人間万事塞翁が馬、と言うけれど。


 □■□■□


 注意

 当作品には、
 ・救済
 ・原作改変
 ・成り代わり
 等の要素が含まれます。

 問題なく楽しめるよ!
 という方のみ、地雷だと感じられましたら無言でブラウザバックすることをご了承の上先にお進みください。

(尚当作品と同一の作品を2023年2月20日にpから始まる某サイトにてヲから始まるやつが投稿しておりますが、きっちり同一人物による投稿ですのでご安心ください。)


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覚醒ヨミヨミの実を活用して楽しくラフテルを目指す話

 

 人間万事塞翁が馬、という言葉がある。

 簡単に言うと『どんなこともどう転ぶか次第で幸福か不幸かが変わんだから、長い目で見ながら頑張ってこーぜ』的な意味なのだが、おれの人生は正にこのことわざを体現したような人生だと言えるだろう。

 

 まず地球の日本で生を享けた最初のおれは、比較的ホワイトな企業で働くサラリーマンだった。

 平日には仕事をして、休みには大好きな登山をして……おれにとっては満たされた毎日だったし、こんな毎日がずっと続くのだと信じて疑うこともなかった、のに。

 

 不幸な事故だった。

 登っていた山の一部が突然崩れ落ちて、そのまま滑落して、それで。……山を登る以上覚悟していた……わけもないけれど、だからといって登らなければよかったとも思わない。

 だって死の理由になったのは確かに山だったが、これまでおれの人生に沢山の楽しみを与えてくれたのもまた山だったのだ。

 

 だから、まぁ、受け入れよう。

 

 一部が変な方向に曲がった体が訴える痛みと、落ちる途中で引っかけたのか流れ出る血液。

 足音をたてて近づいてくる死の気配に漠然とした不快感を覚えながら、おれは意識を失った。

 

 ──のだが、なんとビックリ。

 

 死んだらしいおれは転生し、なんとあの『ワンピース』の登場キャラに成り代わっていたのだ。

 

 死が確定しているキャラではあったものの、おれにとってそんなことは苦ではなかった。原作知識さえあれば、そんな死は易々と回避出来ると考えていたが故である。

 

 だが人生というのは何が起こるか分からないものであるということを、おれは自分の死を以てしっかりと理解していた。

 原作の強制力というものが存在する可能性だってゼロではない。

 

 もう二度と死にたくなかったおれは、そこから二度目の死を体験するのではないかと思うほど懸命に努力した。

 努力して努力して努力して……漸く手に入れたヨミヨミの実はどうしようもなくマズかったが、それでもおれの喜びが消えることはなくて。

 

 そして、満足感のままにおれは考えた。

 

 

 ──ここまで来たら海賊王になっちまおう! 

 

 

 おれが転生したのは原作開始よりもっともっと前の時間軸。

 つまり、まだ誰もラフテルに到達してはいないのだ。

 

 

 苦難を乗り越えて到達する世界の果ては、おれの心にどんな喜びをもたらしてくれるのだろう。

 前世の趣味も影響していたのかは分からない。だが好奇心か欲求か。おれは逆らうことも出来ないまま、海の果てをひたすら目指し続けた。

 

 ……ただ生きるだけより、きっとそっちの方がずっと楽しい。

 

 

 

 ────そうして、何年が経っただろうか。

 

 ワノ国の次の島に辿り着いた俺たちは、その日は全員で酒を呑んで騒いでいた。

 原作とは違う死に方ではあったが原作通りのタイミングで退場を迎えかけ白骨化しないまま無事に甦りを果たして、原作と多少メンバーの違いはあれど大切な仲間たちと旅を続けて。

 

 浮かれていた。そう、浮かれていたのだ。懸賞金が上がったことも理由の一つだったかもしれない。

 

 そんな浮かれたおれたちを、唐突な海軍たちの包囲が襲った。

 どうしようもなかった。

 

 覇気も能力も全力で使って、抵抗して、それでも足りなくて。

 覇気で感じ取れる仲間たちの声が一つ一つ消えていくのを感じながら、それでもおれは必死に戦った。

 

 ……気が付くと、そこに立っているのはおれ一人で。

 

 血にまみれた死体の山を洗い流すように降りしきる雨に隠されながら、おれは泣いた。

 仲間たちは、海兵の武器に塗られた毒で即死したらしい。

 

 ……これが、原作の強制力というやつか。

 …………油断しなければ良かったのだろうか。

 警戒し続けていれば、仲間を救えただろうか。

 

 ……あぁ。

 

「…………おれを、置いていくなよ」

 

 そう呟いたその時だった。

 おれの周りが淡く輝きはじめ、きらきらと光るホタルのような光がいくつか空を舞っているのが──あ、違う。あれは、あれはおれの。

 

 自分の能力が覚醒したことに気付いて、おれはがむしゃらにその光たちを呼んだ。

 「一人にしないでくれ」と、「お前たちの居場所はここだろう」と、みっともなく、子どもみたいに叫んで、おれの仲間の魂たちが自分の肉体に戻りはじめた、その瞬間。

 

 救援に来た海兵に頭を撃ち抜かれ、海に沈められ、結局おれはまた呆気なく死んだ。

 

 端役のおれに、主人公補正などというものはなかったというわけか。

 

 

 

 

 

 

 

 ……あぁ、無念だ。

 

 

 □■□

 

 

 と思ったらまた転生……転移? していたのだから、やはり人間万事塞翁が馬だ。

 その上、どうやらおれがしたのはただの転移ではないらしく。

 

 気が付いたらいたのは東の海。あの日燃えて崩れた筈のおれたちの船の上で。

 それも日時はゴール・D・ロジャー処刑の数日前だというのだから意味が分からない。時空転移というやつなのだろうか。

 

 ……でもまぁ、いいか。

 

 自分が一番最初に見るのだと意気込んでいた景色はもう他の人間に見られていたけれど。

 結局二度も死を体験することになってしまったけれど。

 

 それでもいい。

 そう思えたのは、おれの(なかま)も一緒に転移することが出来ていたからだった。

 

『なぁ船長、これからどうする?』

「あー……」

 

 まだ何も決められていなかったおれは、仲間の問いに少し言い淀んだ。

 原作に近い時間軸まで来てしまっただけに、原作に関わるか否か、ラフテルに向かうか否かなどを慎重に考える必要性が出てきてしまったのだ。

 

 しかし、出来る限り死のリスクは避けたくもあるし……うーん……。

 とそこまで考えて手元の新聞をちらりと見たおれは、天才的なことを思いついた。

 

「あ! いいこと思いついた!!」

『それ本当にいいことですか?』

『嫌な予感がする』

『無茶はやめろよ、船長』

 

 というのに、船員たちの反応は思わしくない。

 付き合いの長さが裏目に出たのだろうか。どうやら、おれの言う『いいこと』はそんなにも信用がないらしい。

 くそ、おれ船長なのに。

 

「無茶じゃねぇよ! 

 ……お誂え向きに現れた、ラフテルまでの案内人を捕まえるんだ!!」

『……え』

『嘘だろ』

『まぁアンタがやるってんなら仕方ないよなぁ……』

『アッハッハ、流石はおれたちの船長だ!!』

 

 反応は船員によって違ったが、なんだかんだ全員反対はしそうにない。

 皆一様に上がる口角が隠せていないのだから、まったくおれの仲間は最高だ! 

 

「ま、一応顔は隠していくか!」

『アンタだけな』

「野郎共、もう死ぬんじゃねェぞ!!」

『だからそれもアンタだけだって!』

 

 そんな風に笑いあいながら、おれたちはローグタウンへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──甲板に落ちる人間の影が、一人分しかないままで。

 

 

 □■□

 

 

 ロジャーの首が切り落とされた直後のこと。

 

 

 二十数人の透けたマントを被った透明な何か達に囲まれて、しずしずと“それ”は現れた。

 

 黒いマントに骸骨の仮面をつけた“それ”はふわふわと浮き上がり処刑台の上に上ると、しゃがれた声で死刑執行官に問うたという。

 

 

 ──これ、もう連れてっても良いよな? ──

 

 

 執行官だった一人は泡を吹いて倒れたが、残念なことに倒れられなかったもう一人は拒否することも出来ず、無言でこくこくと頷いた。

 ──拒否をすれば、自分が代わりに連れていかれかねないと思ったのだ。

 

 

 ──あァ、ならよかった──

 

 

 そう言ってそれは海賊王の首と体を持ってまたふわふわと浮き上がり、地面の透明な何か達の上に着地するとその何か達に連れられ、どこかへと消えてしまった。

 

 ……一瞬の出来事。

 全員の前で去っていく“それ”を、しかし誰も追おうとはしなかった。

 

 その事件を目撃した者は口を揃えて言う。

 

 

 

 

 

 「海賊王の亡骸は、死神に連れていかれたのだ」と。

 

 

 

 

 □■□

 

 

「いやァ、よかったなあんた! 死体が貰えなかったら魂だけでついてきてもらうとこだったぜ?」

「こりゃあ、どういうことだ……」

 

 無事蘇生完了したゴール・D・ロジャーは、何故か生きている自分に酷く困惑した様子だった。

 後で鏡でも渡して首の継ぎ目も見せてやるとしよう。

 だが、それは後での話である。

 

「今は細けェことは良いじゃねぇか! 

 あんたはおれの『ヨミヨミの実』の力で復活した! そんだけだ!」

 

 笑いながらそう告げると、彼は一瞬ぽかんと口を開けて、かと思うと豪快に笑った。

 

「だァっはっは!! 

 長ェこと海賊やってるが、死者蘇生を『細けぇこと』呼ばわりするやつは初めてだな!!」

「海賊王の『初めて』たァ光栄だねェ。

 ……なぁ、一度失った命だ。次は、おれ達との海賊生活を楽しむのに使っちゃァくれねェか!」

 

 どうやら第一印象は悪くないようで何よりだ。これならば、もしかしてもしかすると上手く行くのではないだろうか。

 そう思いながらも彼に誘いをかけると彼は少し悩んだ様子で、それから告げる。

 

「つってもなぁ……。おれはまだ、お前の性格も名前も何も知らねェんだぜ? 

 生前……? の航海で満足しちまってる身としちゃあその提案に前向きにゃあなれねェが、それはそれとしてまずお前のことを教えてくれよ」

「あ!! いやぁ、すまねェ! 名乗るのを忘れてたな!」

 

 ロジャーの言葉で、おれは漸くまだ自分が名乗っていないことに気がついた。

 あぁいけない。完全にうっかりしていた。

 

「おれはヨーキ! 

 泣く子も笑うルンバー海賊団船長のヨーキだ! よろしく!!」

 

 

 

 

 

 






【あとがき】

個人的なロジャー船長の解釈のせいでどう妄想しても中々生存してくれない。ので最近ロジャー船長生存ルートを色々妄想して遊んでいます。

この作品はお風呂に入ってるときに「いっそ甦ってくれれば……ヨミがえり……?…………パラミシア……他者へ影響……つまりヨミヨミの実は覚醒したら……???」ってなって書きました。楽しかったので満足してます。
首にでっけー継ぎ目つけたロジャー船長を連れてる主くんは多分一度は必ずレイリーさんに殺気向けられるしこの後コラさんも救済してトラさんとかドフラミンゴとかに滅茶苦茶追いかけられるんだろうなぁとか色々あるので続きを書くかもしれません。いつか。もしかしたら。

因みに主くんはまだ気付いていませんが、三回目の転移は時空転移ではなくパラレル転移です。
なのでこの世界のヨーキ船長は既に原作通り死亡しており、ブルックはヨミヨミの実を食べています。


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