キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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18話目です。
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第18話 オロ・ファロス国 禁足地

 3、4日間歩き続け、ようやくアウルム山脈の麓、王都オロ・ファロスに到着した。

 アウルム山脈に由来があるように、『オロ・ファロス』という名前にも所以がある。『オロ』は不明だが『ファロス』と言う単語は、魔族の古い言葉で『灯台』だという。

 灯台といえど辺りには海が無い為、船を導く為のモノでは無い。アウルム山脈の向こうに座する古竜を見張ってきた塔だ。

 

 何度も古竜に壊されながらも再建し、雄大な山々にも負けない程の大灯台となった。

 80年ほど前の古竜狩りでは、この地帯が前哨基地となり数多くの猛者が集った。その名残もあり、オロ・ファロス国には高名な戦士の子孫が多く現在もその才能も持って、()()()()()()()()()

 

 まぁ色々とメンドクサイ事があるが僕には知ったこっちゃあ無いし、国の行く末なんて微塵も興味が無いのだ。いつか人も死ぬように、いつかは国も滅びる。それでも生命は芽吹くし、新たな国家も誕生する。たしか…諸行無常ってヤツ…

 

 そんなこんなで、王都に到着した僕らは食事を始めた。レーネの心配もあったが、関所で貰ったブローチの効果が良く出ていて、ここまで彼女に加わった危害は一切無かった。

 

「うぉ…騎士くん!騎士くん!!見てください!!これが牛の心臓なんですって!!!」

「そうだな。歯ごたえがあって美味しいな。クソッ…!僕にも高度な料理スキルがあれば…!!」

「騎士くんの手料理()美味しいですよ~」

「おい貴様、このお店を愚弄しているな?今すぐ謝れ」

 

 マルレーネはスプーンの上に、小さく切り刻まれたお肉を乗せ言った。

 ドワーフがメインで構成された肉調理屋。(ちまた)で有名だったので入店した。灰色の石作りの落ち着いた店内には、焼き・煮・グリルなどの様々な香りが充満していた。

 この店では特に、内臓系とお肉を煮込んだシチューが評判で、僕らは迷わずにソレを注文し今に至る。料理名はこうだった<肉と内臓(モツ)の煮込みシチュー>。

 ここで疑問が湧くだろう?何故この変態娘は的確に、肉の部位を言い当てられるかを。それは…

 

「おっ!!(にい)ちゃん!!今、食ったのが豚の肝臓だ!!ガハハハハ!!!」

「マジかよ…。なんでこんなにもクセが無いんだ……!?」

 

 ワケあって、この店の店主にえらく気に入られ、シチュー作りの大変さ、スプーンに取った肉の部位を教えてくれるのだ。レシピを教えてくれませんかね…?

 腕を組み、美味しそうに食べるレーネを見て上機嫌なドワーフの男は更に話を続けた。

 

「この地域では酪農が盛んでなぁ~、その関係で新鮮な内臓も仕入れられるんだ!!」

 

 ほー。だからこんなにクセが無く美味しいのか…。いや…丁寧に処理できる技量によるものか…!!素晴らしい!!

 

「そんでもよ、しっかり処理しても匂いが取れにくい。だから小さく切って長い時間煮込んでいるワケだ!!…勿体無いネェし家畜とて、食われたくて生きてるワケじゃネェからよぉ!!!」

 

 そして彼は続けた。

 

「俺のバアちゃんがよ!昔は今みたいに満足に食えなかった、って言っててよぉ。俺はバカだからよぉ、別に腹が減りゃあ種族なんざ関係ねぇと思うんだが……難しいよなぁ。古竜狩りの時代は、皆仲良くしていたっつうのになぁ」

「そうだな。……まぁ、彼らには彼らなりの世界があるんだろうよ」

「んんな冷たい事を言いなさんなよ、(にい)ちゃん」

 

 食事も終え、デザートに突入した。アイスクリームが入る器に手を伸ばし、スプーンで掬い食べる。

 濃厚なミルク感と共に、あっさりと抜けていくバニラの香り。もう最高。コレが食べたかった…!!

 

「……。あの英雄様は死んじまったが…英雄様のお陰でこうやって、俺は飯を作れて客に喜んで貰えている。…アンタ、英雄の弟子だったんだろ?」

「と言っても、隠し弟子。教わった事なんざ少ないよ」

 

 僕は彼にそう言った。

 本当はシチューのレシピと交換条件で話をしたい、と思っているが…それは流石に出来ないと悟った。こうなったら最後まで白を切るしかない。

 彼の言う、英雄の弟子。それはレーネが口を滑らし、僕の存在が店長の耳に入ってしまったのが原因である。

 

(にい)ちゃんの記憶の中に居る英雄様に、ありがとうって伝えといてくれ!!」

「竜王国に彼の墓ができただろう?そこに行けばいいだろうに」

「アンナノは形だけだ…。なぁ、頼むよ。デザート代をおまけするからよ」

 

 そもそも僕らの話が嘘と言う場合もあるにも掛からわず、彼は僕にそう言った。

 しかし、デザート代が無料になるのならば話は別である。そういう事で僕は、脳内に自身を浮かび上げ「ありがとー」と声を掛ける謎妄想をした。

 

「彼に言ったよ。……ホントにタダでいいのか…?」

「おぉマジか!!そんな程度のはした金で感謝を伝えられるなら構わねぇ!!…じゃあ俺は厨房に戻るとするわ。長話に付き合わせてありがとうよ!!また来いよ!!」

 

 そう言って彼は、腕を回しながら言ってしまった。

 

「おぉ騎士くん、アイスがタダになりましたね!色々と英雄様に感謝しなければなりませんね!!」

 

 レーネは祈る様に指を組み、目を瞑った。

 それによって、僕がどうこう為る訳で無いが…ふと疑問が浮かんだ。僕はレーネに…その疑問をぶつけてみた。

 

「これを聞いてアイツは…僕の師匠は喜ぶかな?」

「喜びますよ!!なんて言ったって英雄様は、()()()()()()古竜に打ち勝ったお方ですから!!!」

「ははは、そうだな。そうかも知れない」

 

 誰だソイツは、と心の底から否定したかったが「いい加減に慣れろよ」と自虐するように笑ってごまかした。この50年間、散々そのギャップに苦しんできただろうに…

 有象無象の民の為という大義は僕には無い。そこまで出来た人間では無いからだ。見ず知らずの人間の幸せを願うなど…僕には重すぎる。背負えない。

 そんな思いも全て、一杯の水と共に飲みほした。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 苦い思いをしたがシチューは絶品であり、山を登り用事を終えたら再度、またこの店に寄ろうと考えた。

 

 さて次は、弟子の願いである山登りである。この王都で2日間滞在し、必要な装備と食料を整えた。

「出来るだけ食料を持ちましょう」と、この娘は言っていたので、アウルム山脈の先の禁足地となる古竜の(しとね)に侵入する気だろう。

 1日が過ぎるたび、彼女のテンションは面白い程に下がっていった。禁足地は非常に厄介な地だ。僕の身を案じているのだろう。バレバレだ。

 

「さてじゃあ、行きますか」

「はい…」

 

 山の入山口の前。人気を避けた木影の下で彼女はそう呟いた。

 

「おいおい、いつのもアレは何処に行ったんだ?はぁはぁ…破廉恥ですわ…!!ってヤツ」

「そんなに大げさにッ…!!……。いや…」

 

 マルレーネは俯き、言いかかった言葉を飲み込んだ。

 僕は彼女が何故こうなったかを知っている。だから、半ば励ます様に言った。

 

「僕は英雄の弟子だぜ?任せとけって。一応言うが、僕はまだ死ぬ気は無いぞ」

「えっ…」

「禁足地…その果ての古竜の褥に向かうつもりだろう?案内は君の騎士である、僕にお任せあれ」

 

 禁足地は昔、『古竜に打ち勝った我らの聖域』などと重要視されていたが今やその逆。禁足地は聖域としての役割を失った。

 古竜の死後から数年後、より険しくなった。一筋縄では踏破できなくなった。危険度が増した。

 時たまに山から下る敵を打ち倒すべく、才有るファロス兵は今なお戦っている。

 

 未だに、こんな地を欲しがる法国の気が知れん。一度、痛い眼を見ないとダメなのか?

 

「本当に良いんですか…?死んでしまうかも知れませんよ…?」

「僕はその地で師匠と修行したんだよね~」

「どうしてここまで……付き合ってくれるのですか?」

「僕にとってキミは弟子だからね。死んじゃあ困るよ」

「そうですか……」

 

 再度深く俯き、ぶんと顔を上げた。

 先程までのレーネは居らず、いつもの調子の良い彼女が居た。

 

「では行きましょう騎士くん!禁足地までは長いですから、本を…知識を蓄えなければいけませんね!!」

 

 そういってカバンに入る本を取り出し読み始めた。

 レーネが言うように、禁足地までは長い。ある程度は観光として道も整備されている。命の保証はされていないが…

 

「よーし、じゃあ行くぞー。……何の項目を読んでいるのですか?レーネさん」

「人間の…体位についてです!!……あぁ、そんな過激な…!!」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 2日かけて一般に開かれている山道を登り、夜闇に紛れ警備隊を突破し、禁足地に侵入した。

 最初は何もなく、至って順調だった。

 

 しかし古竜の褥、その手前で大いに足止めを食らった。

 古竜狩りに馳せ参じ散って言った同胞や、古竜により死んでいった女・子供の死霊達が行く手を阻んだのだ。

 そこからは正しく地獄であった。第1波が終わると即座に2波が訪れた。その後第3、第4と続き朝日が昇ると同時にラッシュも終わりを告げた。

 

「夜は無限に湧き出る死霊が。朝は土地に住まう狂暴な生物が。いやはや…まったく退屈はしないね、此処は…」

 

 僕はレーネに向けて言ったが、肩で息をする彼女の耳には届いていなかった。

 魔導書は足元に落ち、聖鈴を握る手は震えている。顔色は悪く、白い修道服は切り傷が目立つ。

 マルレーネ本体に大きなダメージこそ無いが、もう魔力がないのだろう。今すぐ休ませるべきだろう。だが…

 

「あの状態でドラゴンなんざ飛んで来たら厳しかったな……死霊だけで良かった。疲れている所悪いが、進むぞ。悪食なトカゲが時期にやってくる。この散らばりに散った装備や骨を喰う為にな。ほら…」

 

 僕はレーネの手を取り、引っ張りながら進む。

 幸いにも身を隠すのに丁度いい洞穴を発見出来た。そこに荷物を降ろし中身を全て出した。柔らかいモノを再度詰め込み、簡易的な寝床を作りレーネを横にした。

 一晩中戦い続けた。魔力どころか体力の限界である。

 

「出来るだけ意識を残して寝ろ。いや…寝るな。目を閉じたまま横になり身体を休ませるイメージ。精一杯レーネを守るが…100%安全という保障は無い」

 

 かつてここは古竜の縄張りだった。しかし今や古竜は死に、空いた玉座を狙い数々の強者が争っている。…昔はこの辺りでも仮眠は出来た。だが現在は仮眠すら許されない。小さな虫とて油断できない。それほど環境が厳しくなってしまった。

 ドサッと横になりレーネは目をつぶった。

 

「ここはマナの濃度が高いから…魔力は少し休めば回復する。だが肉体はそうともいかない。しっかり休め」

 

 僕は食料が入る袋を開け、香りが無く味がゲロの様なブロックを割り口に放り込んだ。現在の禁足地に向かう兵に与えられる食事…レーションのようなモノだ。

 高栄養・高エネルギーかつ、匂いが無いが揃った最高な補給食だ。匂いは禁足地では重要だ。香り高いと虫がたかる。

 まぁそもそもの話、嗅覚が異常に発達している獣などには、僕らの存在はバレているので意味が無いと言えば……そうなのかも知れない。

 

「騎士くんは……寝ないのですか……」

「だから寝るなって言ってんでしょうが…。僕は良いんだ。出来るだけ気を張って休め。……ここまで良く頑張ったな」

「はい……。騎士くん…手を……貸してくれないで…しょうか…」

 

 再度、ゲロ味の補給食を食べる。食事が不要といえど、この様に息抜きしなければやってられない。あの死霊達はとくに…精神にくる。

 彼女もまた精神的なダメージを負ったのだろう。特に良く喋る子供の死霊は僕でも辛い。「痛い」「お腹が減った」「苦しい」「ママとパパが居ない」「寂しい」など語り掛けて来るからな。

「ほら」と差し出した僕の手を、ギュウと振るえる手で握り締めた。

 

「騎士くん……あれは……あの子供だちは……」

「あぁそうだ。蔓延する病気、狂う程に苦しい飢餓、心を抉る紛争、恐怖の象徴の古竜。大昔に殺された子供たちだ。その他の死霊は、古竜狩りで死んだ兵士だ。……。すこしだけ、師匠から聞いた昔話をしようか」

「……」

「ここいらは山の中腹だが、対古竜の砦を()()()()数多く整えた。しかし、古竜が砦に降りて来るとは限らない。何をしたか…もう分かっているね?」

「……」

「ヒントはもう出ているし、さっき戦ったからな……」

「子供達……ですか……」

「そう、正解だ。各種族たちは、身寄りが無く痩せている子供や、年老いた者を餌とした。その結果がアレだ。…まぁ、種族を限定しなかったのは唯一褒めれるポイントだよね」

「…。それで……どうなったんですか……」

「みんな死んだね。第1次古竜狩りは大敗を喫した。戦力の5割を失う結果になった。……あぁ、その餌たちは初めから『そうなる事だけ』しか想定されて無かったから、損失には入らない。当時の偉い方々は言っていたそうだ。これで配給が滞るようになった、って」

「……」

 

 はぁ、と深いため息が出た。昔々を思い出す。力なき僕は、彼らを救い出すことすら出来なかったと。そして今も同様に。

 

「これで満足か?もう僕は…話したくないぞ、辛いからな。…師匠越しとはいえ、大戦の闇を語るのは…」

「あの子たちは……倒しましたが……どうなったんでしょうか……」

「永遠にあのままだ。理屈は分からない。ずっと縛られている。死霊になれるだけの魔力を蓄えたらまた、さっきみたいに出現するだろう。だから、複数回にわたって波があったんだろうな。まぁ知らんけど」

「騎士くんも……分からない事があるんですね……」

「僕をなんだと思ってるんだ。分からない事の方が多いぞ。とくに魔力関係だな。空気中や水中には『マナ』があって、それが結晶化すると『魔石』になる。体内に流れるのは『魔力』だな。人体に影響する魔力に関しては凡そ分かったが……マナが分からん。お手上げ状態だ。……。おい、聞いてるか?」

 

 僕は、反応が薄くなったレーネを見る。僕の手をアイマスクのようにして、寝息を立てていた。

 あれほど寝るなと言っていたのに……。だがまぁ……いいや。寝れるときに寝るのが一番いいのかも知れない。

 

「今回だけだぞ。その熟睡から覚醒した暁には…極悪環境でのサバイバル技術をたんと叩き込んでやる」

 

 僕はそう言って頬突きした。

 結局のところ、レーネが起きたのは8時間後の事であった。

 

 

 




お疲れさまでした。

次回も読んで頂ければ嬉しいです。

ハイパー蛇足

シチューを食べている時ですが、レーネが「心臓」と言っていますが、ぎりぎりまで「ち〇ぽ」にしようか本当に悩みました。某杉田風に…。
オスの牛や豚は基本的に去勢するので、酪農が盛んなファロスに合っているのでは……と。
僕自身、牛などのち〇ぽを食べた事が無いので書くのを辞めました。

以上です。本当にくだらなくてすみません…

では、また~
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