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「今日の稽古は終わりにしよう」
「はい!お師匠!!」
汗だくのミラに手拭いを渡す。
ここ数日前から、予定を変更して僕との実戦をしている。吸血鬼の能力、変化などを使わない…武器を用いた基礎稽古をしているのだ。
吸血鬼の怪力が有れば、技量など要らないと思うが……見てみたい。
極めた技術と怪力の行く先を──
それと……僕等を監視する存在。ミラの正体は隠してきた。吸血鬼だとは誰も思わんだろう。
最近、僕たちにボロ家を売った老夫婦がお縄になった、と聞いた。
それで王国の斥候が五月蠅く飛び回っている……と考えられる。死ぬほどメンドクセェ。
地面に転がる丸太に腰かける彼女の隣に座る。
「お師匠よりも力は強いはずなんですが……どうして私の一撃を弾けるんですか?」
「イヤミか吸血鬼???」
「いや!?そ、そんなコト無いです!ただ…疑問に思って……」
ミラは『弾き』と言っているが、毎回彼女の攻撃を弾けている訳ではない。
自身最高の剣を生成している。しかし強度が足りないのだ。
僕の愛剣と真祖の怪力。その力の前では、
二回に一回砕け散る。
もしやこの娘は、武器破壊率100%を目指しているのか?
「……。僕はミラよりも非力だからな、直撃は避けているんだ。…剣が壊れるからな。剣先を使ってキミの軌道を調整したり、点で捉えないで…面で
魔法で一本の剣を作成し、刃元や刃先を指でなぞった。
「軌道の修正……。あのチョンと当てて来るヤツの事ですね!アレ凄く嫌なんですよ!!!」
「あはははは。じゃあ、もっと気張るんだな」
「はい!……いつかお師匠を下僕に出来るように頑張ります!!!」
「……。楽しみに待ってるよ」
星降る夜空の下、僕はミラに両腕を出す。
毎度恒例の食事のサインだ。
わーい、と言い流れるように膝の上に座り、ミラは僕の首に歯を立てた。
「このまま、聞いて欲しい」
彼女の背中に腕を回し支える。
首をガッチリ掴まれているので、やや喋りにくいがこのまま行く事とした。
「なにやら……王国が僕等を嗅ぎまわっているようだ……。あの家も…もう灰になっている所だろう」
「……」
「いや、ミラならば僕より早く気づいてただろう?家の方向から火の音が聞こえると」
「……」
「今日で師弟関係は終わりにしよう。ミラの正体は隠しきったつもりだ。キミは一人でも……十分生きていけるよ」
「……」
「僕が時間を稼ぐから…とにかく遠くへ。……そしていずれ…また会おう。僕は僕の夢の為、ミラはミラの夢の為に」
より一層、僕を抱きしめるミラの腕に力が籠った。
それと啜り泣く音。
前々から別れの事を話していたんだ。
「多少予定が早まっただけでしょ。そう泣くなよ」
笑いながら僕は言った。
「うぅ……邪魔さえなければ……もっと……一緒に……居られたのに……!!」
「うはははははは!!!」
爆笑した。ミラは相当、彼らが憎いらしい。
血を飲むのを辞め、顔を近寄せた少女は僕に宣言した。
「いつか絶ッッ対!!私の下僕にして!!私だけのモノにしてやるッッ!!!」
「志が高くて結構!もし、僕の弟子に出会ったら仲良くしてやってくれ」
「もお!!」
この辺りに幻術を掛けているので、斥候が僕等を見つけるまで時間がある。
時間ギリギリまで、ゆっくり最後の時を過ごした。
談笑したり、血を飲まれたり……
過去話に花を咲かせたり、血を吸われたり……
あと血を飲まれ、血を飲まれたりもした。
そして僕は、最初の弟子。ミラと別れた。
「ベター様!!捕らえました!!」
腕を後ろに回され手錠を掛けられている。
脚にも枷があり、非常に歩きにくい。
夜も明け少し明るくなった空を焦がす様に、あのボロ家が真っ赤に燃えていた。
飛び散る火の粉。ガラガラと音を立て崩れる床や壁。
もうすっかり燃え尽きたと思っていたが……最期まで耐えてくれていたようだ。
「……ただいま」
「貴様ァ!!誰が口を開けていいと…!!!」
「うぇ」
鉄の棒により地に伏せられた。
口の中に土が入った。ジャリジャリする……美味しくない……。
僕は睨み付けるようにして、周りを確認する。
雑魚が十二人、まぁまぁが五人。あれは……協会に人間か?
青色のフードを深く被った男が四人。腰に聖鈴と聖水の瓶を装備している。
一人は大剣で、残りはメイスを装備していた。
化け物退治のスペシャリスト。彼ら専門家と比べミラは、幾ら真祖とは言え分が悪い。
ミラを逃がして正解だった……。
「おや……アナタでしたか?灰色の髪、青い眼。小奇麗なお顔」
「褒めてんの?ありがとう!」
「ええ……。正直羨ましい……」
そう言って僕に近寄るは、王国の経営顧問&拷問官。悪名高い男、ベターである。
黒い顔の火傷跡を摩り、ベターは屈む。
「この国の英雄……古竜狩りの剣はどこです?」
「この国の英雄…ね…。悪いが知らん、他をあたってくれ。……でもさ、その英雄さん。キミ達のお国に愛想をつかして亡くなったんでしょ?」
「いえ違います。あの方は、後世の為を思い亡くなられたのです」
「……嘘がお丈夫ですね?」
「ええ、アナタも……。連れていけ。城に帰投する」
ハッ!!と声と共に、身体を持ち上げられる。
持ち上げる、と言っても鎖越し。とても乱雑にだけど。
「や、優しく引っ張ってくれ……逃げないから……」
「……」
兵に話しかけても返事は無かった。
そして僕は、英雄の剣を盗んだ男。王国の虜囚の囚人となった。
少しやりたいことがある。
だから今は、彼らに身を任せよう。
後で千倍にして返してやる。
◇◇◇◇
水を少量かけられた。
この刺すような痛みは塩水だな…と頭の中で突っ込んだ。
それから三日経った。
三日も経つとどうなるか?と疑問が湧くだろう。
あぁ分かってる、分かってる。
僕自身でも爆笑するほど痛めつけられた。
その様は、彼がもう時期『写し出して』くれる。
さぁ、現状確認と行こうじゃないか。
「あぁ起きましたか、ワタシのアナタ……。死んでしまったかと…。いえ、アナタの評判は街で聞いていますので…
「……」
「声も出せませんか……。いや申し訳ない。舌は
「……」
「アナタは捕まり、情報を吐き。ワタシたちは英雄の剣を取り戻し、国が湧く。……そもそも、あの剣は英雄以外使いこなせません。故に……誰も偽物と見破れない」
「……」
「アナタは、もしかしたら剣など奪っていないかもしれません。ですが…この世には犠牲という人柱が必要です。こうして世は動いていくのです」
まぁつくづく…面白い事を考える。
僕の剣の捜索など、頭から無かった訳だ。
初っ端から舌を切られた僕は困惑した。一本取られたって訳だ。
「もう血も出なくなりましたね……。では……ご確認いただきましょう。ご自身の姿と…ワタシの作品を──」
ベターの背後で直立不動で構えていた二人の兵が、上官の一声と共にカーテンレールを引いた。
純白のカーテンから大きな一枚鏡が現れた。そしてソコに移る自分……。
両腕を鎖で吊られ、Yの字になっている。
身体は鞭傷と焼き印。大きな切り傷には、クソ適当な縫い目が。
顔は皮膚を剥がされ、唇、鼻、耳、瞼すらキレイになくなっている。
勿論髪も無い。ハゲ頭を余裕で通り過ぎている。
その鏡の横には、丸いオブジェクトに被された僕の面の皮。
こうして見るとやっぱカッコいいですね、僕の顔は。
「どうです!?素敵だと思いませんか?ワタシは美しいと思う!!」
その生首を両手で、まるで赤子をあやす様に持ち上げ言った。
つか知らねぇよ……お前の感性なんざ……。
さてと……十分遊ばせてやったし、反撃と行こうじゃないか!
まず最初は──
「はっ」はははぅっ」ははははは」はははははは」
舌が無いので上手く声が出せない。
だが無いなりに笑った。俯き小さく…。確実に耳に届く様に。
「そうか分かるか!?よし!では語り明かそうぞ!!」
やべぇ!!裏手に回った!!違う違う!!そう言う事じゃ無いの!!伝われぇぇぇ!!!!
「はっ」はははぅっ」ははは」ははっっっはははは」
「そうか!!では事の始まりから話そう!!アレは……
「ベター様……。申し訳ありませんが……その男はもう発狂しているかと……。貴方様の声は耳に届いていないと……」
「……。そうか、残念だ……。……。殺すな、まだ生かしておけ。ワタシは一度、風に当たってくる」
ナイス雑兵!!オマエは生かしたる!!
「はは」はっっ」はははは」ははっはははは」
ベターが完全に部屋から出るまで、掠れた笑いをくり返す。
もう時期、太陽も沈む。夜になったら動く。それまで待機だ。
「おい…。コイツ、あと何日持つと思う?」
「ここまで痛めつけられたヤツは早々居ない…。もってあと二日あるかないか…だろ」
「で、そのあと俺たちはどうなるんだ?」
「ベターの言いなりだろうな……。この秘密は重要事項だ、外に出したくないだろうしな」
「協会に人間はどうなんだ??あいつ等も…リスクはあるぞ」
「金だけの用心棒に、そこまでの頭はねぇさ。いくら何でも、国とは相対したく無いはずだ」
「そうか……」
「……そうだ」
不安げに話し合う二人の兵。俯き笑う僕。
陽が沈み、もう動き出そうかと思った矢先、部屋の隅にある排水溝から何かがはい出てきた。
兵士たちにとって死角なので気づかれていない。
目を凝らす。暗闇のシルエットが晴れていく──
百足だ。大小様々な百足が川の様に行進し、纏まり人のシルエットを生成した。
そしてその黒い塊は、兵に音殺して近寄ると、見覚えのある黒い剣で見事に首を刎ねた。
「──!!」
その後、すかさずコチラに駆け寄った人影は、僕の無い頬を優しく触った。
なにか呟いている……。耳は無いが…凝らして聞こう。
「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」
聞かなきゃよかった。
「で」
舌を再生させ、不気味な仮面を付けた深紅のドレス姿の彼女に言った。
「助けに来たの?ミラさん?」
「うえぇ!?な、なんのことですかね~。私には一切分かりませんよ~」
ヒューヒューと口笛を吹いている。
あくまでも白を切りたい様だ。この弟子一号は。
「で、何しに来たのさ?」
「ぶ……舞踏会です。……国王に招待されました」
んなわけねぇだろ。どうなったらそうなるんだよ……。
……あぁ舞踏会だからドレス姿なの???今更理解したわ……。
「にしても…最低な国王様ですね。招待されたというのに、一緒に踊るヒトが居ません……。……。御仁、お暇ならば……私と、一緒に……踊って……くれませんか?」
「あぁ、僕も丁度ヒマしていたんだ……」
顔の状態はこの身を以て理解した。だから、いつでも再現できる。
ならばこの瞬間だけ、顔を治しても良いだろう?
両腕の鎖を引きちぎり、両手で顔を覆い、瞬時に完治させた。
そして、右手を彼女に差し出して言った。
「エスコートしますよ?お嬢さん。ラストダンスと洒落こもうじゃないか」
お疲れ様でした。
いかがでしたか?
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自ら捕まりにいったキニスですが、この先どうなるんでしょうね……
次回も読んで頂ければ幸いです!!
では、また~