「酪農は楽ですのう」とかシャレー(山小屋)にもならんわ。穀物栽培に不適なだけあって草も生えない 作:フェイト・テラロッサ(地中海沿岸)
オリジナル:歴史/日常
タグ:地理 酪農 ヨーロッパ ポルダー(オランダ) デンマーク スイス(中立国)
ちっ、千反田ぺるー海流……!?
むかしーむかしーあるところー
三圃式農業がありましたー
そしてー衰退しましたー
ちーき☆ぶんか!
私は旅するスーパー似非理系人間。今日は念願のヨーロッパ旅行です。
日本よりはやや気温が低いですね。涼しいです。スイスのアルプス山脈の美しいU字谷は一回ぐらい拝んでみたいところです。
お土産屋さんでも見てみましょうか。
近くにそれらしきお店があったので入ってみると、どうやらお土産屋さんではなくスーパーマーケットだったようです。こりゃうっかりなのです。まぁ、せっかくなので見ていきましょうか。
やたらと品揃えの良い冷凍食品コーナーにサヨナラバイバイして食品コーナーへ。通路を少し歩くと、あるコーナーの一角に人だかりが出来ていました。
「あやしがりてよりてみるにー」
少し覗こうか、と思っただけなのですが、後ろから押されてあれよあれよと人だかりの中に。人間に取り囲まれて動けなくなってしまいました。これがヒートアイランド現象ですか。違いますね。
しかし、騒動の中心部分を覗ける位置です。このまま戻っても流され損なので、騒動を見ていきたいと思います。
そこは食品コーナー手前の試食コーナーでした。『協同組合組織』とプリントされたワッペンを付けたおじさんが、ベーコン片手に男性と言い争っていました。
「とうとう営業妨害か、ポルダー。お前らがおらんだらどんなに楽なことか」
「貴様こそ休日に家族貢献しなくて良いのかい、デンマーク。おっと、そういえば家族労働が家訓でしたな。これは失礼」
むちゃくちゃ剣呑としていました。EUで築かれた結束はどこへ行ったのでしょうか。ユーロと共に屑と化したのかもしれません。まぁ、私はEUの加盟国がどこか知りませんけど。
そうして、ぼんやりとベーコン片手のデンマークさんと営業妨害のポルダーさんのヨーロッパ式レスバトルを見物していると、野次馬のひとりに話しかけられました。
「なぁ、あんた観光客だろ? 東洋人が何だってこんな所に?」
「あぁ……えーと、お土産とか買いに」
「それならこれを買うと良い」
野次馬さんから2つの商品が渡されます。黄色いパッケージに牛さんのイラストが描かれていました。いかにも、「いうろぷ!」といったデザインです。
「これは、チーズとバター……でしょうか」
野次馬さんは満足そうに頷きました。
「これはな。あそこのポルダーさんの所のチーズとバターだ」
営業妨害さんは乳産品を作っているのですね。いや、それが私にとって何だと言うのでしょう。それわた。
今現在、目の前で醜い生産者表示が行われている商品に一体誰が購買意欲をそそられると言うのでしょうか。それとも「はよ帰れ」的な、いうろぴあんじょーくなのかも。
と、エレベーターよりも下らないことを考えていると、反対側からまた野次馬のひとりに話しかけられました。(エレベーターは下るだろって? はは、じゃぱにーずじょーく)
「ヘイ、チャイニーズ! チャオ! チャイ飲むかい?」
「チャイニーズではありませんし、チャイをニーズもしてません」
「じゃあ、ソウルブラザーだ! いや、やっぱりチャイニーズだろ、You!」
「固定観念の監獄にでも囚われているんですか? ジャパニーズですよジャパニーズ」
野次馬さん(Ⅱ)は私の空いていた左手にバターを押し付けました。『多角的農業』のキャッチコピーに嘘偽りはないようで、お値段も高くて買う気にもなれませんでした。
「干拓地のミルクなんて見る価値ナッシング! 1hαに1頭は牛が存在するデンマーク産のチーズをチョイスしな! それがバターな選択だぜ! ベターだけにな!!」
「穀物栽培に不適な土地だけあって草も生えないギャグですね」
どうやらデンマーク氏 vs ポルダー氏だけでなく、それに釣られてこの店全体でデンマーク一派 vs オランダ一味のバトルが勃発してるみたいです。 別に喧嘩する必要あるんでしょうかね。競合他社を潰したいならもっと他にやりようはあるはずです。
同じ酪農地域としてオセアニアでは常識なのかもしれませんが、セントローレンスはもっと広い心と入り江でしたよ。
「あの……私はそろそろ移牧しますので……」
颯爽と人だかりから抜け出し、店を出ようと栽培限界まで移動します。出口のレジ付近で『夏アルプ』という乳菓子を買っていきました。土地が冷涼だからといって、冷やかしはよくないですしね。謝礼にオススメのお菓子らしいです。
そういえばこれはオランダ産、それともデンマーク産なのかしら。ちょっと気になってパッケージの裏側を見ると、スイス産でした。
「流石は永世中立国……!」