聞こえてきた。2度3度曲がり、目的地へと到着する。

 大木の麓。血を流している者が3名。それを囲む男が5名。

 法国の兵であろうか?特徴的なバケツをひっくり返したような(ヘルム)に、群青色のマントがよく目に入る。ならば、血を流しているのは……あぁ、やはりそうだ。獣人だ。

 オロ・ファロス国と法国の丁度国境となるこの場所。その争いの原因はおおそよ理解できた。

 

「お師匠様!!お願いします!!」

「おう!!」

 

 レーネの影になる様に移動し、彼ら法国騎士の隙を見計らい、獣人の袂に転送する。その3名は同じ種族の様で、耳や大きな瞳、尻尾。猫の獣人(ワーキャット)である。

 腕を押さえる者、片耳を切られ血を流す者、腹部を貫かれた者。…最後に彼らが盾となり守っていた、泣きじゃくる子供。

 

「あ、あんたは…」

「助けに来た。僕に掴めるか?ここから離れるぞ」

「アンタ…法国のモンじゃ…ニャいよね…。娘に手を出したら…」

「んな事あるか……。ほら腕貸せ、オマエも…」

 

 レーネが法国兵のヘイトを買っているお陰で、脱出の準備が完了した。

 だがしかし……彼女への罵倒が尋常ではない。まるで…獣人以上にレーネを恨むかのように。

 

「てかチョット待て!!あの構えは本当にヤバい!!!!おいお前ら!!本気で僕は走るから…耐えろ!!」

 

 意識が遠のいていく獣人に声を掛け、僕は走り出した。

 あの構え。あの表情。レーネは本気だ。本気で法国兵を殺しにかかっている。彼女が持つ最高の魔法により消し炭にするつもりである。

 魔法の範囲外に出た僕は、獣人を置き振り返る。

 

 チリン──

 

 レーネの聖鈴の音と共に、法国兵を中心に白く輝く無数の槍が轟音を鳴らし地面から出現した。

 それは、聖属性の最高峰の一つであった。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 時は少し遡る。

 キニスが獣人の下にたどり着き、レーネは安堵のため息を漏らし、法国の兵と相対した。

 

「そんなに血相を掛けて、如何なさいましたか、シスター?…いや、そういう訳では無さそうだ…おいお前ら、ターゲットだ」

「あら、私をご存じで?」

「その聖鈴、魔導書。分かりますとも。我らの神を侮蔑したあの男。ブライブの娘ですね」

「私の父が考案した保険制度はいかがです?随分良く機能していると小耳に挟みましたが」

「アレは神からの天啓による賜物です。ヒトごときが民を操作するなぞ…悍ましい」

 

 血に濡れた剣をブンと振るい男たちは構えた。

 

「昔は六英傑の一人でしたが…今や異教徒、法国の汚点。斬首を以て終わらせます」

 

 おおおおぉおお!!と声を上げ、男たちはマルレーネに迫った。

 一方彼女は目を閉じ、膝を地につけた。左手は魔導書に触れ、これから発動する魔法の詠唱を大幅に省略させた。

 十分魔力を蓄えたマルレーネは聖鈴に魔力を移し、発動した。

 

 マルレーネの曽祖父。聖槍ガージスが生み出した聖属性最高峰の魔法。

 法国を作り上げた最初の六人の一人。その魔法は古竜を殺すべく生まれたモノ。古竜の殺害には失敗したものの、人間を殺すには威力は十分すぎるものだった。

 その魔法を受ける兵は、それほどマルレーネを怒らせた。派閥争いに敗れ、しかし法国の民の為に仕上げた保険制度すら奪われ、地を追われた父、ブライブの尊厳を取り戻す為の行動であった。

 

 チリン──

 

 曽祖父の得物であった聖鈴が鳴る。そしてマルレーネは口を開けた。

 

地下より出づる白雷の聖槍(イズ・ラ・ソンド・マグナ)!!」

 

 5人の兵の足元。凄まじい光が溢れその後、轟音が響いた。対象の硬度を無視する輝く聖槍が、無数に出現し突き刺さる。

 30秒間発動し、遂に魔力切れにて収まった。その辺りは砂煙に包まれ、木々は木っ端と化した。

 その発動主は小さく身を縮め肩を震わせていた。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

「ゲホ…ゲホッゲホ…」

 

 砂煙舞う中、僕は佇む。咳が出るのは仕方ない事だと思う。

 

「相変わらず…凄まじい魔法だ…。僕じゃ無かったら死んでんぞ…コイツ等…」

 

 足元には失神した法国の兵士が倒れている。皆無傷だ。僕がそうした。

 生成させた聖槍を剣で壊すパワープレイ。守備力無視の一槍でも対処方法は複数ある。聖槍を上回る魔力を込めて打ち砕けば良いだけだが、それが案外難しい。

 レーネに視線を送る。砂煙をかぶり美しい金髪は汚れ、地面に突っ伏し泣いていた。僕は彼女に駆け寄り、背中に手を置いた。

 法国の兵との問答を聞いていたので凡そ何故泣いているのかは理解できる。だが『彼ら』は待ってはくれない。

 

「泣いてるところ悪いけどさ…獣人たち、大怪我して今にも死にそうなんだ。僕は治癒魔法を他人に掛けれない。マルレーネ、キミが必要なんだよ」

 

 そう彼女に言うが反応が無い。砂埃を払い、後ろ襟を掴み持ち上げる。

 

「僕のお師匠、灰狂いは聖槍ガージスを評価していたぞ。キミの曽祖父だろ?世の為、人の為に生き抜いた英雄だってさ。キミの父も、法国に保険制度を与え、今なお沢山の人を喜ばせている。……侮辱された想いは、僕には分からない。だが、コイツ等と同等のクズには成らないでよ」

「……。だから…お師匠様は、こんなやつ等を…助けたんですか……」

「あぁそうだ。で、どうするよ?獣人を見殺しにするのか?()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 この言葉が彼女に刺さったのだろう。いままで顔を下げていたレーネが視線を上げ、獣人たちの方に目を移す。どうやら色々と整理がついたようだ。

 

「……。…助けます!!ですが…魔力が、有りません…!助けて下さい!」

「ヨシきた!今までの自身に別れを告げて、手始めに彼らを救ってこい!」

 

 かつての古竜狩りにて取得した魔力吸収(エナジードレイン)。その逆、魔力の受け渡しなど簡単に出来る。

 

「…ッッ…!?……」

 

 襟を離すとレーネは、地面に膝を付けた。口を袖で隠す彼女は我に返り、聖鈴と魔導書を持って獣人の方に駆けて行った。

 小さくなる背中を見つめてから僕は言った。

 

「さてと…。もう目を開けていいぞ」

 

 倒れる5人。その内の1人。煌びやかな腕章を付けた男の眼が見開いた。

 迫りくる聖槍を迎え撃ちながら、その男に耳打ちしたのだ。「もし面白い事を教えてくれたら、オマエだけを逃がしてやる」と。

 

「わっ…私は何を…!!」

「大きい声を出すな」

 

 僕は男の甲にナイフを突き立てる。必死に抑えた苦痛の声が耳に届く。

 

「あ、あの女を殺す…こと…!それが、私たち密使に課せられた使命…ぃ…ッ!!」

「『密使』?じゃあ、お前ら以外にも居るのか?」

「さぁな…詳しい事ガッッッ…!!」

 

 手の甲に刺さるナイフを力強く手首の方にスライドさせる。

 

「5部隊…!!…そのうちの3部隊は…全滅をッッ確認ッ…した…」

「ほー。あの雨の日に出会う前にもう、襲われ潰していたんだな。悪い意味で僕の思惑が当たったな。うん。で、次」

「お前たちのルートからッ…ファロスに向かう事が、ハァハァ分かった」

「そんで?」

「異種族を殺すのも…目的の一つ……。おびき寄せるために……利用したッッ…!!」

「はー。そういう事ね……」

「どうだ…!!面白かったか…!?お前も人間だろう!?異種族なぞ汚らわしい存在…!!人類の存続の邪魔と成る日が訪れる…!!あの古竜の様に…!!あの()()()()()()()()()()()…!!お前も、人類の味方に……」

 

 深いため息を漏らし、僕は言った。「面白くない」。そう一言、呟いた。

 

「待ってくれ…!!十分話しただろう…!!そうだ…改宗しよう…いやそうする…!!もう二度と…!!!」

 

 顎を掴み固定し、右手のナイフを頭に差し込んだ。その後、強力な治癒魔法を掛けながら手首をくねらせ脳をかき混ぜる。

 

「アッッ…!!ア、アッ、アアアッ……!!!」

「この状態なら何も記憶出来ないが…その神に選ばれた英雄が、お前に教えてやるよ。お前が信仰する神は…気色の悪い──」

 

 

 …………なんだぜ?

 

 

 あらかた愛弟子の精神を傷つけた『お返し』が済み、男の損傷を完全に治し終わるなり、僕は重い腰を上げた。

 マルレーネに言った「治癒魔法を他人に掛けれない」と言う発言は真っ赤の嘘だ。獣人を僕が治療しては意味が無い。彼女が傷を治すから意味が有るのだ。

 そう思えば、この体験は良い方向にレーネを導いたと思う。しかしまぁ、やり方には不満があるが……

 我が弟子に視線を送る。丁度向こうも終えたのかコチラを見ていた。僕も合流しようか…

 

 この地はオロ・ファロス領である。ならば、この国に裁かせるのが正解だろう。

 捕縛用のロープを生成し、男たちの腕や手首を縛り固定する。ナイフで縄を切る。その際、気づいてしまったのだ。

 

「あヤベ…!」

 

 立ち上がり、ふと思い出した。旅荷物を置きっぱという事に。

 

 盗まれていないことを祈ろう……

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 オロ・ファロス領。しかも犬猿の仲である法国とは目と鼻の先という事もあり、国境を守るファロス兵を見つけるのは容易であった。

 他種族国家の為、兵は魔族や獣人などで編纂させている。僕個人的な意見だが、種族によって得意とする戦法が変わるので、それに応じた武器や服装など、多様性があって見ていて楽しい。武器や戦術マニアという一面がある所為でもある。

 法国の者共は、ファロス兵に受け渡し謝礼として僅かな金を貰った。その後、応援にて駆け付けた部隊が獣人たちを連れて行ってしまった。

 

 その際、猫の獣人(ワーキャット)の子供。少女がレーネに近寄った。

 

「人間のお姉さん!助けてくれてありがとう!!」

「いえ…私は何も…」

 

 たじろんだレーネの背中を押す。一瞬振り返るが決心を固め、少女の目線に合わせるよう屈み口を開いた。

 

「はい。貴方が元気そうで、私は大変嬉しいです。…貴方の、遠く遠く果てしない旅路に、溢れんばかりの祝福を──」

 

 腰に携えた聖鈴を手に取り、天高く掲げ鳴らす。

 彼女を中心として、仄かな黄金の光が覆った。とても温かい。

 

 その聖鈴の名は『祝福の温和』。その持ち主はかつて僕にこう言った。

「この時代……僅かな温もりしか無いからこそ、皆で分け与えるんだ。そこに、人間も亜人も何も…差は無いだろう?」と。

 法国の汚点と呼ばれた一族の末孫は、今もこうして聖鈴を鳴らす。

 

 僕とってその様は、とても眩く、美しく見えた。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 ファロス兵から「聴き取りをしたい」と頼まれ、近くの関所まで同行した。真新しい石造りの城で、どうも近年に完成したものと聞く。

 僕らの聴取は簡単に終わり、担当してくれた犬の獣人(ワードック)の兵士長に僕は言った。

 

「やはり…レーネ、彼女の入国は難しいですよね」

「そうですね…。その身分を隠せさえすれば容易と思いますが…。我々は法国との関係上、宗派の知識は有りますが、ファロスの民となると…そうはいきませんね……。法国の活動は年々激しくなっていますから」

「??? あの…それは…私が裸になれって事ですか…?…恥ずかしい…!!」

「ん???」

「あーごめんなさい。このシスター、脳みそを虫にやられているんです」

「あぁ、そういう……」

 

 高そうな椅子に座り、真っ白い石机に対面して僕らは話す。

 はやり彼女の関係上、入国は難しいようだ。ならば別ルートで入山するしかないのか?…果たして山道は整備されているのだろうか?不安が募る。

 そもそもの話、僕は『彼女がどうして入山したいのか』の理由を知らない。教えてくれない。

 なので僕が彼らを説得しようとしても『理由』が無い為、この話し合いは平行線となっている。しかも当の本人は顔を手で隠しボソボソ呟いている。なんでや。

 

「話が脱線してしまうのですが…あの法国の兵。いとも簡単に情報を話してくれました。私共に受け渡す前に、何か致しましたか?」

「あー」

 

 身に覚えしかない。あの、脳みそグリグリ攻撃が余程効いたのだろうか。

 

「詳しくは聞きません。ですが、その情報は我が国にとって貴重なモノでした。……。お返しと言ってはアレですが…あなた方に私の証書とブローチをお出ししましょう。気休め程度にはなるでしょう」

「いいのか?…その、色々とさ…」

「大丈夫です。私、犬の獣人ですから『鼻』が利くんですよ。……ここ笑うポイントですよ?」

「がはははは(棒)」

 

 かくして僕とマルレーネは正式にオロ・ファロス国に入った。

 関所の大きな門を抜けると、壮大で白く美しいアウルム山脈が微かに見えた。その由来は『夕時になると太陽光を反射し、黄金に輝いて見える』。まだ山脈まで遠いので、そのようには見えない。薄い蒼のベールに包まれた雄々しい山だ。

 胸には兵士長からの薄緑色のブローチが。商人などが行き来する関所では、特に信頼できる者にはこの様にブローチを与えるらしい。

 僕らの荷物は、ファロス兵が回収してくれていた。勿論、先程ブローチと共に貰った証書はバックの中だ。

 

「山脈までまだ遠そうだ。頑張れるか?レーネ」

「勿論ですとも。先ほどの少女とお話も出来まして、過去の私とはお別れをしてきました。これから先、私は──

 

 人類だけではなく、全ての種族に祝福を与えます

 

 と、僕に言った。

 聖女マルレーネ。その大きな第一歩。それが今日であった。

 

「わぁ…こんな事まで…はぁはぁはぁ……不純すぎます……いけません、いけませんわ……」

 

 某本を読みながら歩くレーネは、そう漏らしながらページをめくる。

 

「あっ!そういえば騎士くん!!私の宗派に入りませんか?まだ私しかいませんが、数学好きの父が考案した保険制度を取り入れているんです!将来安定ですよ?」

「だれが入るか…。それと僕の前で、保険関係の話は辞めてくれ。頭が痛くなるし…昔々のトラウマが蘇る……」

 

 今日と今日とで、彼女は元気そうだ。だれか僕を助けてくれ……

 

 

 




お疲れさまでした。

レーネの父は数学好きで統計学を用いて生命保険を考案しました。ですが、神を絶対とする法国の癇に障り、難癖をつけ処刑されました。その為、その娘に密使がついていたのです。

この話の元ネタは、アレクサンダー・ウェブスターとロバート・ウォーレスと言う二人の牧師になります。彼らは統計学を使用し、生命保険基金を設立しました。1744年のお話です。
それが人口統計学の基礎となりその後、人口統計学はダーウィンの進化論の土台を築き上げました。面白いですね。

今回は以上になります。
この様に、僕の趣味をぶち込んだ小説になりますので、今後も楽しんで読んで頂ければ嬉しいです!!!

では、また~

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