ネタバレ注意!

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON のネタバレを含みます!!

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ARMORED COREⅥ 短編

 

・・・【レイヴンの火】を起こして、もう何年経過したのだろう。

この、誰もいないルビコン3で生き続けて・・・もう何年目なのだろう。

 

赤く染まった空は、鈍い灰色の雲がに覆われて・・・コーラル交じりの雨が降っている。

その雨を、機体()で受け止めて、メインカメラ()をみぞれ交じりの雨雲に向ける。ジェネレーター(心臓)がやけに静かで、無くしたはずの心が落ち着いてゆくのを感じる。

 

キィイイイインーーー・・・

 

耳鳴りがなった気がして、凛とした女性の声を期待する。けれど、そんな声は聞こえるはずもなかった。

そもそも、すでに肉体(本体)は朽ち果て、意識のみがこの機体・・・『デイブレイク』に残った今、果たして耳鳴りはするのだろうか?

私の飼い主(ハンドラー)はどんな顔をするのだろうか、私を客人(ビジター)と呼んでくれたカーラは面白がってくれるだろうか、私を戦友と呼んでくれた(ラスティ)は今の私でも戦友と呼んでくれるのだろうか、その最期まで私を野良犬と罵倒したイグアスは今度はどんな罵倒をするのだろうか。

OS()の中で、そんな言葉が浮かんでは、雨に溶けてゆく・・・。

 

 

=====

 

<メインシステム、戦闘モード起動。>

『・・・621、仕事の時間だ。』

「っ!?」

 

瓦礫だらけの町の中で、コーラルの雨に打たれていたはずの私は、いつの間にか見慣れない荒野に立っていた。

そして、聞こえるはずのなかったハンドラーの声に・・・赤くないルビコンの空に、驚いてしまう。

 

『621、どうした?心拍数が上がっているぞ。』

「・・・・・・。」

 

心、拍数?私は・・・私の肉体(本体)はもうとっくに朽ちているはずで・・・

ペタペタと、ACではなく肉体(本体)の手で、自分の体を触る。ほとんどが機械化されていて・・・それでも少し暖かい自分の体。

機能以外が死んでる・・・くそったれで、懐かしい身体。

 

『・・・621?』

「・・・。」

 

仕事、あぁそうだ・・・ハンドラーが持ってきてくれた仕事・・・やらないと。

 

『・・・やれるんだな、621。作戦開始だ。』

「・・・!」

 

ハンドラーからの期待に応えるため・・・私はデイブレイクを動かした。

 

 

 

仕事は簡単に終わった、ルビコン解放戦線のMTが相手では、どれだけ数を揃えようと私にすべてスクラップにされてしまうのに。

・・・とはいえ、ルビコン解放戦線のMTを見ること自体も久しぶりだ。どうにも、心がおどってしまう。

 

『目標の全滅を確認、621・・・仕事は終わりだ。帰ったら、ゆっくりと休め。』

 

 

 

 

『・・・レイヴン?』

 

また、いつの間にか私は、知らない雪原に立っていた。懐かしい耳鳴りと共に、凛とした女性の声が頭の中で響いている。

先ほどまでハンドラーの声のなつかしさに浸っていたのに、今度は・・・エアの声が聞こえてきている。

どういうことなのだ、瞬きをした瞬間に・・・移動しているのか?

 

『レイヴン、調子が悪いのですか? 今回の仕事は、やはり受けるべきではなかったのでは・・・。』

「・・・。」

『大丈夫、ですか。分かりました・・・では、アーキバスのMT隊を撃破してください。』

 

仕事、ということで意識をすぐに切り替え、エアに無事であることを伝える。

デイブレイクを動かし、アーキバスのMT隊に向けて、アサルトブーストを点火し・・・一気に距離を詰めた。

 

 

『アーキバスMT隊の撃破を確認・・・お疲れ様です、レイヴン。』

 

耳鳴りと共に優しげな声が響く・・・レイヴンの火で焼き払ってしまった彼女。あの時の私は、ウォルター様の意志を引き継いだ。

だから・・・・・・コーラルであるエアを焼いて、ルビコン3だけでなく宇宙を焼き払ったのだ。

けれど私は何よりも彼女に・・・言いたいことがあったのだ。

 

「・・・。」

『すまない・・・ですか? そ、それは・・・なにに対して、ですか?』

 

私が脳裏に浮かばせた謝罪の言葉は、エアには分からなかった。当然だ、このエアは・・・私に焼き払われたことを知らないのだ。

()()()()()()に・・・それを知るすべはないのだから。

 

 

戦闘中、ふとMTの動きが妙なことに気付いた。MTの動きが、やけに人間のようだったのだ。

MTやACのマニピュレーターは、本来は関節軸に存在するモーターにしか動かないはずが、人間の腕のように動いていたのだ。

そこで・・・私は、先ほどのハンドラーとの仕事も・・・エアとのこの仕事も、夢であることに気付いたのだ。

そして、これがおそらく・・・私の虫の知らせ・・・走馬灯というやつなのかもしれない。

 

『・・・レイヴン?』

「・・・・・・ありがとう、エア。」

 

最初で最後の、夢であるが故の感謝の言葉を口にする。

 

『レイヴン・・・あなた、声がっ。待ってください、レイヴン・・・レイヴン!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・メインカメラ()が、起動する(覚める)

ジェネレーター(心臓)から送られるエネルギーが、機体(身体)のあちこちへと流れて・・・私の背後に着陸したACにたいして振り返る。

見たことのないパーツで、見たことのないAC用武装。だが、見たことのないパーツは、どことなく・・・アーキバス系列のシュナイダーのようで、機体の左肩に貼られている十字架を背負うカラスのエンブレム・・・・・・あぁ、そうか。あのACのパイロットは、私を眠らせに来たのだろう。

・・・だが、私もタダで眠るわけにはいかなかった。仮にも私は罪人だ、多くの傭兵を殺し、エアを焼き払い、レイヴンの火で多くの命を奪った罪人だ。

この首を簡単に差し出してやるわけにはいかない・・・なにより、私が負ければ”ウォルターの猟犬”に傷がついてしまう。

 

<メインシステム、戦闘モードを起動。>

 

 

私の首が欲しいなら、私を殺して見せるがいい。

 

 

私は、アサルトブーストを起動し・・・その機体へと、突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「              」

 

その優しく温かい声は、果たして・・・どちらの声だったか。

 

<メインシステム、通常モード機動。>


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