キミの魔王になりたくて   作:赤い靴

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8話目です。
楽しんで読んで頂ければ嬉しいです!!
誤字脱字など有りましたら連絡頂きたいです。


第8話 相対するひとつ

 再度顔を元に戻し、純白のカーテンを破り、包帯の様に顔を覆う。

 首を刎ねられた兵の服を拝借し、剣を拾う。

 適当に暴れるには、この剣一本で十分だ。

 

「ミ……いや。お嬢さん、名前は?」

 

 ミラという事はバレバレなのだけど、彼女なりに頑張って変装している。

 ならここは、ノリに合わせるのが良いのだろう?

 

「な……好きに読んで頂いても、かまいません……わ」

「じゃあ……」

 

 赤色のドレス。安直だが、これでいいや。

 

「赤ちゃん」

「もっと良い名は有りませんか!?」

「赤色ちゃん」

「そうでは無くて……」

「ならいっそ、ミラでいいだろう?」

「……じゃあ…そうします」

 

 そう言ったミラは一つ深呼吸をした。

 

「行きましょうお師匠!最期の夜です!楽しみましょう!!」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 腰を抜かし、これでもかと言う程に壁に密着する若い兵に向かって、僕は恨めしそうに言った。

 

俺の顔の皮(おへおはわのはあ)その代わりとして丁度いい(ほのかあいとしへほぉほいい)

「ひぃぃいいいぃいいぃい!!!!」

 

 血でぬれた包帯を外し一歩、また一歩と近寄る。

 舌が無い設定なので、喉を鳴らす様に声を出す。

 兵の頬を力強く鷲掴みする。顔を近寄せ、左手で鼻、耳、髪に触れる。

 そして──

 

 若い兵士は失神した。股間を仄かに湿らしながら……。

 

「お師匠……さっきから……ナニやっているんです?」

「何ってアレよ。印象固定、僕の偽装死体の為の布石…。適当に暴れたら退散するだろ?その帰り道に、僕と同じ顔の死体を転がせば、この兵士は「あの男で間違いありません!!」って言うだろ?人間の判断は、第一印象が決め手とな……。ここまでトラウマを植え付ければ、勝手に僕は死んだことになるさ」

 

 顔の包帯を巻きなおし、ミラに言った。

 拷問室、地下牢を登り城内を駆けた。地下牢がある城は、本城とは離れている為に兵の数が少ない。

 一人でも多く、僕の顔を記憶させるので、あちこち走り回る必要があった。

 

 その所為で僕の脱走が大々的に知れ渡ってしまった、が別にいいや。

 どうあがいても、僕の存在は死なないといけないから……。

 こうして失神させるのも十人を超えた。もう良い頃合いだろう。

 

「ミラ、もう時期脱出するぞ。僕は死体を貰って出ていくから……」

「お師匠は……?」

「まだやることがある……」

 

 騎士長アラミスを筆頭に、中には気づいてしまう『変態』が居る。

 今回の場合、拷問官ベターが最たる例だ。

 

 彼には彼の()()があるようで、そこの住民では無い僕の偽装作戦は、ベターには筒抜けだろう。

 僕が古竜を殺す事だけに執着したように、その手の専門家はとても手強い事を知っている。

 故にベターを殺す。この三日間、僕を虐めてくれたお返しも込めて。

 

 彼の居場所は凡そ把握している。

 ここから一番近い裏門、その大広間。

 そこで脱走する僕を待ち構えているのだろう。

 

「私も戦います。あの顔の無い男……!!私が成敗します!!」

「分かった分かった……。じゃあ僕の劇に付き合って貰うからな」

 

 僕はミラに今後の展開を伝えた。

 本来僕一人で行うはずだったが、ミラが居る。

 入念な打ち合わせは必要だ。

 

「……分かりました。お師匠が……どんな状況になっても、助太刀しないことを…約束します」

「よしよし良い子だ。じゃあ行きますか、彼が首を長くして待ってるからな」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 松明と輝石で照らさせた大広間は闇を払い、王国の熟練の兵士五名と、協会のゴミ処理屋が四人。

 たかだか脱走者一人と共犯者一人。

 その排除に大勢は必要ない、と理解したベターは「ふん」と鼻を鳴らした。

 

 古びた城。今や拷問専用と化した城からは、遂に誰一人として兵が帰ってくることは無かったからだ。

 

「ベター様……増援をお呼び

「要りません。……ここで討ち取ります。その為に()()()()()()()()から……。バレてしまえば、国王に叱られてしまいます」

 

 大きなマントを風に靡かせるベターはそう言った。

 それと同時に、一同の視線の先。そこから二人の姿が現れた。

 ベターは斧槍(ハルバード)を構えると同時に、周りの兵も武器を抜いた。

 

「協会の方々……首一つ小金貨一枚でどうでしょう?」

「おぉ!?羽振りが良いな!……袖を通してなら、より嬉しいが……」

「分かりました。アナタたちの上官には黙っておきましょう」

「行くぞお前たち!!」

 

 大剣を担いだ男が、青いフード姿の部下に言う。

 それに続き、ベターの背後で構える熟練の兵も前進した。

 ベターは焼けた顔を歪ませた。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 王国の兵と協会の連中が前身してきた。

 意気揚々に、肩で風を切っていますが……。

 本気で僕達に勝利出来ると思っているらしい。

 

「よしミラ……」

 

 僕は小声で彼女に耳打ちする。

 

「僕的には、協会の連中を相手にとった方が、良い稽古になると思うんだが……どうする……???」

「ベター拷問官を殺します」

「あっ……そうですか……分かりました了解です……」

 

 仮面越しだが、相当ブチ切れていらっしゃる。

 つうか、師弟関係は消滅しているので今更、稽古だなんだは関係ないよな……。

 

「いってきます」

「……おう、気張ってこい」

 

 そう返し、ミラは王国兵に方に駆けて行った。

 

「チッ…!!足の早ぇヤツだ……。まぁいい、俺たちは今にも死にそうな包帯野郎だ。楽な仕事で金が入る……全くもって最高だろ?」

 

 僕は剣を構える。

 虚弱に見せる為、左腕はブラブラと揺す。

 僕が今やるべきタスクは、ミラの勝負が終わるまでダラダラ戦いを引き延ばす事だ。

 

「死ねぇ!!!」

 

 男が持つ大剣が、横に大きく振るわれる。

 数歩後ろに下がり避け、前に踏み来むと同時に男の横腹を浅く斬り付ける。

 まだ殺しちゃいけない。彼女が終わるまで、手を抜かなければならない。

 そう思うとため息が出た。

 

「ッう!?」

「隊長!?……おのれ!!罪人風情が!!」

 

 協会に一人が、魔法を唱えた。

 まぁまぁの威力の炎魔法……。くらっとくか……。

 

 放たれた火の玉を受けた僕の身体は、一瞬で炎に包まれた。

 魔法使用者の練度が低いので、炎は直ぐに無くなった。

 包帯が焼け落ち、現在の歪な顔を光が照らす。

 

「…!!この……化け物が!!」

 

『化け物』。よく言われた。よく貶された。

 第二次古竜狩りで、顔と片足を失った僕に、周りの人間がよく言っていた。

 心弱きが故に、僕は一人山に籠った。

 

 お前たちを苦しめていた古竜。その狩りに参じた僕がだぞ??

 満身創痍で帰還した僕にだぞ??

 当時の僕は、人間が怪物に見えた。

 

 ……それと同時に彼らもまた、生き恥を晒す僕を怪物に見えたのかも知れない。

 彼らの心は、最後まで判らなかった。

 

「陣形を組め!!……どうやら安い相手では無さそうだな」

 

 大剣の男の前に、二人の男が盾を構えた。

 その後方、杖と短剣を左右に持つ二人組。

 協会の五人は、慣れた動きで位置に着いた。戦い慣れしているようだ。

 

 僕は剣を前に出し手招きをした。

 まだ時間は沢山あるんだ。少し遊ぼうか。

 

「挑発に乗るなよ新入り…。……さあ行くぞ!!我ら協会の旗の下、負けは断じて許されぬ!!神に選ばれた英雄のような勇ましさをッ!!!!」

「「「「ハッ!!」」」」

 

 活を入れ直し、鋭い眼光がコチラを覗く。

 退屈はしなさそうだ…!!

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 ミラの振るう黒剣により一人、また一人とボロ雑巾の様に崩れゆく。

 

「素敵な怪力だ……。まさか黒剣を盗み出したのが、吸血鬼とは微塵も思いませんでした…」

 

 ベターはミラを舐めるように見て言う。

 

「最初の時は…殺しきれなかった。だけど今は…!!」

 

 ミラは仮面を外し、最後の一人となったベターを睨み付け言う。

 

「逃がさない」

 

 一歩、また一歩近寄る。

 

「お師匠は優しいから……前の人と同じ様に、幸せに殺すだろうな……。だけど、私がアンタを確実に殺す……!!」

「そうですか……そうですね。ワタシは拷問を生業としていますので……憎まれるのには慣れています。では吸血鬼。アナタはワタシをどうやって殺してくれるのですか?」

「叩き斬る!!」

 

 ミラはベターとの距離を詰める為、一気に駆け寄った。

 

「元気が良くて大変よろしい。この装備を使うにはコレと無いお相手です。……英雄殿の数ある名…その『黒騎士』をアナタに教えてあげましょう……!!」

 

 左手に持つ黒色の(ヘルム)を被り、ミラの重たい一撃を斧槍で受け止める。

 その衝撃により、ベターを包みこんでいたマントが空を飛ぶ。

 月明りと輝石により、その姿を現した。

 

 古竜の業火に焼かれ、黒く変色した伝説の鎧。

 英雄、古竜の血肉や、その場所でしか採取出来ない希少な鉱石と濃密なマナが溶け固まった。

 奇しくも冷え固まったそれらは、竜の如く姿であり、敵対する者共を怖じ気つかせた。

 

「どうですか吸血鬼?通常のワタシならば、アナタの一撃は受け止められませんでした。しかしワタシには……彼の遺物がある…!!」

 

 ミラとの(せめ)ぎ合いに勝利し、大きく仰け反った彼女の首を狙いハルバードを振るった。

 だが、ベターの刃先は目標を大きく外した。

 それと同時にバランスを崩したベターは、片膝を地につけた。

 

 一本のナイフが左の足首。鎧の間に出来た隙間に深々と刺さっていた。

 

「あの男ですか…!?なんと器用な……」

 

 ソレを素早く引き抜き、顔を上げる。

 ベターは、再度迫りくるミラに向かってそのナイフを投げつけた。

 頭部に当たると否や、雲の様に姿形を消していく。その残雲の中、鋭く放たれたミラの突きがベターを襲う。

 斧槍をクルりと回し突きをいなす。負けじとミラは剣を振るうが、全て弾かれてしまった。

 

「この遺品を使いこなすには時間が掛かりましてね……。その間に、我が王国の戦線は押されてしまいましたよ」

「へえそうなんですか……。……英雄の装備を使えこなせる逸材を失った王国は、一体どうなるんですかね……?」

「ワタシがアナタに負けるとでも…?」

「ええ勝ちます。貴方の手癖は見切りました」

「ハッタリと思われますが……そうだとワタシは嬉しいですね」

 

 双方は武器を敵に向けて構え直した。

 冷たい風が吹く夜の中、かの英雄の愛剣と愛鎧は相対していた。

 その持ち主は、当初の計画が破綻し一人苦悩していた。

 

 

 




お疲れさまでした。
いかがでしたでしょうか?

ベターはキニスの鎧を着込み、ミラとの戦いとなりました。
その斧槍も古竜狩り時に作成した一つです。
剣と比べランクは下がりますが、それでも一級品です。

また次回も読んで頂ければ嬉しいです!!

では、また~
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