キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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2話目です。
楽しく読んで頂けると嬉しいです!!


第2話 最初の弟子

「なあキミ!!僕はキニス!是非僕の弟子に……」

「お兄さん誰???」

 

「なあボク?僕の弟子に……」

「ママー!!変な人に声かけられた──!!」

 

「ねぇ?お嬢ちゃn……」

「きゃ────!!!」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 簡潔に言うと、初日は惨敗だった。

 

 王都の外れ。広場のベンチに深く座り込み、ため息を吐いた。もう夜だ──

 僕は寝なくてもいい身体なので、宿に泊まる必要が無いのは救いだった。そもそもお金を持ち合わせていなかった。……なんでや…出るときに気づけよ……。

 

 現在僕は<キニス>と言う古い名前を使っている。両親が付けてくれた名だ。

 しかし今はもう、キニスの名を語る者は居ない。

 僕の古い名前はとっくの昔に、異名に埋まれてしまったからだ。

 

 

「ガンバレガンバレ……。ほら、休憩も終わりだ……行くぞ」

 

 半ば折れかかった心を縛り上げ、立ち上がる。

 コレ、古竜討伐よりもハードル高いような……。

 いや、そんなことないな。

 

 笑顔が不気味と言われた。五十年以上も素顔を隠していた弊害だ。

 全てが自身の実力不足。でもその言われは酷くないか???

 

「そうさ……」

 

 僕は輝く月を見上げ呟いた。

 

「どんな事でも、最初は僕一人だった……。いままでソレで出来たんだ。何とかなるさ」

 

 胸を張り、肩で風を切る様に歩く。

 随分昔の頃。家出をした幼い少年と同じ様に。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 大通りを歩き数十分。貧困層が住まうエリアに足を運んだ。

 全ての家と言う家がボロボロで、一部屋根や壁が崩れ落ちている。

 

「ん?アレ…人間か?」

 

 より深い闇に染まった路地裏。その先に誰かが居た──

 恐怖心は古竜の炎に焼き捨ててやった。ので、今の僕は好奇心に沸いていた。

 

 一歩、また一歩近寄る。

 その陰が鮮明になりつつあり、正体を現した。

 

 黒い長い髪の青年?

 ボロボロの服を着て仰向けで倒れている。

 胸は上下に動いていており、青年が生きている事を証明した。

 

「おい…ダイジョブか?」

 

 僕は屈み青年に言う。

 この声に気づいたのか。彼は少し目を開き、僕の後方を指さした。

 その導きに誘われるように、後方に向く。

 

「なんだ?なんかいるのか……?こんなところになにもッ──!!

 

 頭に強い衝撃が走った。

 鈍痛と言うのだろう。何か大きな硬いもの。石で思いっきりぶん殴られた様だった。

 

 完全に気を抜いていた。古竜を殺した僕に一発入れるなんて中々やるな……。

 

 ドサリと地面に仰向けで倒れた僕に、青年は馬乗りをした。腰付近に彼の体重を感じた。

 普通に反撃する事が可能なのだが……面白そうなので気を失うフリをした。

 

「うぅう……ごめんなさい、ごんなさい……でも……おなかが減って、おなかが空いて……」

 

 僕の間違いを訂正しなければならない。

 コイツ、女だ。

 しかし……『おなかが空く』とは?…喰種(グール)か?

 

「うわ……キレイなお人…。でも、凄く美味しそう……」

 

 その少し冷たい手は、僕の髪、頬、唇を通り、首元に置かれた。

 美味しそう???……そうだろう?そうだろう!?

 古竜の心臓を取り込んだ肉体だ。自分が言うのもアレなのだが、美味しいに決まっている!

 

 我が宿敵との闘い、その終盤は『お互いの肉体を喰らい合う』という狂気に走った。

 生きたまま食われるのも体験済みだ。

 彼女の反応を聞くのも悪い話では無い。

 

「はじめて……でも、これも生きる為……い、いただき……ます!」

 

 僕の首に歯を突き立てられ、血を吸われた。

 そうかそうか。彼女は吸血鬼だったか……。

 いや待て。『はじめて』?その歳でか??

 

「ん――んっ……!?。とても、美味しい…わ…。とまらない…っ……」

 

 ジュル、ジュルと不器用な音を立て彼女は吸い続けた。

 お気に召したようで。さてさて──

 

 僕は彼女の腰に手を置き、ガッチリとホールドした。

 

「えッ!?」

 

 目を開き状態を起こす。

 その体勢のため、自然と彼女の顔が眼前に。あら、結構可愛い娘じゃないの。

 

「嬢ちゃん……食い逃げは許さんからな?」

「え…え!?」

「あははは。別に殺したりしないさ。なぁ嬢ちゃん?僕の弟子にならないか?今なら毎晩、僕の血を飲ませてやる…!お得だぜ?」

「は?はい???」

 

 彼女は大きく目を見開いた。澄んだ赤い瞳。

 白く透き通った肌。

 口元は僕の血で真っ赤。

 

 今宵僕は、初めて弟子が出来た。

 人間ではなく、吸血鬼だったけどな。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

「我が王国の切り札……灰狂い(グレイマッド)。一体何をしているのですか?」

 

 ようやく盛り上がって来たというのに。この男は……。

 

「よく気づいたな?」

「当たり前です。私にとってアナタは特別なお人──。匂い、口調、体格……それで判ります。それで……一体何をしているのです!?」

 

 相変わらずキモイ奴だ……。白けるか。

 

「見りゃわかんねぇの?エッチなことしてるんだ、エッチなこと」

「え!?違います!!私はまだ──」

 

 煌めく一線が僕と彼女の間に入る。

 それは月光を反射する一本の剣だった。

 

「なんですかあの遺体と遺書は!?国王は乱心しています…!!唯一気づいたのは私だけでした……!!!」

 

 僕は男の方に向く。

 前髪を流し、右側を編み込んだ金髪。

 美形と僕でも断言できる面に、すらっとした身体。

 白銀色。ミスリルの鎧に身を包んだ男。

 

 この王国の戦士長。王の側近。

 <アラミス・ルカティエル・ファンド・メルタール>だ。

 

「それがどうした?……もういいだろうさ……僕が居なくてもさ。…ここはつまらない」

「そんな理由で……!?」

 

 ギュウとアラミスは剣に力が入る。それほどまでにこの言葉は、気に召さなかったのだろうか。

 

「古竜を単身で撃ち滅ぼした英雄がこのザマですか!?」

「その英雄は、オマエ達が脚色したものだろう???僕は僕だ。…しかしその所為で、僕は鎧を外せなかった。オマエ達のつまらない脚色を守る為にな……」

「だからと言って…!!」

「退屈なんだ、辛いんだよ僕は……!アラミス…僕を慕う者ならば……分かってくれないか?」

「……。出来ません……。王国は貴方無しでは存続できません」

「はぁ……。ならば…さっさと落ち敗れてしまえ。僕が居なくなり没落するならば、『その程度の国』だったんだよ。分かるかい?戦士長?」

 

 僕は挑発する様に言った。

 最早相容れぬ。分かり合えぬ。ここでアラミスを殺すしかないのか?

 

「……分かりました。では……ここは決闘で……。私はアナタに勝てる未来は浮かびませんが……死んでも国に引き寄せなければならない……!!」

「へぇ?面白そうな事をしてくれるね……。少し待て。…………」

 

 僕は未だポカンとしている少女に顔を向けた。

 あ。こっちの方が面白そうだ。

 

「よし分かったアラミス。オマエの提案を飲もう。しかし、相手は僕ではない」

「!?」

「?」

 

「この娘……。おい、オマエの名前はなんだ?」

「えっ…は……。み、<ミラ>です!!」

「よしミラよ!我が弟子なれば……この男を退治してみせろ」

「えっ!?……私!?…さっきまで空気だったんですよ!?」

「食い逃げする気か?????」

「うぅ……。が、がんばり……マス……」

 

 軽く息を吐き、僕はアラミスに言う。

 

「今さっき出来た弟子、ミラが代打だ。もしミラが負ければ大人しくお縄に掛かろう。よいな?」

「勿論……。たとえ相手が幼い女子でも……王国の為ならば……その首を落とす積もりです……」

「よし。ほら征け弟子。ガンバレ!!」

「……」

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
次回、アラミスVSミラです。どうなるんですかね?

誤字脱字など有りましたら連絡していただけると助かります。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

では、また~
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