キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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3話目です。
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第3話 決闘

 騎士長アラミス。我が最初の弟子、吸血鬼ミラの決闘が始まった。

 人気が無い古びた広間。周りを照らす月が傾き始めた。

 

 武器を持つアラミスと公平を保つ為に、即興で剣を作成しミラに渡した。

 そして──

 

 キン……カンッ!!と音が響く。

 

 ミラの剣捌きはほぼ素人で、終始圧倒させている。

 それも当然だろうか。アラミスは王の血族と言えど、その実力は上から数えた方が早い。

 しかしその『中途半端』が、この国を腐らせたと言えようか──

 

 古い出来事だが、第十一次にて、僕と同行した<ダリア>と言う豪快な青年が居た。

 その男は僕と同じように、古竜撃破後この王国に属した。

 ダリアの実力は素晴らしいものだった。その為彼は、若くして戦士長に選ばれた。

 

 だが八年前。齢十五のアラミスが権力によって騎士長なった。

 剣技は折り紙付きだった。しかし、アラミスは部下を率いる能力が欠乏していた。

 兵を捨て駒同然の様に扱い、その兵を救う為にダリアは戦死した。

 

 老衰もあったのだろう。

 ダリアは僕に「いつまでも若々しいな!!!」と豪快に笑っていた。

 

 僕は、ダリアの直接の死因は、アラミスと断言はしない。

 しかし、ダリアの死によって王国の風向きは大きく変わったのも事実だ。

 惜しい人を亡くしたものだ──

 

 

 ……。マズいマズい……。我が弟子の戦いを見なければ……

 

 

「どうした!!それが…!!私の愛する方の……弟子か!!」

「…ッ…!!」

 

 勢いよく切り上げられた一撃を、ミラは紙一重で受け止める。

 そろそろ()()()()()()()()()。助言をするのも良いかもしれない。

 

「ミラ。なにふざけているんだ…」

「で…ですが……。う、受け止めるだけでッ…!!精一杯……です……!!」

「それは当たり前だ……。()()()()()()()()()大変だろうよ。ヒトを捨てろ、オマエは吸血鬼だ」

 

 ミラは僕の血を飲む時に言っていた。

『はじめて』『これも生きる為』と──

 つまるところ彼女は、吸血鬼として産まれたのでは無い。

 ましてや、吸血鬼に噛まれ、その眷属になった訳でも無い。

 こうして導き出した解はただ一つしかない──

 

 彼女は真祖だ。吸血鬼。その最初の始まり。

 最初の一(ファースト・ワン)やらなんやらと聞いたことが有るが……実際に目にしたのは初めてだ。

 

 だってほら……今なお、あの戦士長の攻撃をいなしている。

 しかも一度も剣を落としていない。

 それは真祖由来の動体視力と、圧倒的な怪力によるものだ。

 

 いいなソレ……

 

「……!は……はい…!!」

 

 ミラは僕に向けて威勢の良い返事を返した。

 

「くぅぅうぅ……!!汚れた女が…!!その()()は……私だけの…ものだぁぁああ!!!!!」

 

 アラミスは剣を構え直し、ミラの首に狙いを定め、突きをした。

 彼の最速、最高の攻撃。その速度は並大抵の人間に追えるモノでは無く、あのダリアに一泡吹かせた剣技だ。

 

 だが残念なことに、相手は人間では無い。

 吸血鬼。その上位に君臨する『真祖』だ。

 

 故にミラは見事に対応し、その一撃を弾き返した。

 攻撃の主は鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべた。無理も無い、ざまぁ見ろ。

 

 その後ミラは水が高所から落ちるかの様に、可憐に体勢を移し剣を振るった。

 通常、ミスリルの鎧は非常に硬い為、脇や膝裏。メイスなどの打撃武器などで対処するのが一般的である。

 しかし……

 

 グシャリッッ!!!!

 

 いとも容易くミスリル製の鎧。その脇腹を豪快に引き裂いた――

 

「…アハハハ…。まるで…まるで、その豪快さはダリアのようだ……」

 

 感傷に浸る英雄。それを目で捉えた騎士長は、地に伏した。

 

「凄い…。…とても…ゆっくりに見えた……あの…!コレは…!?」

 

 ミラはシッポを振る子犬の様に、僕の下に駆け寄ってきた。

 

「だから言ったでしょうよ。キミはもう人間じゃないって……」

「で、でも…私、つい三日前まで…人間だったんですよ!!」

 

 Oh…マジかよ。吸血鬼の肉体を少しは熟知してると思っていたが……

 可能性の塊。いつか僕を殺せるほど……好敵手になる程のセンスが備わっていただなんて……

 

 てかさ、、、

 

「ミラ……決闘主、どこ行ったか分かる?」

「え!?」

 

 ミラは後ろを振り向く。

 赤い血が水溜まりの様にある。しかし、アラミスの姿は無かった。

 ポタポタと血痕があるので追跡は容易だ。

 

「決闘って…殺さないといけないんですか?」

「イヤ…そんなことは…」

 

 アラミスは僕の正体を知っている。

 その事実を拡散される前にどうにかしたい。

 ならばこの先は……僕の出番だ。

 

「キミはここで待機。すぐ戻るから」

 

 僕の言葉に勘付いたミラは口を開いた。

 

「こ、殺すんですか…?知り合いでは…無いんですか……?」

「あぁ、知り合いだよ。なんなら彼が小さい頃からの付き合いだ。だからこそ最期に挨拶しないといけないんだ」

「あいさつ……ですか……」

「そう……。最期のね」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

「はぁ……はぁ…ぅうっ!!……クソ!」

 

 自身の血で汚れた右手を握りしめ、古い壁を殴りつけた。

 パラパラと砂埃が舞い落ち、父親と同じ美しい金髪が汚れてしまった。

 絶えず流れる血を左手で抑え、壁に背を任せ座り込む。

 

 痛みと屈辱で気が狂いそうになる。

 アラミスは歯を食いしばり耐えた。

 いつか自分の配下が助けに来る事に希望をもって──

 

「随分苦しそうだな?……ダリアはそれ以上の屈辱と痛みに耐え……死んだぞ?」

「……!!グレイ…マッド……!!」

 

 アラミスの目先には、薄青色の眼の男が居た。

 

「……だから……ですから、なんなのです…!?あ、あんな老いぼれ!私の…ゴホッ……。私の、命令を聞いていれば……良かったんです……!!」

「そうか…最期に言う事はあるか?」

「……はっ……。アナタは……ッ……。何を、企んで…いるのですか……?グレイマッド……」

「それは…」

 

 男は口を閉じた。しかし再度口を開け、嬉々として語った。

 

「僕の宿敵を育てる…。もう一度…あの戦いを…もう一度、あの興奮を……味わいたいんだ」

「………。……やはり……私は、アナタを最後まで……理解できなかった……」

「悪いな。コレは僕だけの願望だ……。僕だけのモノだ。だから……他人に理解されたくも無い」

「やはりアナタ、は……既にゴホッッ!!にん、げんでは…無っ――――

「……あぁそうだとも。古竜を殺すために化け物に成り変わった……か弱い人間だよ」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 アラミアの遺体と痕跡の全てを灰に化し、ミラが待つ広間に向かう。

 そこには騎士長の血が付いた剣を舐める少女の姿が。

 

「おぉ、順応が早いな……。しかしまぁ……喜ばしい事だ……」

 

 ボツりと独り言とを呟く。

 

「あ!……えっと……お師匠……?」

「何とでも呼べ。あ、僕の名前はキニスだ……。自己紹介を忘れてた……」

「キニス……さん……。あ、あの……さっきの男の人が言っていた『灰狂い(グレイマッド)』って──」

「それはおいおいね……。ところでさ…美味しいの?ソレ?」

 

 僕はミラの隣で地べたに座り質問した。

 

「凄いです……全然味が違います……!!砂とお砂糖ぐらい違います!!!」

「僕の血は砂か?」

「お砂糖です!!!!」

「おぉ……。嬉しい事言ってくれるじゃないの…」

「私は……私なりに頑張りました……!!ので……。…………。ご褒美を、下さい……!」

「はいはい」

 

 僕は自身の吐いた言葉に従う羽目になった。

 約束は守らなければ……。特に僕の弟子となれば猶更だ……

 

 僕はミラに首を差し出す。どうぞ、と言わんばかりに。

 

「で……では!い……いただきます!!」

 

 

 その後、夜が明けるまでヒルの様に吸い続けた。

 そして──

 

「もうお腹いっぱいです~」

 

 イカメシの様に腹をパンパンに膨らませた吸血鬼が一人。

 そのままムニャムニャと眠りについてしまった。

 どうすんだよコレ……

 

 とりあえず抱きかかえる。

 流石に王都周辺では、僕の死と戦士長の捜索で五月蠅くなるだろう。

 行く先は無く、宛ても無い。

 

「……。進むか……」

 

 両腕にミラの体重を感じ足を動かす。

 この娘はどこまで強くなるのだろうか……?楽しみだ。

 

 

 




お疲れ様でした!
いかがでしょうか?

ようやくキニスの2日目が始まろうとしています。
ミラに正体がバレていますね……。
次回も読んで頂けると嬉しいです!!

では、また~
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