楽しく読んで頂けると嬉しいです!!
「なあキミ!!僕はキニス!是非僕の弟子に……」
「お兄さん誰???」
「なあボク?僕の弟子に……」
「ママー!!変な人に声かけられた──!!」
「ねぇ?お嬢ちゃn……」
「きゃ────!!!」
◇◇◇◇
簡潔に言うと、初日は惨敗だった。
王都の外れ。広場のベンチに深く座り込み、ため息を吐いた。もう夜だ──
僕は寝なくてもいい身体なので、宿に泊まる必要が無いのは救いだった。そもそもお金を持ち合わせていなかった。……なんでや…出るときに気づけよ……。
現在僕は<キニス>と言う古い名前を使っている。両親が付けてくれた名だ。
しかし今はもう、キニスの名を語る者は居ない。
僕の古い名前はとっくの昔に、異名に埋まれてしまったからだ。
「ガンバレガンバレ……。ほら、休憩も終わりだ……行くぞ」
半ば折れかかった心を縛り上げ、立ち上がる。
コレ、古竜討伐よりもハードル高いような……。
いや、そんなことないな。
笑顔が不気味と言われた。五十年以上も素顔を隠していた弊害だ。
全てが自身の実力不足。でもその言われは酷くないか???
「そうさ……」
僕は輝く月を見上げ呟いた。
「どんな事でも、最初は僕一人だった……。いままでソレで出来たんだ。何とかなるさ」
胸を張り、肩で風を切る様に歩く。
随分昔の頃。家出をした幼い少年と同じ様に。
◇◇◇◇
大通りを歩き数十分。貧困層が住まうエリアに足を運んだ。
全ての家と言う家がボロボロで、一部屋根や壁が崩れ落ちている。
「ん?アレ…人間か?」
より深い闇に染まった路地裏。その先に誰かが居た──
恐怖心は古竜の炎に焼き捨ててやった。ので、今の僕は好奇心に沸いていた。
一歩、また一歩近寄る。
その陰が鮮明になりつつあり、正体を現した。
黒い長い髪の青年?
ボロボロの服を着て仰向けで倒れている。
胸は上下に動いていており、青年が生きている事を証明した。
「おい…ダイジョブか?」
僕は屈み青年に言う。
この声に気づいたのか。彼は少し目を開き、僕の後方を指さした。
その導きに誘われるように、後方に向く。
「なんだ?なんかいるのか……?こんなところになにもッ──!!
頭に強い衝撃が走った。
鈍痛と言うのだろう。何か大きな硬いもの。石で思いっきりぶん殴られた様だった。
完全に気を抜いていた。古竜を殺した僕に一発入れるなんて中々やるな……。
ドサリと地面に仰向けで倒れた僕に、青年は馬乗りをした。腰付近に彼の体重を感じた。
普通に反撃する事が可能なのだが……面白そうなので気を失うフリをした。
「うぅう……ごめんなさい、ごんなさい……でも……おなかが減って、おなかが空いて……」
僕の間違いを訂正しなければならない。
コイツ、女だ。
しかし……『おなかが空く』とは?…
「うわ……キレイなお人…。でも、凄く美味しそう……」
その少し冷たい手は、僕の髪、頬、唇を通り、首元に置かれた。
美味しそう???……そうだろう?そうだろう!?
古竜の心臓を取り込んだ肉体だ。自分が言うのもアレなのだが、美味しいに決まっている!
我が宿敵との闘い、その終盤は『お互いの肉体を喰らい合う』という狂気に走った。
生きたまま食われるのも体験済みだ。
彼女の反応を聞くのも悪い話では無い。
「はじめて……でも、これも生きる為……い、いただき……ます!」
僕の首に歯を突き立てられ、血を吸われた。
そうかそうか。彼女は吸血鬼だったか……。
いや待て。『はじめて』?その歳でか??
「ん――んっ……!?。とても、美味しい…わ…。とまらない…っ……」
ジュル、ジュルと不器用な音を立て彼女は吸い続けた。
お気に召したようで。さてさて──
僕は彼女の腰に手を置き、ガッチリとホールドした。
「えッ!?」
目を開き状態を起こす。
その体勢のため、自然と彼女の顔が眼前に。あら、結構可愛い娘じゃないの。
「嬢ちゃん……食い逃げは許さんからな?」
「え…え!?」
「あははは。別に殺したりしないさ。なぁ嬢ちゃん?僕の弟子にならないか?今なら毎晩、僕の血を飲ませてやる…!お得だぜ?」
「は?はい???」
彼女は大きく目を見開いた。澄んだ赤い瞳。
白く透き通った肌。
口元は僕の血で真っ赤。
今宵僕は、初めて弟子が出来た。
人間ではなく、吸血鬼だったけどな。
◇◇◇◇
「我が王国の切り札……
ようやく盛り上がって来たというのに。この男は……。
「よく気づいたな?」
「当たり前です。私にとってアナタは特別なお人──。匂い、口調、体格……それで判ります。それで……一体何をしているのです!?」
相変わらずキモイ奴だ……。白けるか。
「見りゃわかんねぇの?エッチなことしてるんだ、エッチなこと」
「え!?違います!!私はまだ──」
煌めく一線が僕と彼女の間に入る。
それは月光を反射する一本の剣だった。
「なんですかあの遺体と遺書は!?国王は乱心しています…!!唯一気づいたのは私だけでした……!!!」
僕は男の方に向く。
前髪を流し、右側を編み込んだ金髪。
美形と僕でも断言できる面に、すらっとした身体。
白銀色。ミスリルの鎧に身を包んだ男。
この王国の戦士長。王の側近。
<アラミス・ルカティエル・ファンド・メルタール>だ。
「それがどうした?……もういいだろうさ……僕が居なくてもさ。…ここはつまらない」
「そんな理由で……!?」
ギュウとアラミスは剣に力が入る。それほどまでにこの言葉は、気に召さなかったのだろうか。
「古竜を単身で撃ち滅ぼした英雄がこのザマですか!?」
「その英雄は、オマエ達が脚色したものだろう???僕は僕だ。…しかしその所為で、僕は鎧を外せなかった。オマエ達のつまらない脚色を守る為にな……」
「だからと言って…!!」
「退屈なんだ、辛いんだよ僕は……!アラミス…僕を慕う者ならば……分かってくれないか?」
「……。出来ません……。王国は貴方無しでは存続できません」
「はぁ……。ならば…さっさと落ち敗れてしまえ。僕が居なくなり没落するならば、『その程度の国』だったんだよ。分かるかい?戦士長?」
僕は挑発する様に言った。
最早相容れぬ。分かり合えぬ。ここでアラミスを殺すしかないのか?
「……分かりました。では……ここは決闘で……。私はアナタに勝てる未来は浮かびませんが……死んでも国に引き寄せなければならない……!!」
「へぇ?面白そうな事をしてくれるね……。少し待て。…………」
僕は未だポカンとしている少女に顔を向けた。
あ。こっちの方が面白そうだ。
「よし分かったアラミス。オマエの提案を飲もう。しかし、相手は僕ではない」
「!?」
「?」
「この娘……。おい、オマエの名前はなんだ?」
「えっ…は……。み、<ミラ>です!!」
「よしミラよ!我が弟子なれば……この男を退治してみせろ」
「えっ!?……私!?…さっきまで空気だったんですよ!?」
「食い逃げする気か?????」
「うぅ……。が、がんばり……マス……」
軽く息を吐き、僕はアラミスに言う。
「今さっき出来た弟子、ミラが代打だ。もしミラが負ければ大人しくお縄に掛かろう。よいな?」
「勿論……。たとえ相手が幼い女子でも……王国の為ならば……その首を落とす積もりです……」
「よし。ほら征け弟子。ガンバレ!!」
「……」
いかがでしたでしょうか?
次回、アラミスVSミラです。どうなるんですかね?
誤字脱字など有りましたら連絡していただけると助かります。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
では、また~