キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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4話目です。
楽しんで読んで頂ければ嬉しいです。
誤字脱字など有りましたら報告ください。


第4話 稽古終わり

 やはりと言うか当たり前だが、僕の『死』と騎士長の揮発は大きな話題となった。

『騎士長が古竜狩りを殺し敵国に寝返った』とか、『王国の秘密に触れ消された』だの……。

 

 しかし実際は、古竜狩りは生きており、騎士長は僕の弟子一号が倒した。

 その弟子一号なのだが……

 

「お腹が空きました…!!お休み……ご飯の時間にしましょう!!!お腹が減りました!!!」

「おい。僕から一本取ってからじゃないのかよ?」

「もうヘトヘトです!!!」

 

 と、ミラは僕に向かってキッパリと言う。

 だが吸血鬼にとって『食事』は大切なモノだ。特出してその最上位である『真祖』は別格だ。

 僕の血を飲むほどに力を増している。

 

 感覚だが、僕の能力をコピーしているような感じだ。

 魔力量も目に見えて増加した。

 正直言って羨ましい。

 

「そうだな…もうじき朝になる。今日は終わりにしよう。ほら……ご飯だ」

 

 空は徐々に明るくなり、雲も染まっていた。

 僕は地に座り、ミラに露出させた首を出す。

 

「わぁ…!!いただきます!!!」

 

 目を輝かせてそう言った。

 ミラからの提案で、血を飲む際に抱き着く様な姿勢が一番楽だと言う。

 僕等が最初に出会った、あの体勢になる訳だ。

 

 ふわりと僕に抱き着く吸血鬼は、そのまま首に口を当てた。

 その際にミラの匂いが鼻につく。甘いような……どこか中毒性を感じる匂いだ。

 

 吸血鬼は獲物を逃がさない為、常時魅了(チャーム)が付いている。

 僕は古竜を殺すために、自分の肉体を改造も改造したので脅威には思わないが、常人にとっては致命的な香りなのだろう。

 いいぁ真祖。いいなぁ吸血鬼。もし僕がそう生まれていれば、古竜狩りも五年は早かったかもだぞ??

 

 ミラは、血を吸う事に抵抗が無くなったようだ。

 歯を突き刺し、出血させ、飲む。

 慣れたのか最初よりもスムーズだった。

 

「んん…。お師匠の、血は、…おいしい…です……!!」

 

 耳元で囁くな。ASMRか……。

 ASMRで唐突に思い出したが、この世界の哺乳類は『音魔法』に弱い傾向がある。特に睡眠を誘う水音は顕著だった。

 僕の持論だが、誕生する時、母親のお腹に居る為だと思っている。

 母親の血液が流れる音や心音。それが緊張を解くのかもしれない。

 

 ……。研究のし甲斐が有りそうだ。

 対象を強制的に戦闘不能にする魔法……。面白そう。

 

「どうしてこんなに……美味しんでしょう、ね……」

「さあね…。古竜の心臓のお陰かもしれんな。魔力がほぼ無限に湧くし」

「ではその古竜も……美味しかったんで、すかね……?」

「僕は美味しくなかったぞ。そもそも吸血鬼のように、血を飲むように設計(デザイン)されてないからな……。血の…鉄の味がした。到底、美味とは言えない」

 

 騎士長アラミスの件もあり、ミラには僕の正体がバレてしまっている。

 本当は隠したかった……

 だが弟子一号だけに、自分の正体を明かすのも良いだろう?むしろカッコよくないか???

 

「本当ですか……。ですが、ん……この味を知らない……人間は、人生を損して、ます」

「なんだその言いようは?まるで僕に『吸血鬼に成れ』と言っているようなもんじゃないか?」

 

 ふと頭に浮かぶ僕の姿。

 ウロボロスの様に、自身の一部を喰らう自分。しかも嬉々として……

 カオスすぎる……

 

「その時は私の血をあげますよ!!」

「あっ……そゆこと……」

 

 食事を終えたのかミラは、僕の身体に腕を回し抱きしめた。

 

「そういえば疑問なのですが……お師匠に牙を刺して血を飲んでいるのに…どうしてお師匠は吸血鬼に成らないんでしょうね?」

「そりゃあアレだ、実力差が有りすぎるからだ。吸血鬼は獲物の血を飲み、時として自らの眷属にする。眷属……つまり、従僕……奴隷とでも言おうか。吸血鬼は上下関係が絶対だ。下の者が上の者を殺すなんざ、あってはならない」

「ふむふむ」

 

 真面目に聞いてんのか?この弟子は……?まあいいや。

 

「だから吸血鬼には、自身よりも実力が上の者は眷属に出来ない。その者に殺される可能性が有るからな」

「あっ!じゃあ!!私がお師匠よりも強くなれば、お師匠を顎で使えるって事ですよね!?うふふふふ」

「顎で使われる気はサラサラ無いが……つまり、そういう事だ」

 

 陽が出てきた。

 ミラは真祖なだけあり、太陽の光は天敵では無い。

 しかし日中は眠たくなるらしい。もう寝んねの時間だ。

 

「じゃあ、いつの日か……お師匠を独り占め出来るように……強くなります!!」

「その動機は褒められる様では無いがぁ……そうか。僕よりも強くなってくれるのか?」

「はい……。私の、私だけの……温もり、ですから……」

 

 そういってミラは寝た。

 よく稽古して、よく食べて、よく寝る。

 この娘は将来大物になるな。

 

『私だけの温もり』

 僕はミラの服を少し寄せ、胸辺りを見る。

 だいぶ薄くなってきているが、まだその『刻印』が見える。

 奴隷の刻印。瞬時にそう見抜いた。

 

 僕には僕の過去が有るように、彼女にも彼女なりの過去がある。

 それと同様に、僕には僕の世界が有るように、彼女にも彼女なりの世界がある。

 

 その過去や世界は、そう簡単に立ち入って良いものでは無い。

 ミラ自身の傷が癒えたらきっと、僕に言ってくれるだろう。

 僕はそれを、ただ待つだけさ。

 

「よいしょ」

 

 そのままミラを抱き上げ、少し進んだ先にあるボロい家の中に入る。

 王国から少し離れた山の麓にある一軒家。王国に住まう老夫婦から買い取った家だ。

 身を隠すのなら、これで十分だった。

 

 くすんだ窓から陽の光が入り込んだ。

 これでミラを弟子にしてから、五度目の朝を迎えた。

 

 ソファーに寝かせ、その横に座る。

 黒く艶のある長い髪に触れ、僕も眠った。

 何故睡眠が必要無いのに寝たのか、自分でも判らなかった。

 

 ただ一言で表すと、そういう気分だった。

 何故その気分かすらも、判らなかった。

 

 

 




お疲れさまでした。
いかがでしたか?

今後も弟子〇号と増えますが、各弟子の話を3~5話程度にまとめて、次に進みたいと思います。
書きたいことが沢山あるんや……。

次回も読んで頂ければ嬉しいです!!!

では、また~
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