無自覚で【無属性】持ちの俺は最強みたいです~外れスキルを3年間鍛え続けていたら、ダンジョン配信中の亜人姉妹に襲い掛かるS級モンスターを偶然倒してしまいました~   作:早乙女らいか

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第2話 襲われる二人の美少女

 

「……もう朝か」

 

 カーテンの隙間から朝日が差し込む。時間は……八時か。

 探索者は会社員ではないので、起きる時間は割と自由でいい。十分な探索時間さえ確保出来れば、昼に起きたって構わない。

 まぁ、俺みたいな落ちこぼれは朝から頑張らないと稼げないんだけど。

 

「ふあぁ……行くか」

 

 食パンをかじり、冷蔵庫からヨーグルトを一カップ取り出して口に入れる。

 一人暮らしを始めてから、朝食べるものはほとんど変わっていない。

 

 これだけで昼まで持つのだから不思議なものだ。

 

―――――――――― 

 

「風間ダンジョンか……空気がヒリついているな」

 

 今回は風間ダンジョンに潜っている。

 風間ダンジョンはB〜Aまでのモンスターが出現しやすく、かなりの高難易度で知られている。

 昨日の番崎の一件で若干ムキになり、ギリギリ行けそうなダンジョンに来てしまった。 

 

 大人げない。

 

「グウウゥ……」

 

「出たな……」

 

 前方に狼型モンスターが一体。

 確かフォレストウルフだったかな……Bランクモンスターでもかなり上位の強敵だ。

 敵意をむき出しにして牙を向けるフォレストウルフに対し、俺は剣を取りだして戦闘態勢に入る。

 

「グウァ!!」

 

 早速フォレストウルフが飛び出してきた。

 その速度は凄まじく、一瞬で俺の目の前に近づくほどだった。

 フォレストウルフの異常な速さに、多くの中級探索者が葬られたらしい。

 

 でも、

 

「はっ……!!」

 

 俺は対応することができる。

 何も持っていない”ように見える”右手をフォレストウルフの前に突き出し、反撃の構えに出た。

 

 モンスターの鋭い牙と人間の腕とじゃ相性が悪すぎる。

それを本能で分かっているフォレストウルフは動きを止めず、そのまま突き進んでくれる。

 

「グゥア!?」

 

「もっと周りを見とけよな」

 

 その判断が甘えだと知らずにだ。

 腕と服の隙間に仕込んだナイフが、フォレストウルフの顔面を貫いた。

 しかもご丁寧にステルス魔法までかけて、見えなくさせる用意周到さ。

 

 思わぬ不意打ちにフォレストウルフは動きを止め、じたばたもがき始めたのだが

 

「終わりだ」

 

 既にチャージが完了していた無属性魔法で一気にとどめを刺す。フォレストウルフは一瞬で粒子と化し、魔石と素材に変貌した。

 

「はぁ……こんなことでしか狩れない」

 

 うまくいったが所詮は不意打ちの組み合わせ。

 番崎なら真正面からぶっ倒せるんだろうなぁ。 

 

 劣等感に悩まされながら、魔石と素材を回収していた時だった。

 

 ゴゴゴゴゴ……

 

「ん?」

 

 急な地響きでダンジョン内が大きく揺れる。

 ダンジョンで起きる異変というのは、基本的にモンスターが絡んでることが多い。

 これは……上位モンスターでも出現したか?

 

「Aランクくらいか……? いずれにせよ警戒しておくに越したことはないな」

 

 率先して倒しに行きたいが、周囲から気配は感じ取れない。

 おそらく遠くの方で出現したのだろう。

 

 ダンジョンに潜っているのは俺一人ではない。勝手に乱入して素材泥棒なんて言われるのも嫌だしな。

 よっぽどのことがない限りはスルー安定でOK。

 

「さーて、もう少し探索するか」

 

 もう少し素材を手に入れておきたかったので、探索を再開する。

 しっかし、どんなやつが出たんだろうなぁ。

 近くに現れたら戦ってみたかった。

 

 ダンジョン内の異変に警戒しつつ、俺はしばらく探索していたのだが、

 

「出ない……」

 

 モンスターが1匹もいない。

 なんで? どういうことだ?

 モンスターの存在どころか気配すら感じ取れない。

 

「うーむ……」

 

 考えられることは一つ。

 さっきの地響きで何かが起きた。

 その何かが、ダンジョン内のモンスターを追いやったということ。

 

 未知の脅威から逃げる事は生物としての本能だ。

 ここまで影響するとは想定外だったが……一体どんなやつがいたんだ。

 

「グギャアアアアアァァァァァ!!」

 

「!?」

 

 なんて考えていた時だった。

 突然近くの壁を突き破って、竜型のモンスターが出現したのだ。

 

「ちぃっ!!」

 

 竜の突進を見切り、右方向へと素早くかわす。

 不意打ちではあるが、動きは単調。

 だが、その速度は冷や汗をかいてしまうほどだった。

 

「グルルル……」

 

「こいつか……ダンジョン内の異変の原因は」

 

 全身をトゲトゲしたウロコで包み、威圧的なオーラを放ちながら俺を睨みつけるドラゴン。

 推定ランクA、いやSか?

 このダンジョンには最高でもAランクしか出現しないはずなのに。

 とんでもないのに巻き込まれたな……逃げ切れるか?

 

 と、自分の事を精一杯考えていた時だ。

 ドラゴンが突き破った壁の奥から、微かな気配を二つ感じ取った。

 

「あ……う……」

 

「くっ……う……」

 

「ん?」

 

 壁の奥を見れば、二人の美少女が地面に倒れ伏せていた。

 一人は悪魔のような角と尻尾を生やしており、もう一人は天使のような羽を背中から生やしている。

 珍しいな、亜人なんて……ってそんな悠長な事を考えている場合じゃない。

 

 あいつに襲われたのか。

 

 ということは……

 ここから逃げたらあの二人が危ない。

 

「……」

 

 どうする……

 才能のない俺が勝てる相手なのか?

 

 こんなやつとは戦ったことがない、正直実力は未知数。

 本来なら、もっと準備と対策を練ってから挑むべき相手だ。

 

 しかし、俺がこの場を離れてしまえば、今度はあの二人が狙われてしまう。

 

 ダンジョンの世界は過酷だ。

 いくつもの脅威が襲いかかり、時には仲間に見捨てられて命を落とすこともあるという……

 

 あの二人と俺は何の関係もない。

 

 見捨てたところで、俺に何かしらの罪に問われることはない。

 だけど……

 

「見捨てるわけにはいかねえよな……!!」

 

 美少女二人を置いて逃げるなんて、男としてかっこ悪いだろ。

 

 倒せなくても、10秒……いや、3秒くらいは時間を稼げるはずだ。

 なけなしの金で買った剣を取り出し、俺はドラゴンと向き合い戦闘態勢へと入った。

 

 この時の俺は想像もできないだろう。 

 今、この光景がカメラを通じて全世界へと配信されており、まさかあんな事になるとは。

 

 運命が今、大きく動き出そうとしていた。

 

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