原作知識を駆使してシロナさんを釣ろうとする前に全然違うヤツが釣れる話   作:鹿頭

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ちょっと江戸で聖杯戦争してました。


十六話

 

 

「わたくしは……ノボリ…だったような」

 

 邪神を殴らねばならぬ───

 しかし生憎一文無しでお金がない。

 けれども邪悪に関しては人一倍に敏感であった。

 こんな事があって良いのか!!!

 おのれアルセウス絶対に許さんぞ!!!

 

「もしかして……消えたライモンシティの!? まさかこんなとこにいるなんて……!」

 

 コウキくんが驚きの声を上げる。

 やっぱり有名人なんだ、ノボリさん。

 ライモンシティの名物は遠くシンオウまでその名を轟かせていたらしい。

 

 というか居なくなってたのかノボリさん。

 

「ライモン……ひどく懐かしい気がする言葉です」

 

「それにしては───なんか、その。歳を」

 

 だよね。

 ノボリ ヒスイのすがたは歳取ってるもんな。そうなるよね。

 

「以前、あなたさまをどこかでお見かけしたような……?」

 

「ボク…ですか? その、ノボリさん?とは直接会ったことは……」

 

「そう、でしたか」

 

 肩を落とすノボリ。

 これは記憶を再びどこかへ落っことしてしまったのは間違いないだろう。

 

「どうにかなりませんか……?」

 

「エイチ湖に坐すユクシーの瞳を見たものは記憶がなくなるとか、知恵を人に授けたという話はある……けど」

 

 縋るような目をしたコウキくんだが。

 

 実際ユクシーのヤロウは記憶を消したりしても戻すことができるかわからないんだよな。

 それに最初にヒスイに飛ばされたノボリさんの記憶を消した犯人疑惑もあるしな。

 

「ユクシーって…あの、黄色い?」

 

「うん? ……ああ、ギンガ団の本部で見たことがあるのかな?」

 

「はい」

 

「なら…助けた恩を盾に強請ってみるのもアリか……?」

 

「ゆ、ゆするんですか?」

 

 ヒスイ時代、今まさに世界が滅茶苦茶になってる癖して試練与えてくるような奴らだし。

 そんくらい強気に出てもいいと思うぞ。

 

「……強請るのは一先ず置いときまして。差し出がましい事ですが、どうかそのユクシーとやらに会わせては頂けませんか?」

 

「記憶が確実に戻ると保証は出来ません。それでもよろしければ」

 

「他に手掛かりも当ても無く。お願い致します」

 

 というわけでノボリさんを連れてエイチ湖まで行くことになった。

 しかし彼はどうもポケモンを1匹も持っていないらしい。

 

 なんて事だ。

 

 シェイミの野郎は寒いからとボールに引きこもっているから、野生のポケモンやトレーナーの相手はコウキくんがますます頑張らないと……あっ、ストライクとアヤシシがいるからバトル自体は出来る……まぁいいや黙っとこ。

  

 

「ポケモンバトル……わたくしも身を投じていたような気がしてきました」

 

「気がしてきたんじゃなくて、やってたんですよ」

 

「はて。あなた様はわたくしの事をご存じないのでは?」

 

「ノボリさんは有名人なんですよ。ポケモンバトルの」

 

「なんとも信じがたい事ですが…本当だったのですか?」

 

「はい! 前にテレビでもやってましたよ。消えたライモンシティの片割れって」

 

「ふむ………」

 

「でもどうしてイッシュから遠く離れたこのシンオウに……? それに、ボクがテレビで見た事のあるノボリさんより大分歳を取ったような…」

 

「そういう話はないわけじゃないからね」

 

「どういう事ですか?」

 

「たとえば…シンオウ神話のディアルガは時を司っているし、セレビィというポケモンは自在に時を渡っている。

 パルデア地方なんかじゃタイムマシンの研究もしているくらいだからね。

 もしかしたら、ノボリさんは別の時代に飛ばされて、また帰ってきた……のかもしれない」

 

 かもしれないじゃなくてそうなんだけども。

 

「どうして別の時代だと言えるんですか?」

 

「む、鋭いねコウキくん。ノボリさんの服を見てごらんなさい」

 

「わたくしの服が如何しましたか?」

 

「この服はかつてのヒスイ時代にキッサキシティ近辺に存在したシンジュ団のものだから、過去に飛ばされていたと考えられるし……なんでイッシュからここなのかはわからないけど」

 

「シンジュ団……酷く懐かしい心持ちがいたしますが……失礼、という事はわたくしはそのディアルガかセレビィというポケモンにあったのでしょうか?」

 

「それはわかりません。あの二体に関わって記憶を失った話も聞いた事がありませんから…」

 

 だからウルトラホールだと思う……んだけど、ウルトラホールはウルトラスペースに繋がってるんじゃないの?なんで過去?って疑問もあるし。

 それにアルセウスとか抜かす平和な時代から子供を拉致する邪神がいるからちょっと断言しきれない。

 

「じゃあもしかしたらなんらかの方法でイッシュから過去のシンオウ地方に飛ばされて…そこでユクシーに会った…って事ですか?」

 

「可能性はあるんじゃないかなぁ」

 

「そうですか……そのユクシーに会って大丈夫なのでしょうか? 皆様の記憶を失わせる事になるのでは?」

 

「そこは大丈夫です。このコウキくんはそのユクシーを悪の組織から救い出した事があるので」

 

「ブラボー! それは素晴らしい話です! おや、ブラボーとは一体」

 

「ノボリさんの口癖ですよ」

 

「おやそうなのですか、コウキさま」

 

「はい、有名でしたので……」

 

「そんなにわたくしの事が知られているとは…なんとも奇妙な気分です」

 

「キッサキシティの手前に湖はあるからパニックになる事はないと思うけど……一応気にしとくか」

 

 となると野良のポケモントレーナーを避けつつ進む事になるな。

 217番道路で落ちてるロッククライムのわざマシンとの交換で《つららのプレート》を回収しておきたいが……後回しにするかな?

 

「お、見てください!リングマが居ますよ。やっぱりより寒い地域だとうろうろしてるんですね」

 

「リングマかぁ……泥炭がより豊富な時代は進化したんだけどねぇ」

 

「へぇ!そうなんですか?」

 

「まぁ、ノモセ大湿原にどうにかして放つことが出来ればもしかしたら今も……?だけど」

 

「じゃあ、捕まえましょうよ!」

 

「話聞いてた? まぁ……捕まえてみるか」

 

 幸い、リングマはこちらの様子に気づいていない様だがあたりは雪だ。

 どうしても気づかれてしまうので、泥団子を投げつけてからボールを投げ捕まえる事にした。

 

 リングマ を つかまえたぞ!

 

「……なるほど。あの様にしてポケモンを捕まえるのですね。しかし先程の捕まえ方にはなにやら見覚えがございます。やはりわたくしもトレーナーだったのでしょうか」

 

「え? あの捕まえかたをする人は先生以外に知らないですけど……」

 

「なんと!あなた様は先生でいらしたのですか」

 

「違います。精々が考古学者です。こらコウキくん。ダメじゃないか。よりにもよって今のノボリさんに紛らわしい事を言うんじゃありません」

 

「はーい…」

 

「はて。考古学者なら学者先生ではないのですか?」

 

「! ほらやっぱりそうですよ先生!!!」

 

「ほら雪が強くなる前に湖に行くぞ!」

 

◆◆◆

 

「視界が悪くなってきましたね」

 

「うーん…ダメか。近くに山小屋でもあれば良いんだが……ヨシ!アヤシシ頼んだ!」

 

 え、自分が探すんですかみたいな顔をするアヤシシ。

 そうだぞお前のエスパー力にかかっているのだ。

 捕まえたばかりのリングマだという事を聞いてくれないかもしれないからな。

 

「む、アヤシシ何を咥えて……おお、わざマシン」

 

「なんのわざマシンなんですか?」

 

「《ロッククライム》ひでんわざだね」

 

 交換券ゲットヨシ!

 じゃあこの辺に民家か山小屋があるか。

 やっぱり雪がこうも降っていると視界が悪すぎてわからなくなる。

 本格的に遭難する前にちょっとプレート交換がてら休ませてもらってからだな。

 

 

◆◆◆

 

 

「ここがエイチ湖……」

 

無事に山小屋に着いた後《つららプレート》を手に入れた。

 山小屋の主人は世捨て人だったのでノボリさんの事を知らなかったので騒ぎにならずに済むなどしたが、恒例のプレートの文字読み上げになると流石に少し騒いでいた。

 ノボリさんは首を傾げていたが。

 

 そんなこんなで雪が落ち着くのを待ってから出発し、いよいよキッサキの少し手前にあるエイチへと着いたのだった。

 

「かつてはキッサキ神殿共々、あたり一面、標高が高かったみたいだよ」

 

「へぇ…」

 

「とりあえずあの洞窟まで渡ろうか。頼んだよコウキくん!」

 

「はい! エンペルト、お願い!」

 

 エンペルトは強い上に素直なので不満なく我々をその背中に乗せて往復してくれる。

 全く他の奴らにも見習って欲しいものだ。

 

「さて、ユクシーは居るかな」

 

「居なかったらどうするんですか?」

 

「うーん……コウキくんが大声で呼び掛ければ来るんじゃないかな。出てきてもらわねば困るが」

 

「それは…そうですけど」

 

「……わたくしの為に申し訳ありません」

 

「い、いえ!ノボリさんが気にする必要はないんです───あ」

 

「アレが…?」

 

「ユクシー。シンオウ神話に名高い叡智の神です」

 

 UMAの黄色い方ともいう。

 ポケダンでは人格者でレジェアルでは知らない人は調べないと分からん微妙な問題を出してくるヤツだが、果たして。

 

「ユクシー、えっと……ノボリさんの記憶を思い出させる事って…できる?」

 

《あたう》

 

 出来るのか!!!

 

 これならアレだな、リラさんもなんとかなるけどあの人は別世界の人だからやっぱり記憶ない方がまだマシだったわ、ナシナシ。

 

「では、わたくしの記憶は戻るのですか?」

 

《だが、よいのか》

 

「……?」

 

《おもいださぬ せんたくもある》

 

 うーーんこれは悩ましい。

 今記憶を取り戻すとライモンでの記憶とヒスイでの云十年くらいの記憶が一気に蘇るのであって───

 

「それでも構いません。わたくしが何者であるのか。それが知りたいのです」

 

《わかった》

 

 あっそんなあっさりと───!

 

「────!!!!??!?」

 

「ノボリ……さん? ノボリさん!!!」

 

「気絶しているだけ……と言っていいのかな、これは」

 

 泡吹いて頭からぶっ倒れたけど。

 まぁ生きてるみたい…みたいだし?

 

「呑気に言っている場合ですか!?」

 

「そうだね、ごめん。とりあえず……うん、キッサキのポケモンセンターに運ぼうか」

 

「はい! あっ、えっと……ありがとう?ユクシー」

 

 コウキくんがそういうと《きょううん!》と鳴いて消えてしまった。

 やはりコウキくんへの恩返し系だったのだろうか。

 それにしてはまぁ……酷い事にはなっているけれども。

 

 とりあえずポケモンセンターに運ぶか……

 

 

◆◆◆

 

 

「あなたさま方は……」

 

「落ち着かれましたか」

 

 ノボリさんが落ち着いて暫く経ってから、改めて話がしたいと病室に呼び出しを受けてやって来た。

 クダリさんには外してもらったらしい。

 かなり大変だったらしいが。

 

「お陰様で。此の節は申し訳ありません」

 

「いいえ! 記憶がなかったんですから」

 

 とはいっても大変だった。

 何せ意識のない成人男性を運ぶんだから。

 途中でアヤシシに乗せてけばええやんって気づいてからはそうでもなかったけど。

 

 だがいざキッサキに着いてからは本当大変だった。

 いざポケセンに運び込んだら泡吹いてぶっ倒れてたノボリさんの意識が戻ったと思えば発狂し始めて。

 

 とりあえずアヤシシの《さいみんじゅつ》で眠らせた途端ポケモンの技を使ったぞこいつ!!!って事でジュンサーさんがすっ飛んできてお縄につく事になってしまった。

 コウキくんは何故か大丈夫だった。

 

 やっぱり子供だからか。

 

 そしたら運び込まれた人がノボリさんだと発覚してさぁ大変!

 

 一躍消えたライモンシティのサブウェイマスター誘拐の容疑者になってしまった。

 

『違うんです!記憶がなくなってた彼の記憶を取り戻そうとユクシーの所へ行ってたんです!』

 

『ユクシー!?実在してるわけないでしょもっとまともなウソをつきなさい!』

 

『じゃあ誘拐犯ならなんでわざわざポケモンセンターに運び込んだんだよ!!?』

 

 そんなこんなのすったもんだはコウキくんがリラさんに連絡をとってくれて(えぇ…と呆れていたらしい)なんとか釈放となったのだがそこからさらなる問題が。

 

 老けたノボリさんという事で国際警察的にウルトラホール案件。

 その上記憶喪失からユクシーの力で記憶を強制的に戻したらこんなんなりましたってわかったリラさんは思案顔をするし。

 

 この世界のアローラがウルトラなのか無印なのかは知りませんが他のホウエンから来たんだったらよした方がいいと思いますけどね!!!

 

「クダリが随分とご迷惑をおかけしたみたいですが……」

 

「迷惑だなんてそんな! 誰だって当然じゃないですか」

 

 檻から出て来て直ぐすんごい顔してアーケオスに乗ったクダリさんがキッサキシティに突っ込んで来た時は流石にビビったが。

 

 誰だって同じ立場ならそうするとは思うから、特に思う事も無かったけど、ノボリを担ぎ込んだと知るといつどこでどうやってノボリをーー!!!??みたいに矢継ぎ早に質問攻めされたのは困った。

 

 答える前に次の質問に入るからコイツ聞いてんのかって思っちゃったし。

 手を潰されるかと思う力で握られたし。

 

 それにクダリが心から感謝するもんだから、寒い地域の癖してボールからシェイミが飛び出してきちゃうし。

 

 季節外れのグラシデアの花畑はそれはそれは美しかったが環境破壊をしないで下さい!!!と再びお縄につきかけたからやっぱり迷惑だったかもしれん。

 

「これは……クダリには言えない事ですから。半ば愚痴になりますが。どうしても聞いて頂きたく」

 

「……わたくしはヒスイにポケモン勝負を根付かせる為に骨を埋める覚悟でした」

 

「ヒスイって、もしかして」

 

「ええ、過去のシンオウです。わたくしはそこに飛ばされていたのです」

 

「そんな事が────」

 

 あったんですよコウキくん。

 大変ですね本当に。

 

「……失礼ノボリさん。一体どうやって戻って来たのですか?」

 

「それが……そこだけはわからなく」

 

「わからない?」

 

 コイツは邪神の臭いがプンプンしますねぇ……そこだけはアルセウスが絡んでいるからユクシーの力でも正確には思い出せなかったんだなきっとそうだそうに違いない邪神め!!!!

 

「ヒスイに来た時も唐突でしたから、帰る時もまた然り……人生とはままならないものです」

 

「………」

 

 自分だって、いつの間にやらこの世界に来ていたのだ。

 ここがポケモン世界だって記憶がばっちりあるから楽しめているだけで。

 一人で放り出されても構わない身上だったから悲しむ事のないだけであって。

 

 ノボリさんはあったかもしれない自分なのだ。

 

「シンジュ団やコンゴウ団……コトブキムラの皆さまに……オオニューラにポケモン達…ああ、どうして───今になって」

 

「…………」

 

 誰一人として、今の彼にかける言葉が見当たらなかった。

 啜り泣く声だけが、ただ部屋に響いていた。

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