キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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7話目です。
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第7話 ラストダンス

「今日の稽古は終わりにしよう」

「はい!お師匠!!」

 

 汗だくのミラに手拭いを渡す。

 ここ数日前から、予定を変更して僕との実戦をしている。吸血鬼の能力、変化などを使わない…武器を用いた基礎稽古をしているのだ。

 吸血鬼の怪力が有れば、技量など要らないと思うが……見てみたい。

 極めた技術と怪力の行く先を──

 

 それと……僕等を監視する存在。ミラの正体は隠してきた。吸血鬼だとは誰も思わんだろう。

 最近、僕たちにボロ家を売った老夫婦がお縄になった、と聞いた。

 それで王国の斥候が五月蠅く飛び回っている……と考えられる。死ぬほどメンドクセェ。

 地面に転がる丸太に腰かける彼女の隣に座る。

 

「お師匠よりも力は強いはずなんですが……どうして私の一撃を弾けるんですか?」

「イヤミか吸血鬼???」

「いや!?そ、そんなコト無いです!ただ…疑問に思って……」

 

 ミラは『弾き』と言っているが、毎回彼女の攻撃を弾けている訳ではない。

 自身最高の剣を生成している。しかし強度が足りないのだ。

 僕の愛剣と真祖の怪力。その力の前では、()()()()()()()()()()はとても頼りない。

 

 二回に一回砕け散る。

 もしやこの娘は、武器破壊率100%を目指しているのか?

 

「……。僕はミラよりも非力だからな、直撃は避けているんだ。…剣が壊れるからな。剣先を使ってキミの軌道を調整したり、点で捉えないで…面で()なしたり。自分が非力だから勝てない…なんてことは無いんだ。工夫さ、工夫」

 

 魔法で一本の剣を作成し、刃元や刃先を指でなぞった。

 

「軌道の修正……。あのチョンと当てて来るヤツの事ですね!アレ凄く嫌なんですよ!!!」

「あはははは。じゃあ、もっと気張るんだな」

「はい!……いつかお師匠を下僕に出来るように頑張ります!!!」

「……。楽しみに待ってるよ」

 

 星降る夜空の下、僕はミラに両腕を出す。

 毎度恒例の食事のサインだ。

 わーい、と言い流れるように膝の上に座り、ミラは僕の首に歯を立てた。

 

「このまま、聞いて欲しい」

 

 彼女の背中に腕を回し支える。

 首をガッチリ掴まれているので、やや喋りにくいがこのまま行く事とした。

 

「なにやら……王国が僕等を嗅ぎまわっているようだ……。あの家も…もう灰になっている所だろう」

「……」

「いや、ミラならば僕より早く気づいてただろう?家の方向から火の音が聞こえると」

「……」

「今日で師弟関係は終わりにしよう。ミラの正体は隠しきったつもりだ。キミは一人でも……十分生きていけるよ」

「……」

「僕が時間を稼ぐから…とにかく遠くへ。……そしていずれ…また会おう。僕は僕の夢の為、ミラはミラの夢の為に」

 

 より一層、僕を抱きしめるミラの腕に力が籠った。

 それと啜り泣く音。

 前々から別れの事を話していたんだ。

 

「多少予定が早まっただけでしょ。そう泣くなよ」

 

 笑いながら僕は言った。

 

「うぅ……邪魔さえなければ……もっと……一緒に……居られたのに……!!」

「うはははははは!!!」

 

 爆笑した。ミラは相当、彼らが憎いらしい。

 血を飲むのを辞め、顔を近寄せた少女は僕に宣言した。

 

「いつか絶ッッ対!!私の下僕にして!!私だけのモノにしてやるッッ!!!」

「志が高くて結構!もし、僕の弟子に出会ったら仲良くしてやってくれ」

「もお!!」

 

 この辺りに幻術を掛けているので、斥候が僕等を見つけるまで時間がある。

 

 時間ギリギリまで、ゆっくり最後の時を過ごした。

 談笑したり、血を飲まれたり……

 過去話に花を咲かせたり、血を吸われたり……

 あと血を飲まれ、血を飲まれたりもした。

 

 そして僕は、最初の弟子。ミラと別れた。

 

 

 

「ベター様!!捕らえました!!」

 

 腕を後ろに回され手錠を掛けられている。

 脚にも枷があり、非常に歩きにくい。

 

 夜も明け少し明るくなった空を焦がす様に、あのボロ家が真っ赤に燃えていた。

 飛び散る火の粉。ガラガラと音を立て崩れる床や壁。

 

 もうすっかり燃え尽きたと思っていたが……最期まで耐えてくれていたようだ。

 

「……ただいま」

「貴様ァ!!誰が口を開けていいと…!!!」

「うぇ」

 

 鉄の棒により地に伏せられた。

 口の中に土が入った。ジャリジャリする……美味しくない……。

 

 僕は睨み付けるようにして、周りを確認する。

 雑魚が十二人、まぁまぁが五人。あれは……協会に人間か?

 

 青色のフードを深く被った男が四人。腰に聖鈴と聖水の瓶を装備している。

 一人は大剣で、残りはメイスを装備していた。

 化け物退治のスペシャリスト。彼ら専門家と比べミラは、幾ら真祖とは言え分が悪い。

 ミラを逃がして正解だった……。

 

「おや……アナタでしたか?灰色の髪、青い眼。小奇麗なお顔」

「褒めてんの?ありがとう!」

「ええ……。正直羨ましい……」

 

 そう言って僕に近寄るは、王国の経営顧問&拷問官。悪名高い男、ベターである。

 黒い顔の火傷跡を摩り、ベターは屈む。

 

「この国の英雄……古竜狩りの剣はどこです?」

「この国の英雄…ね…。悪いが知らん、他をあたってくれ。……でもさ、その英雄さん。キミ達のお国に愛想をつかして亡くなったんでしょ?」

「いえ違います。あの方は、後世の為を思い亡くなられたのです」

「……嘘がお丈夫ですね?」

「ええ、アナタも……。連れていけ。城に帰投する」

 

 ハッ!!と声と共に、身体を持ち上げられる。

 持ち上げる、と言っても鎖越し。とても乱雑にだけど。

 

「や、優しく引っ張ってくれ……逃げないから……」

「……」

 

 兵に話しかけても返事は無かった。

 そして僕は、英雄の剣を盗んだ男。王国の虜囚の囚人となった。

 

 少しやりたいことがある。

 だから今は、彼らに身を任せよう。

 

 後で千倍にして返してやる。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 水を少量かけられた。

 この刺すような痛みは塩水だな…と頭の中で突っ込んだ。

 

 それから三日経った。

 

 三日も経つとどうなるか?と疑問が湧くだろう。

 あぁ分かってる、分かってる。

 僕自身でも爆笑するほど痛めつけられた。

 その様は、彼がもう時期『写し出して』くれる。

 さぁ、現状確認と行こうじゃないか。

 

「あぁ起きましたか、ワタシのアナタ……。死んでしまったかと…。いえ、アナタの評判は街で聞いていますので…()()()()()くたばる訳無いと知っています」

「……」

「声も出せませんか……。いや申し訳ない。舌は()()()()()()()()()()()()もので……。…剣は、国王が取り戻せと言っていましたが……その真意はワタシは理解していました。英雄の黒剣は、民衆へ向けた象徴(シンボル)だと。本物かどうかの可否など、最早どうでもいいのですよ……」

「……」

「アナタは捕まり、情報を吐き。ワタシたちは英雄の剣を取り戻し、国が湧く。……そもそも、あの剣は英雄以外使いこなせません。故に……誰も偽物と見破れない」

「……」

「アナタは、もしかしたら剣など奪っていないかもしれません。ですが…この世には犠牲という人柱が必要です。こうして世は動いていくのです」

 

 まぁつくづく…面白い事を考える。

 僕の剣の捜索など、頭から無かった訳だ。

 初っ端から舌を切られた僕は困惑した。一本取られたって訳だ。

 

「もう血も出なくなりましたね……。では……ご確認いただきましょう。ご自身の姿と…ワタシの作品を──」

 

 ベターの背後で直立不動で構えていた二人の兵が、上官の一声と共にカーテンレールを引いた。

 純白のカーテンから大きな一枚鏡が現れた。そしてソコに移る自分……。

 

 両腕を鎖で吊られ、Yの字になっている。

 身体は鞭傷と焼き印。大きな切り傷には、クソ適当な縫い目が。

 顔は皮膚を剥がされ、唇、鼻、耳、瞼すらキレイになくなっている。

 勿論髪も無い。ハゲ頭を余裕で通り過ぎている。

 

 その鏡の横には、丸いオブジェクトに被された僕の面の皮。

 こうして見るとやっぱカッコいいですね、僕の顔は。

 

「どうです!?素敵だと思いませんか?ワタシは美しいと思う!!」

 

 その生首を両手で、まるで赤子をあやす様に持ち上げ言った。

 つか知らねぇよ……お前の感性なんざ……。

 

 さてと……十分遊ばせてやったし、反撃と行こうじゃないか!

 まず最初は──

 

「はっ」はははぅっ」ははははは」はははははは」

 

 舌が無いので上手く声が出せない。

 だが無いなりに笑った。俯き小さく…。確実に耳に届く様に。

 

「そうか分かるか!?よし!では語り明かそうぞ!!」

 

 やべぇ!!裏手に回った!!違う違う!!そう言う事じゃ無いの!!伝われぇぇぇ!!!!

 

「はっ」はははぅっ」ははは」ははっっっはははは」

「そうか!!では事の始まりから話そう!!アレは……

「ベター様……。申し訳ありませんが……その男はもう発狂しているかと……。貴方様の声は耳に届いていないと……」

「……。そうか、残念だ……。……。殺すな、まだ生かしておけ。ワタシは一度、風に当たってくる」

 

 ナイス雑兵!!オマエは生かしたる!!

 

「はは」はっっ」はははは」ははっはははは」

 

 ベターが完全に部屋から出るまで、掠れた笑いをくり返す。

 もう時期、太陽も沈む。夜になったら動く。それまで待機だ。

 

「おい…。コイツ、あと何日持つと思う?」

「ここまで痛めつけられたヤツは早々居ない…。もってあと二日あるかないか…だろ」

「で、そのあと俺たちはどうなるんだ?」

「ベターの言いなりだろうな……。この秘密は重要事項だ、外に出したくないだろうしな」

「協会に人間はどうなんだ??あいつ等も…リスクはあるぞ」

「金だけの用心棒に、そこまでの頭はねぇさ。いくら何でも、国とは相対したく無いはずだ」

「そうか……」

「……そうだ」

 

 不安げに話し合う二人の兵。俯き笑う僕。

 

 陽が沈み、もう動き出そうかと思った矢先、部屋の隅にある排水溝から何かがはい出てきた。

 兵士たちにとって死角なので気づかれていない。

 目を凝らす。暗闇のシルエットが晴れていく──

 

 百足だ。大小様々な百足が川の様に行進し、纏まり人のシルエットを生成した。

 そしてその黒い塊は、兵に音殺して近寄ると、見覚えのある黒い剣で見事に首を刎ねた。

 

「──!!」

 

 その後、すかさずコチラに駆け寄った人影は、僕の無い頬を優しく触った。

 

 なにか呟いている……。耳は無いが…凝らして聞こう。

 

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

 

 聞かなきゃよかった。

 

「で」

 

 舌を再生させ、不気味な仮面を付けた深紅のドレス姿の彼女に言った。

 

「助けに来たの?ミラさん?」

「うえぇ!?な、なんのことですかね~。私には一切分かりませんよ~」

 

 ヒューヒューと口笛を吹いている。

 あくまでも白を切りたい様だ。この弟子一号は。

 

「で、何しに来たのさ?」

「ぶ……舞踏会です。……国王に招待されました」

 

 んなわけねぇだろ。どうなったらそうなるんだよ……。

 ……あぁ舞踏会だからドレス姿なの???今更理解したわ……。

 

「にしても…最低な国王様ですね。招待されたというのに、一緒に踊るヒトが居ません……。……。御仁、お暇ならば……私と、一緒に……踊って……くれませんか?」

「あぁ、僕も丁度ヒマしていたんだ……」

 

 顔の状態はこの身を以て理解した。だから、いつでも再現できる。

 ならばこの瞬間だけ、顔を治しても良いだろう?

 

 両腕の鎖を引きちぎり、両手で顔を覆い、瞬時に完治させた。

 そして、右手を彼女に差し出して言った。

 

「エスコートしますよ?お嬢さん。ラストダンスと洒落こもうじゃないか」

 

 

 




お疲れ様でした。
いかがでしたか?

お気に入りや感想も頂けると励みになります!!
気軽に頂ければ嬉しいです!!!!

自ら捕まりにいったキニスですが、この先どうなるんでしょうね……
次回も読んで頂ければ幸いです!!

では、また~


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