ベル、子兎になる   作:キタムー

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キャラ崩壊注意です


番外編 幸運ノ兎

 

「やあ、ベル・クラネル。難しい話ばかりで暇だっただろう?」

 

それは、掘り炬燵形式の居酒屋でベルの歓迎会という名目で開かれた、ベルの秘密を強制的に選出された協力者達(アナキティ・ラウル・ベート)に共有する会にて。

フレイヤについての注意事項などを含めた全て(厄ネタ)の説明を行い、団員(ラウル)達に頭痛と腹痛の種を植えつけ、ガレスに後の対応をぶん投げてきたフィンは、ポケットからトランプを取り出した。

 

「ポーカーは知ってるかい?」

 

「しってます!前におじいちゃんと本のかずをかけてあそびました!」

 

「本の数?はよく分からないけど、それならよかった。でも、どうせならもっとスリルが欲しくないかい?」

 

「すりる、ですか?」

 

首をかしげるベルにニヤッと笑って見せたフィンは、リヴェリアの方に目を向ける。

 

「リヴェリア、久しぶりに勝負といこうじゃないか」

 

「……フィン、酔いすぎだ」

 

「おや、怖いのかい?なら仕方ない。僕があまりにも勝ちすぎたらお金は返してあげるよ。君は——」

 

その子を信頼できないみたいだからね

 

「……そうだな。私も酔いがまわってきたようだ」

 

ストレスでも溜まっていたのか、口には出さなかったものの不敵な笑みで雑にそう挑発してきた小人族(パルゥム)に、リヴェリアは目の笑っていない笑みを返す。

そして、懐から財布を取り出した。

 

「ベル、これを使え」

 

「え?いいの?」

 

フィンが持ちかけてきたのは、現金を賭けたポーカー。

夜に読んでもらう本の数、なんてものよりも遥かにスリルを感じられるものを賭けた遊戯(ゲーム)だ。

 

「ああ。あの生意気な小人族(パルゥム)から好きなだけ巻き上げてやれ」

 

「わ、わかった」

 

思ったより話が大きくなっている事に戸惑いつつも、ベルはフィンと向かい合う。

 

ベットの最低額(ミニマム・ベット)は百ヴァリスで、とりあえず十回勝負をしようか。じゃあリヴェリアママ、親はよろしく」

 

「……ああ」

 

イラッとしつつも、酒の席で怒るのは気が引けるため、仕方なく頷いたリヴェリアは静かに山札を切り始めた。

あの憎たらしい顔が歪むよう、柄にもなく数少ないマトモな神々に祈りながら。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

リヴェリアの祈りは、思いのほか早く届いたらしい。

 

「ハートのフラッシュだ!」

 

「6のフォーカード、です!」

 

「……や、やるね」

 

「ありがとうございます!」

 

十戦全勝(・・・・)

最後の最後にせめて一勝はしてやろうと、ブラフ半分に強気の自殺行為(リリレイズ)を敢行したフィンの財布は、すっかり薄っぺらくなっていた。

 

「ワハハハハッ!フィン!格好つけておったくせに盛大にやられておるではないか!」

 

ベートやラウルにどんどん酒を飲ませながら時々勝負を覗いていたガレスは、頭を抱えるフィンの背中をバンバンと叩き豪快に笑う。

 

「じゃあガレス、君もやってみるかい?」

 

「任せておれ。大体、いつもお主は変に考えすぎるのがいかんのだ。まっすぐ突き進めばいつか道は——」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

十数分後。

 

「フルハウスです!」

 

「ぐぬあぁ!?おのれリヴェリアママっ……どんな手を使いおった!」

 

「馬鹿者。このような遊びの場で汚い手など使うものか。それとその呼び方はやめろ」

 

役無し(ノーハンド)の手札を放り投げるガレス。

ベルの眼前には、ヴァリスの塔が出来上がっていた。

 

「ジジイ、代われ。俺がやる」

 

騒ぎを聞きつけてやってきたベートがドワーフの肩を叩き、席に座る。

気がつけば、個室にいる者全てがポーカーを見に集まっていた。

 

「くっ……無念じゃが、仇は頼んだぞ」

 

「ハッ……勘違いすんな。俺ぁただ、雑魚と雑魚をボコって調子に乗ってる雑魚が気に食わねぇだけだ」

 

「それ何気に団長達のこと貶してるっすよね?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

数分後(以下略)

 

「ババアっ!イカサマしてんじゃねぇだろうなぁ!」

 

「誰がババアだ」

 

「ガフッ!?」

 

「ベートさーん!?」

 

「ラウル!ベートの仇を討ってくれ!」

 

「自分がっすかぁ!?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「クソが!もう手持ちが無え!」

 

「いや待て、儂らの手持ちを全て合わせれば、一度だけ挑めるぞ」

 

「でも、誰があの子に勝てるんすか?ここはもう降参した方が……」

 

全戦全敗した冒険者達に僅かに残されたヴァリス銅貨が、各々の財布の中に転がっている。

未だ少年の手にはかかっておらず、所有権が彼らにある銅貨達は、しかし使い手達の意思と同調するように、鈍い光沢しか放てない。

そこには彼らの主神(ロキ)がわりと頻繁に見ている荒涼とした景色が広がっていた。

 

「……」

 

その中で、フィンは。

酒に濡れた口元を乱暴に拭い、席につく。

黄金色の髪を揺らす小人族(パルゥム)は、リヴェリアに目配せをした。

 

「……君たちに『勇気』を問おう」

 

「「「!?」」」

 

瞠目する冒険者達を、彼は横顔を向けて見やる。

 

「その目には、何が見えている?恐怖か、絶望か、破滅か?僕の目には倒すべき敵、そして勝機しか見えていない」

 

配られた手札からカードを二枚捨て、更に二枚受け取った彼は、仲間達にその希望を見せつける。

 

「「「なっ!?」」」

 

ストレートフラッシュ。

ポーカーにおいて二番目に強い役だ。

 

「退路など不要だ。この役をもって道を切り開く」

 

毅然とした声音で断言し、その意思の眼差しでガレス達を見つめた。

 

女神(フィアナ)の名に誓って、君達に勝利を約束しよう——ついてこい」

 

ガレス達の胸が、ラウル達の瞳が、ベート達の手が震える。

そんな彼らを呆れた顔で眺めていたリヴェリアは、それとなくベルの手札を確認し……冷たい笑みを浮かべた。

 

「そうだな。フィンがこれで勝ったら、これまでの分を全て返してやろう」

 

そう言って、ベルの両脇に積み上がったヴァリス貨幣(バベル)の塔を指し示す。

 

「その代わり、これで負けたら貴様ら全員一週間食事当番だ」

 

「ちょ、嫌な予感が——」

 

「それとも」

 

リヴェリアの宣告を聞いたラウルの言葉(迷い)を断ち切るように

 

「君達にとってベル・クラネル()の相手をするのは、荷が重いかい?」

 

煽りの天才は笑みを浮かべた。

 

「……ハッ、面白ぇじゃねぇか。乗ってやるよ、フィン!」

 

「冒険者は冒険をしてこそよ!なあ!ラウル!」

 

「それ自分のお金っすよね!?これ断れないやつじゃないっすかぁ!?」

 

ベートとガレスが机に銅貨を叩きつけ、ラウルが頭を抱える。

 

「リヴェリアさんのあの笑い方は絶対ダメなやつですって!」

 

「大丈夫さ、ラウル。リヴェリアママの笑顔が怖いのはいつもの事じゃないか」

 

「フィン……後で覚えておけ」

 

「怯むな!行くぞ!」

 

彼らの偉業を後に聞いた女神(ロキ)は驚嘆し、賞賛した。

 

「ダイヤのストレートフラッシュだ!」

 

「ロイヤルストレートフラッシュです!」

 

『なんてコッテコテなフラグ回収なんだ』と、腹を抱えて笑いながら。

 

 

◇◇◇

 

 

「明日はティオナ達と買い物にでも行くか」

 

「……フィンさんたちは大丈夫なの?」

 

「なに、あの酔っ払い達にはいい薬になっただろう」

 

「い、痛っ!あ、アキ!耳引っ張らないでほしいっす……!」

 

「自業自得じゃない。まったく、いくら相手がベル・クラネルだからって、子ども相手に寄ってたかって大人気ない真似をして……」

 

親子と恋人未満が和気藹々と部屋を後にする。

そんな中で、『会計は頼んだ』と冷血ハイエルフに残された敗者達は、言葉無くただただ乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 

「お会計お願いしゃーっす」

 

「……ガレス、ベート、手持ちは?」

 

「フン……分かっておるだろうに」

 

「聞くな」

 

「ハハハ…………ツケって、きくかい?」

 

 

 

 

後日、事の顛末を聞いたロキに未成年立ち入り禁止のカジノへ連行されかけたベルがとある酒場のエルフ店員に保護されたり、報告を受けたリヴェリアが主神の酒コレクションを全て売却したりするのだが……それはまた別のお話。

 





ラウルは巻き込まれたようなものだったので、アナキティーネの軽い折檻で許されました。


ダンまち二次創作歴が読みでも書きでも浅い若輩者なので、この展開既出かな……わりと使われてたりするのかな……まあええか!という気持ちで書ききりました。後悔はしていません。
既出だったらごめんなさい。
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